82 / 163
第二章
お父様の秘密
しおりを挟む医者が呼ばれた。
診察したところ、体には異常はなかった
ただ、動揺が激しく鬱状態にあるとの事。
心の病い、と診断された。
「セバスチャンを、セバスチャンを頼む」
倒れてから食事を取っていない父はゲッソリと痩せ細っていた。
せめて父におまじないをと思ったのだが、「私には会えない。合わす顔が無い」
と会ってくださらない。
セバスチャンがやっと到着した。
セバスチャンは父の寝室に入り、長い間 話をしていた。
「旦那様、お嬢様、ローガン様からお話があるそうです。」
私たちは寝室に赴いた。
父はポツリ、ポツリと話し始めた。
「あの日はお前の里帰りで侍女達がいなかった。
コーネリアにいつものお休みの挨拶に行き、、、、
そして、その日私達は本当の夫婦になった。
いつもなら、お休みのキスだけして部屋に帰るのだが、その日は、なんだか一緒にいたくて•••
それなのに、彼女は、気が付いたら出血して、白いシーツが真っ赤に染まって、
あ、あー、私が殺してしまったのだ。
私が焦ったばかりに、、、
マリアベル、すまぬ、すまぬ、すまぬ
お前から母を奪ってしまった。」
セバスチャンは言った。
「隠したのは私でございます。私が血で汚れたシーツを変え、寝巻きを着替えさせ、営みで出血した事を隠すために偽装しました
罪は私にあります。罰するなら私を」
そうだったのかぁ、産後出血が酷かったのか。
出産は命がけ。医療の進んでいないこの世界では、大変だったでしょうに。
私の里帰りって出産後五か月経過している。
そこで多量出血はおかしいわよね。
もともと子宮の血管が切れていたんじゃないのかしら?
なんか、そう聞いた事あるわ。
でも、それはお父様のせいでは無い。
だって五か月も我慢したんですもの。
偉いと思う。
泣く父の手を取って私は言った。
「お父様、もう重荷を下されては如何ですか?
多分、お母様は 自分の命を悟っておいでだったのです。
たから、お父様と せめて一夜だけでも夫婦になりたかった。
私はそう思うのです。」
でも、でも、、父はグズグズ言っている。
「お父様、女は出産すると母になり そう言う気持ちには、なかなか成りずらいものなのです。
なのにお父様を受け入れた。
それは、お母様の本意だったのですわ、
これは絶対です。娘の私が保証します!
ですので、お父様もシャンとする。ねっ!
二人は相愛の夫婦だったのですからね。」
父は私をキツく抱きしめて言った
「私を許してくれるのか、おまえは、、、」
「お父様、大好きですわ。」
父の背中をトントンした
私の体と父の体に銀の雨が、降り注いだ。
祖父は呟いた。「ああ、この事だったのか•••」
「ケイ様のご遺言だ。」
「ローガンが自分を責めて落ち込んでいたら、貴方のせいでは無いのと 慰めてあげて。
コーネリアが貴方を愛したせいだから。と言ってあげて。」
父がは泣きに泣いた。
全てを洗い流すように声を上げて泣いた、まるで赤子のように、、、
**********************
その夜、ノーザンコート伯爵の書斎にて、セバスチャンは寝酒の準備をしていた。
この事が ローガンのトラウマになっていたのか!
申し訳ございません、あの時は私も気が動転していて、隠さなければと思い必死でした。
ワシに言ってくれておれば、
みすみす アイラに付け入る隙を与えてしまった。
イヤ、同じ事か••• ローガンは女々しいからなぁ~
同じ兄弟でも、兄の方はあれだけしっかりといておるに。
申し訳ございません。
なんとかローガン様を庇おうと、私の浅知恵でした。
でも、マリアベルは何故あんなに達観的なのだろうか?
さあ、マリアベル様ですからねぇ、
あれと話していると、時々祖母と話しているような気になって仕方ないのだ。
大旦那様、流石に先先代様に例えるのはマリアベル様がお可哀想ですよ!
でもなぁ、あの年では 出産後の気持ちなんて、普通は 分からんだろうに???
それが、マリアベル様なのでしょう。
そうだな、可愛い孫だな。
私は、肩の荷が1つ降りてホッとした。
(デュカスの娘、一緒にいたのはターナーの娘か•••、あの性悪めが!)
29
あなたにおすすめの小説
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる