私のお金が欲しい伯爵様は離婚してくれません

みみぢあん

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23話 アデルの居場所 ピエールside

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 バーンウッド伯爵邸からアデルが逃げ出して、数ヶ月の月日がすぎていた。
 そのあいだに、深刻しんこくな問題が伯爵家でおきる。


「どういうことだ?! 何がおきているんだ?! いくつか投資していた事業からの収益が、ピタリッ… と止められただと?!」
 バーンウッド伯爵邸の執務室で、ピエールはわけがわからず向かいがわに座る伯爵家の弁護士をにらみつけた。

「申し訳ございません… 伯爵様! 投資していたこれらの事業は、すべて伯爵夫人の名義でありまして……」
 
「クソッ…! どうしてこうなる?!」
 アデルだけではなく、アデルの金まで消えたのか?!

 結婚のときの持参じさん金がわりに、アデルは祖父のバスティアン・ガーメロウに、有益な投資物件をいくつも持たされて伯爵家にとついできた。
 そこからえられる大きな収益は、今では伯爵家のおもな資金源となっている。

「伯爵夫人の名義だった物が、すべて別のかたの名義へと変更されていまして……」

「アデルの名義が変更されただと?! そんなことが可能なのか?!」

「はい… 名義人の奥様がご希望されれば… 変更は可能です」
 弁護士は背中を丸め、激怒げきどするバーンウッド伯爵を上目つかいで見つめながら、おどおどと答える。

「それで、名義は誰に変更されたのだ?!」
 アデルの金は全部僕のモノなのに?!

 弁護士は書類のうつしを出して、ピエールの前にならべて見せた。

「シェンストーン侯爵家のクロヴィスきょうです」

「…クロヴィスだと?! まちがい無いのか?!」
 クロヴィスと言えば… 結婚前のアデルについていた護衛騎士の名まえだ?! まさか、あのクロヴィスが侯爵家の人間だったのか?!    
 シェンストーン侯爵夫妻とは、何度か夜会で会ったことがあるが… クロヴィスなんて知らない。
 ああ… いや! そういえば… 絶縁ぜつえんした息子がいて、その息子のかわりにおいに爵位を継がせるといううわさを聞いたことがある。
 クロヴィスは侯爵に絶縁ぜつえんされた息子なのか?!

 結婚前、アデルに会いにガーメロウ邸へ行くと、ピエールはいつも自分を害虫を見るようなでクロヴィスに冷たくあしらわれた。
 それがあまりにも不愉快で、アデルがとついでくるときにクロヴィスを護衛からはずすよう、ピエールはアデルを説得したのだ。


「……っ」 
 どこを捜してもアデルが見つからないと思ったら… シェンストーン侯爵家が関わっていたからか?!

 襲撃に失敗したピエールは人を雇い、秘密裏にアデルを捜したが見つからず… ようやく見つけた場所が、自分よりもはるかに格上のシェンストーン侯爵家であることが判明した。

 醜聞しゅうぶんになるのを恐れ、ピエールは妻のアデルを捜していることを、表だってできなかったことが裏目うらめに出たのだ。
 





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