婚約者に好きな人がいると言われました

みみぢあん

文字の大きさ
11 / 21

10話 別れ

しおりを挟む

 結局、私はエミール様のウソの告白を聞いてから2週間、学園を休んだ。 
 ようやくを決して学園へ行くと、予想通りエミール様に『話がしたい』 …と学園の裏庭に呼びだされた。


「ぜんぶ、ウソだったと知っているだろう? だから君からフェアウェル子爵に、婚約は解消しないで欲しいと頼んでくれないか?」

 さすがにお父様も、他人の言葉に流されておこした、エミール様の問題行動をだまって見ていられなくなったのだ。

「今さら、なんのためにですか?」
 そんな話よりも、私にウソをついたことをあやまるほうが先でしょう?

 自分でも驚くほど、冷たい声が出た。
 

「僕は君が好きだから、どうしても確かめたかっただけなんだよ。 ロスモア伯爵令嬢に、君たちが付き合っていると聞いて、嫉妬しっとで死にそうだった!」

嫉妬しっとしたから、私にウソをついて傷つけたの? アナタは信じてくれないでしょうけれど。 私はエミール様のことが本当に好きだったの」
 以前なら飛びあがって喜んでいたはずの、エミール様の告白がどうでも良く感じた。

「ウソをつくな! あの時、君はイザークきょうが好きだと言っただろう? 僕がどれだけ傷ついたと思っているんだ?! 君が浮気を認めて、僕にきちんと謝罪して彼と別れたら… 僕は君を許す気でいたのに」

「ほら、また私の言葉を信じない。 だからアナタが私を好きだという言葉も、私は信じないわ」
 エミール様は自分のほうが被害者だというのね? あきれた。 わざわざ、あの時の気持ちを説明して、納得させる気にもならない。

 でも、これが本音をつたえる最後の機会だから… エミール様が信じなくても、私の気持ちを正直に話す。


「イザークお兄様は、何もかも完璧で特別なの。 だから平凡へいぼんな私には合わないのよ… 大好きなお兄様だからこそ、完璧な女性と結婚して欲しいし」
「なんだよ、イザークきょうの自慢をしているのか?!」

「いいえ、ちがう。 正直、お兄様の恋人や奥様になる女性は、すごく苦労すると思うの… いくらお兄様が大好きでも、私はそんな苦労はしたくない。 だから私は妹で満足だわ」

「え? そ… そんなのウソだ……」
 エミール様の瞳がゆれた。 少しは私の言葉を聞く気になったのかもしれない。
 きっと同じ男性の目から見ても、イザークお兄様が完璧なのがわかるのだろう。

平凡へいぼんな私はね… 平凡な幸せが欲しいの。 特別ではなくても良かった。 だから、私と同じで完ぺきではないアナタが好きだったわ」
 人より不器用ぶきようで… 言葉が足りない時があるけど。 アナタのことが好きだったから、見ていると少しずつ気持ちが読めるようになって… それが嬉しかった。

「ウソだ…っ」

「結婚するのがアナタで私は幸運だと、ずっと思っていたのに… 私の気持ちを信じて欲しかった」
 これだけ言っても、この人は信じてくれない。 私の気持ちはエミール様の心に1つもとどかない。 このまま結婚したら、こんなふうに私たちはケンカを続けることになる。 そしてすぐに離婚するのよ。

「僕だってずっと、君が好きだったさ! でも君は… 君は…っ…」

「今は私を傷つけたアナタが大嫌いよ!」
 私はイライラとして、エミール様の言いわけをさえぎるように言い放った。

「アンリエッタ!」

「婚約破棄の書類が完成したら、すぐにアップトン男爵家にとどけるそうです。 これでアナタもイザークお兄様のことで、悩むことはなくなるわ」
 婚約解消ではなく、お父様は婚約破棄にしてアップトン男爵家に違約いやく金の支払いを請求することに決めた。 

 それほどエミール様の行動は誠実さの欠片かけらもなく、フェアウェル子爵家にとって迷惑だったからだ。

「政略結婚だから、おたがい恋愛感情なんて持たなければ… こんな問題はおきなかったのにね」

「そんな! 僕はただ、嫉妬しっとに狂いそうで… 君の気持ちを確かめたかっただけなのに! 本当に婚約解消をする気なんて無かったよ!」

「さようなら」
 アナタは最後まで謝らないのね。

 私が別れのあいさつをして、クルリッ… と背をむけると… エミール様が呼び止めるようにさけんだ。

「やっぱり君は、イザーク卿と結婚する気なんだな?!」

「卒業まであと2年あるけれど… 学園で会っても、話しかけないで下さい。 」 
 もう、うんざり! こんな人と話す価値もないわ。 

 私から恋心が消えてなくなり冷静になると、エミール様には良いところなど1つもなく、欠点けってんしか見つからない。


 ハァ――――… と大きなため息をついた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました

海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」 「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。 姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。 しかし、実際は違う。 私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。 つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。 その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。 今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。 「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」 「ティアナ、いつまでも愛しているよ」 「君は私の秘密など知らなくていい」 何故、急に私を愛するのですか? 【登場人物】 ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。 ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。 リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。 ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?

【完結】イアンとオリエの恋   ずっと貴方が好きでした。 

たろ
恋愛
この話は 【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。 イアンとオリエの恋の話の続きです。 【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。 二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。 悩みながらもまた二人は………

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

【完結】大好きな婚約者の運命の“赤い糸”の相手は、どうやら私ではないみたいです

Rohdea
恋愛
子爵令嬢のフランシスカには、10歳の時から婚約している大好きな婚約者のマーカスがいる。 マーカスは公爵家の令息で、子爵令嬢の自分とは何もかも釣り合っていなかったけれど、 とある理由により結ばれた婚約だった。 それでもマーカスは優しい人で婚約者として仲良く過ごして来た。 だけど、最近のフランシスカは不安を抱えていた。 その原因はマーカスが会長を務める生徒会に新たに加わった、元平民の男爵令嬢。 彼女の存在がフランシスカの胸をざわつかせていた。 そんなある日、酷いめまいを起こし倒れたフランシスカ。 目覚めた時、自分の前世とこの世界の事を思い出す。 ──ここは乙女ゲームの世界で、大好きな婚約者は攻略対象者だった…… そして、それとは別にフランシスカは何故かこの時から、ゲームの設定にもあった、 運命で結ばれる男女の中で繋がっているという“赤い糸”が見えるようになっていた。 しかし、フランシスカとマーカスの赤い糸は……

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?

輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー? 「今さら口説かれても困るんですけど…。」 後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о) 優しい感想待ってます♪

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず
恋愛
 侯爵令嬢のファスティーヌ様が自分に好意を抱いていたと知り、即座に私との婚約を解消した伯爵令息のガエル様。  そんなガエル様は「お前なんかに会いに来ることは2度とない」と仰り去っていったのですが、それから1年後。ある日突然、私を訪ねてきました。  しかも、なにやら必死ですね。ファスティーヌ様と、何かあったのでしょうか……?

処理中です...