転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール

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第二章

日常〜断罪より2年目〜

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卒業断罪より二年目
マリアベルが三学年になった頃のお話です。

学園では
スティーブン、ラヴィ、フレディが卒業
フランシスが四学年に進級。


~ウラーノス•ドゥラークの話~

マリアベル様の誘拐はアキフューズ帝国の王からの依頼だと捕らえたスパイより聞き出した。
現アキフューズ王は、今年で80歳になると聞く。非常までの女好きで後宮にはかなりの女を飼っていると聞いた。

アキフューズには金髪がいない。
金の髪はオルファイド王家特有のもの、つまり女神の血を引く者の印だ。
そこでマリアベル様に目を付けたのだ!

マリアベル様を拐って後宮に囲い、オルファイドに圧力を掛ける。

そんな計画が持ち上がっていると聞いた。
アキフューズとの境界線、移民や商人なとがやって来るが、今年は怪しいヤツが事の他 多い。
それに、アキフューズ側の境界線付近には以前より人が多く集結しているようだと報告があった。
警備を強化しなければならない。

そんなこんなで、婚約式より一年、あの可愛らしい方とお会い出来なかった。

あのクルクルと回るお姿が、可愛い
一生懸命にお話させるお姿が、可愛い
モグモグとホッペを膨らましお食事されるお姿が、可愛い、、、、

何をされてもお可愛らしい

たった今、届けてられた荷物をはやる気持ちで開封する。
入っていたのは一通の手紙と精密に描かれた絵姿であった。

「髪が伸びたのだなぁ•••」

手紙には、季節の挨拶から始まり、最近の出来事、それからちょっと背が伸びた事、そして[ゴム]に付いて書かれてあった


   ~~~~~~~~~~~

[ゴム]とは、ドゥラーク領とウッドフィールド領の間、蒸し蒸しとした暑い地域に生息する木から取れる樹液の事だ。
カカオより少し低地で暑い地域に生息している。
その樹液の活用方法の研究が目下のマリアベルの関心事であった

   ~~~~~~~~~~~~~


マリアベルの絵姿を見ながら手紙を読んでいると、背後より媚びを帯びた手がウーラノスの肩にかかった。

「まあ、噂の天使様ですのね!」

ウラーノスは直ぐさま 絵姿を伏せた。

「ツレないわぁ、少しぐらい見せていただいてもいいではありませんか?」

「 貴女に見せる言われなどない 」
ウラーノスは冷たく言い放った。

「うふふ、幼いお姫様ですこと、
それでは貴方を満足させてあげる事が出来ませんわね!」

女はそう言うとウーラノスの肩にしなだれキスを強請った。

<<ドン>> 突然立ち上がったウーラノスはベルを鳴らして従者を呼び付けた

「モートン子爵夫人のお帰りだ、丁重にお見送りしろ!」

「ちょっと、待って、待ってよ、ウーラノス様、ねえ、どうして?」
モートン子爵夫人は唖然として、ベッドに腰掛けたまま帰ろうとしない。

「そんなに男が欲しかったら、俺の部下の前で足を開け!」

そう言うとウーラノスは部屋を出て行った。




ウーラノスはマリアベルが穢されたように感じた。

「あんな所で読むのではなかった•••」

闘いに赴く男を鎮めるのに、女を必要とする者は多い。
ウーラノスとて例外ではない。
彼の抱く女は、後腐れのない遊び慣れた者ばかりである。
正直、己の昂りさえ処理できればそれでよかった。

そんな女の口から、尊き姫の事をあのように言われるとは••••

「姫にお会いしたい、私の天使•••」

ウーラノスはそう思わすにはいられなかった。


その後、ドゥラーク領とアキフューズ帝国の境界線沿いでは暫くの間、小競り合いが続き予断を許さない状態に陥った。



******************

卒業パーティーから一年。

無事、春がやって来た。

本来ならジェイコブは学園を卒業式しているはずであった。

昨年の農作物の取れ高は通年通りであり、天災も見られなかった。

ジェイコブの小さな農場は、土地一杯に作付けしてあった。

何区画かに分けて植えられている麦を前に、ジェイコブはペンを走らせていた。

「今のところはまだ生育に差が無いな!」

「こっちが焼畑と鶏糞、こっちが腐葉土入り、こっちは、腐葉土に菜種の絞りカスを漉き込んだ土、、、」

菜種の絞りカスが肥料になるとは?本当なのか?
しかしマリアベルがそう言うのだ。

腐葉土と菜種カスを混ぜて発酵させると肥料になるとは••••
土の中に菌がいてその菌によって作用も違うらしいのだ。
マリアベルの説明で、ワインも菌の発酵によるものだと初めて知った。
菌とはまこと不思議なモノだ。

ジェイコブは目標を立ててみた。
今年はただ農作業をするよりも、その菌とやらの研究もしてみよう。


その時だった。
玄関とも呼べぬ程粗末な開き戸の前に、見知った紋章をつけた馬車が止まった。
そして、中から出て来たのは空よりももっと青い髪色をした幼馴染の•••

「殿下、殿下、、 あゝ お会いしたかった。」

「 スティーブン、スティーブンではないか
よくぞ尋ねて来てくれた! 」

「もっと早くお伺いしたかったのですが、昨年中は許可が降りず•••、ご無沙汰しておりました。」

ジェイコブとスティーブンは、ひっしと抱き合い再会に涙した。

「 立ち話も、なんだから中に入ってくれ。」

ジェイコブはお茶を淹れてスティーブンをもてなした。

「これは、パンの耳•••」

「そうだ!ラスクという名前だとマリアベルから聞いた。
私も習って作れるようになったのだよ。結構上手いもんだろう」

「懐かしいですね、マリアがよく食べておりましたが•••、マリアベル様も作り方を知っておられたのですか???」

「スティーブン、何を言っているのだ?
マリアはマリアベルだろう、、、」

「えっ???」

「パーティーの時マリアベルが言っていただろう。私がマリアだと、、、目の色も同じだし」

「しかし、まさか、、、」

「おまえ、知らなかったのか?」

パーティーの断罪時は、、、
ウッドフィールドの結界の消火をしていて、、、
マリアベル様と殿下が対峙している時、会話が聞き取れなかったような、、、

まさか、まさか、まさか、、、


最近背も伸びて、ますますお美しくなられたマリアベル様、天使のかんばせと慈愛の微笑み。

スティーブンは密かな思いを抱くようになっていた。
ジェイコブ殿下の王命による婚約だから解消になる可能性が高い。
もし、婚約解消されたら、私が、、、
スティーブンはそんな事を思っていた。

しかし、マリアとマリアベル様が同一人物とは、まことか?

「殿下、それは皆が知っている事なのですか?」

「だって、パーティーの時マリアベル本人がそう言ってたし、、、
農作物を手伝ってくれる姿は、マリアそのものだぞ!」

スティーブンは驚きで立ち尽くした。

マリアベル様が農作物をジェイコブ殿下と一緒に作っていらっしゃる、、、
2人で、、、、、

「殿下、私も、私も農作業お手伝い致します!!!」

「おおそうか!それは有難い、宜しく頼む!」

ジェイコブとスティーブンは握手を交わした


後ろでハロルドがニコニコと笑顔を浮かべていた。
(ふふふ、無料の労働力ゲット!
これで、菜種カスの肥料実験が進むな!)


******************





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