147 / 163
第二章
ウーラノスと姫 1
しおりを挟む時はさかのぼり昨年9月、
一通の密書がウーラノスの元に届いた。
「アキフューズ、セフメス二世 危篤」
あの、好色ジジイ、やっとか、、、
お前のせいで俺は愛しい婚約者と離れなければならなかったのだ。
その一ヶ月後、アキフューズより正式な書簡が届いた。
「セフメス二世、死去に伴い前線の兵を帰還される事が決定した。
そして、我が帝国はオルファイドの同胞と争いを止める事を宣言する。」
次期国王イブメットのサイン入りの書簡であった。
俺はこの書簡をオルランド王国に送り国としての出方を相談した。
出向いて来たのはノーザンコート伯爵であった。
ドゥラーク領では、何か困った事になったらノーザンコートに相談せよ!と言われている程信頼が厚い。
これは、ドゥラーク領初代ホメロス二世が亡命した際に手助けをしたのがノーザンコートの者であったからなのだ。
ノーザンコート伯爵は言った
「三月まで一応の目処をつけよう。」
「三月ですか?」
「そうだよ、三月、マリアベルの卒業だ。
ファーストダンスに其方がおらなんでは格好がつきますまい!」
卒業パーティーのファーストダンス
そうだった、婚約者と踊るのが慣わしだ!
忘れていた、彼女と踊るのは私の役目。
俺は馬車馬のように戦後の処理をした。
部下も、マリアベル様に俺を会わせてあげたい一心で一緒に動いてくれた。
しかし、アキフューズの使者が三月の授与式に合わせて訪問するとは••••
これは、トラビス王の嫌がらせでは無いのか!と勘繰ってしまった。
三月、アキフューズの使者は公式に宮廷の授与パーティーで謁見するまでの間、我が家で護衛ともてなしをする事になった。
なかなかマリアベル様に会う機会が無い。
そして、約束の卒業パーティーは矢張りファーストダンスには間に合わなかった。
娘御とのファーストダンスを終えたキングスバリー公が、こちらに帰って来てアキフューズの使者と話を付けてくれた。
「今回の戦争は、前王が黄金の姫欲しさに仕掛けたもの、姫にもご迷惑をおかけした。
私に構わず、是非行ってお上げください。」
使者にそう言われ、俺は急いで支度を整え学園に向かった。
間に合ったか?、丁度 ラストダンスの為にフロアに人が集まっていた所だった。
(姫はどこだ、)
人溜まりをかき分け、中央ステージの人の波に割って入ろうとした。
「失礼を!」背後より若草色の髪をした青年に声を掛けられた。
「ウーラノス•ドゥラーク辺境伯とお見受け致します。私はウッドフィールド長子アルフレッドと申します。
実は、私の意中の令嬢がマリアベル様とラストダンスを踊る事になっております。
一小節程 彼女に踊らせてはいただけないでしょうか?」
「しかし、、、」
「いま、ホールに割って入ってはとても悪目立してしまいます。
照明が落ちた頃を見計らって私達とパートナーチェンジをした方が得策だと思うのですが••••、如何でしょうか?」
「成る程、確かにそうであるな、ここで大声でマリアベル様をお呼びしたら場を壊してしまうな。
ハハハ、では、私とアルフレッド殿で踊るとしよう」
照明が落ち、音楽が鳴る。
薄灯の中でも彼女の髪は目立つ
俺たちはコッソリと彼女らの側に近づいた。
そしてアルフレッドがサッと令嬢の手を取り、俺は空いた 姫の手 を私が掴んだ。
ハハハ、作戦成功だな!
「姫、遅くなりました。ウーラノス•ドゥラークただ今 参上いたしました」
「来ていただけて、とても嬉しいです」
その時、ライトが姫を照らした。
私は息を呑んだ。
誰だ、この美しい人は、確かに、私の姫だか、、、、
なんなのだ、この輝きは•••
私はまともに姫を見る事が出来ず目を逸らしてしまった。
なにか、会話を、しなければ、、、
「姫は背が伸びたのですね。」
「ええ、160㎝にギリギリ届きました。」
「そうですか•••」
会話が続かない、どうすればいいんだ
娼婦相手ならいくらでも話せるのに•••
バカ、マリアベル様は令嬢だ、私の天使、いや、天使が女神におなりになったのだ!
ああ、どうしよう、どうしょう、どうしよう
そうして最悪のラストダンスは終わってしまった。
俺は、どうしたらよかったのだ、、、、
まさか姫が、あのお可愛らしい姫が大人になるとは思っても見なかった。
絵姿は毎年送られては来たが、そこに書かれた姫は、以前の面影が多く残っていた。
いつ、お姿を変えられたのだ•••
俺は混乱してしまった。
ドゥラークのタウンハウスに帰り着くと 皆が声を掛けて来た。
「姫様、美しくなったでしょう!」
「姫様程 美しい方は見たことがございません」
「姫様はまるで女神様のようですなぁ」
「なんだ、お前達、知っていたのか?」
「ええ、姫様は年に何度か遊びにいらしておりましたから」
執事のハリルは答えた
「私達は未来のドゥラーク辺境伯夫人のお世話係ですので今から姫様の趣味を把握しておかなくてはなりませんので•••」
侍女達も当たり前のように答える。
側近のエルダーは言った。
「若!ビックリしましたよねー、あんなに美しく成長されていたなんて、、、」
「エルダー、お前も知っていたのか?」
「だって、俺、こちらに帰って来て、連絡に行ったじゃないですか」
「はぁ、、、せめて一言ぐらい言って欲しかったよ、、、、」
「だって、学園卒業ですよ!もともと天使のような方だから、大人になったら凄い美人さんになるに決まっているじゃないですか!
全く、何言っているんですかぁ、、、」
エルダーはアホの子を見るように凹んでいる主人を見下ろした。
そうか、いつまでもお小さい可愛らしい姫ではなかったのだな。
子供とは成長するものなのだった
すっかり失念していた。
ウーラノスは、様変わりしたマリアベルを思い出し、どうしてよいのかわからなくなった。
23
あなたにおすすめの小説
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる