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5話 父親
しおりを挟むバラスター公爵家から帰宅すると… 自分の部屋にはゆかず、お父様と話をしようと、まっすぐ執務室へむかった。
「他に好きな人がいる? エミール君がそんなことを言うなんて… 信じられないな。 アンリエッタの聞きまちがいではないのか?」
お父様は首をかしげ、私の言葉をうたがった。
「絶対に、聞きまちがいではありません!」
イザークお兄様に話したのと、同じ内容を聞かせたのに… お父様の反応はお兄様と大きくちがい私はガッカリした。
「だが… 私にはエミール君がお前に、好意をよせているように見えたが? お前はそそっかしいところが、あるからな…」
「婚… 婚約者だから… 自分の浮気を応援しろとまで、言われたのに? お父様はそれも私が、聞きまちがえたと言うのですか?!」
すぐに婚約解消はできなくても、お父様もきっとイザークお兄様のように、私の気持ちを理解してくれると信じていたのに!
「だが、お前たちの結婚は、子供のころから決まっていたことだからな」
「すぐに婚約解消はできないと、わかっています。 でも…… 今までと同じではいられません」
「アンリエッタ、少し落ちつきなさい。 たぶん… エミール君の気の迷いだろう。 しばらく我慢して待ってあげなさい」
お父様はハァ―――…… と大きなため息をつく。
「私は…… エミール様と結婚するぐらいなら… 一生、女神様につかえる神官の道へすすむほうが良いわ!」
「何てことを言うんだ、アンリエッタ!」
「とにかく、絶対に嫌です!」
イザークお兄様になぐさめられ、せっかく落ちついていたのに、私はまた癇癪を爆発させそうになる。
「お前は言い出したら、聞かないからな。 そういうお前も悪いのだぞ?」
「何がですか?」
「エミール君の気持ちも、私は理解できる。 アンリエッタ、お前はイザーク卿と仲が良すぎるからだ」
「でも、兄と妹以上の親しさではありません」
「本当にそうか? お前の中で婚約者のエミール君とくらべて、幼馴染みのイザーク卿のほうが、結婚相手として好ましいと、考えたことはなかったか?」
「お父様のほうこそ、イザークお兄様がエミール様よりも、男性として格上だと考えているから… こんな話をするのでしょう?」
「それは……」
私の指摘がずぼしだったらしく、お父様は顔をしかめ、急にだまりこむ。
「私と同じ年齢のエミール様は、イザークお兄様よりも、5歳も年下です。 だからお兄様よりも未熟なのはわかります… 5年後にはもっと頼りになる男性になると、今までは信じていましたが……」
もう、そんなふうにエミール様を信じたり、期待するはできない。
「ど… どちらにしても、すぐに結論は出せない。 とりあえずアップトン男爵と話し合ってみよう」
「はい」
お父様でさえ、こんな反応なら… きっとエミール様のお父様、アップトン男爵もにたような反応をするだろう。
本当に私はだまって我慢するしかないの?
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