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12話 バラスター公爵家の提案
しおりを挟むイザークお兄様とバラスター公爵夫人を、失礼にならないよう家族(弟はまた不在)でむかえ入れ、居間に落ちつくと… イザークお兄様が最初に口を開いた。
「私の問題にアンリエッタをまきこんでしまって、本当にすまない。 学園で辛い思いをしていると聞いたよ」
「ええ… 思ったよりも、騒ぎが大きくなってしまって、私も驚いているの」
ついつい… イザークお兄様が相手だと、甘えたくなってしまうから、いけないわ。
お兄様のおだやかな声を聞くと、急に声をあげてわんわん泣きたくなった。 だけど公爵夫人もいるし、私を心配する家族も見ているから、泣くわけにはゆかない。
涙がこぼれないよう、眉間にググッ… と力を入れると、私はがんばってお兄様と公爵夫人に笑って見せた。
「今年、アンリエッタは社交デビューをするはずだったのに… 来年に延期することにしたそうね? 残念だけど、この状況では仕方ないわね」
「はい、公爵夫人」
学園内の話はすでに、社交界の話題にもなっていて… そこに私がデビューしたら、醜聞の中心になる。
「小さな赤ちゃんの頃から見てきた、あなたのデビューを楽しみにしていたのに… 本当に残念だわ…」
白くほっそりとした手を私のほうへのばし、公爵夫人は私の手を慰めるようになでた。
公爵夫人の心からの言葉に、私は少しだけ癒される。
「はい」
正直、来年デビューしても微妙だった。 たぶん今年おきた醜聞が、私のデビューでふたたび、火がつくかもしれないから。 醜聞とは1度おこすと、そうやって一生ついてまわるのだ。
たぶん私の結婚も絶望的。
私と公爵夫人のやりとりを、静かに見守ったあと… イザークお兄様が話し始めた。
「私たちから提案があります。 アンリエッタを隣国の伯母上のところへ行儀見習いに行かせてはどうかと」
「行儀見習い… ですか? イ… イザーク卿の伯母上というと……?!」
お父様はあわてて、イザークお兄様に聞き返した。
「公爵夫人のお姉様。 隣国の王弟殿下に嫁がれた、我が国の第2王女殿下ですよ」
驚愕するお父様の質問に、お母様がニコニコとほほ笑みながら答えた。 公爵夫人と仲が良いお母様はすでに、この話を知っていたようだ。
「……っ?!」
私もお父様と一緒に驚愕する。
「うふふっ… どうかしら? さすがに隣国までは醜聞もとどいてないから、アンリエッタも今年デビューできるわ」
と楽しそうにバラスター公爵夫人がほほ笑む。
「手紙で先方につたえたら、こころよく受け入れることを承諾してくれました。 アンリエッタのために、準備を整えてくれています」
提案だと言いながら… まるで決定事項のようにイザークお兄様は、すでに手配を終えているらしい。
「私が行儀見習いに行くの?!」
隣国の王弟殿下と妃殿下のもとへ?
「隣国も公用語を使っているから、言葉に苦労することもないしね。 どうでしょうかフェアウェル子爵?」
私にニコリッ… とほほえみ、イザークお兄様はお父様を追いつめるように、返事の催促をする。
「……」
私が言葉を失い、ぼうぜんとしていると…
「うふふっ… もちろんアンリエッタは、行きたいわよね?」
…と私は公爵夫人に追いつめられた。
「で… ですが、隣国の王族の元へとなると… 我が国との外交的な問題が出て来るのではありませんか?」
お父様が小さく反抗すると… イザークお兄様はすべて考えてあると、余裕をもって答える。
「ええ、そこでもう一つ提案があります。 アンリエッタを私の婚約者として行かせるのです」
「……っ!」
「……っ!」
私とお父様は2人いっしょに息をのむ。
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