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4話 初夜の準備
しおりを挟む結婚式がぶじに終わり… ソールズ伯爵邸の舞踏室で、結婚式に招待された客たちはダンスパーティーを楽しんでいる。
姉のマグノリアはまだ、見つかっていない。
“花嫁役”のビオレータは、初夜の準備のために、母親と一緒にとちゅうでダンスパーティーを抜け出した。
キツイ香水の香りと、ベッタリと濃くぬったお化粧をきれいに落とし… ビオレータは胸のなかをみじめさでいっぱいにして、姉のために用意した、綺麗なレースでかざられた、純白の夜着にきがえる。
「本当にマグノリアには困ったわ! どうしましょう…?! さすがに初夜まで、ビオレータに身代わりをさせられないわ!」
「そうね……」
「でも、花嫁が夫の寝室へ行かないのは、変に思われてしまうから… 使用人たちも、見ているし……」
急にオロオロとする母親に、ビオレータは苦笑した。
「・・・・・・」
つまり、お母様は… 初夜をむかえる花嫁として、私は寝室へ先に入って、クロード様が寝室に来たら、お姉様が家出をしたことを説明しろと言いたいのね?
「ごめんなさいビオレータ! あなたにばかり、苦労させて! もっと簡単にマグノリアが見つかると、思っていたのに… あの子はいつも子供みたいな悪戯をするけど、大きな問題になるようなことは、今までしなかったから……」
「うん… わかっているわ… クロード様に叱られるかもしれないけれど… 今さらしかたないもの…」
大きな問題ですって? お母様… 結婚式の直前でいなくなったこと自体が、問題だと思うけれど?
もう何もかも、どうでも良いわ…! クロード様がお姉様にむける愛情を、この目で見てから… お姉様のために、お母様やお父様のためにとがんばってみたけど、もう疲れたわ…! 早く終わらせて何も考えずに眠りたい!
軽く食事をとってから…
ビオレータは初夜のための寝室へゆき、1人静かにクロードが来るのをまった。
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