転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール

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第二章

ウーラノスと姫 1

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時はさかのぼり昨年9月、
一通の密書がウーラノスの元に届いた。

「アキフューズ、セフメス二世 危篤」

あの、好色ジジイ、やっとか、、、

お前のせいで俺は愛しい婚約者と離れなければならなかったのだ。




その一ヶ月後、アキフューズより正式な書簡が届いた。

「セフメス二世、死去に伴い前線の兵を帰還される事が決定した。
そして、我が帝国はオルファイドの同胞と争いを止める事を宣言する。」
次期国王イブメットのサイン入りの書簡であった。

俺はこの書簡をオルランド王国に送り国としての出方を相談した。
出向いて来たのはノーザンコート伯爵であった。

ドゥラーク領では、何か困った事になったらノーザンコートに相談せよ!と言われている程信頼が厚い。

これは、ドゥラーク領初代ホメロス二世が亡命した際に手助けをしたのがノーザンコートの者であったからなのだ。

ノーザンコート伯爵は言った
「三月まで一応の目処をつけよう。」

「三月ですか?」

「そうだよ、三月、マリアベルの卒業だ。
ファーストダンスに其方がおらなんでは格好がつきますまい!」

卒業パーティーのファーストダンス
そうだった、婚約者と踊るのが慣わしだ!
忘れていた、彼女と踊るのは私の役目。

俺は馬車馬のように戦後の処理をした。
部下も、マリアベル様に俺を会わせてあげたい一心で一緒に動いてくれた。

しかし、アキフューズの使者が三月の授与式に合わせて訪問するとは••••
これは、トラビス王の嫌がらせでは無いのか!と勘繰ってしまった。

三月、アキフューズの使者は公式に宮廷の授与パーティーで謁見するまでの間、我が家で護衛ともてなしをする事になった。

なかなかマリアベル様に会う機会が無い。

そして、約束の卒業パーティーは矢張りファーストダンスには間に合わなかった。

娘御とのファーストダンスを終えたキングスバリー公が、こちらに帰って来てアキフューズの使者と話を付けてくれた。

「今回の戦争は、前王が黄金の姫欲しさに仕掛けたもの、姫にもご迷惑をおかけした。
私に構わず、是非行ってお上げください。」
使者にそう言われ、俺は急いで支度を整え学園に向かった。

間に合ったか?、丁度 ラストダンスの為にフロアに人が集まっていた所だった。

(姫はどこだ、)
人溜まりをかき分け、中央ステージの人の波に割って入ろうとした。

「失礼を!」背後より若草色の髪をした青年に声を掛けられた。

「ウーラノス•ドゥラーク辺境伯とお見受け致します。私はウッドフィールド長子アルフレッドと申します。
実は、私の意中の令嬢がマリアベル様とラストダンスを踊る事になっております。
一小節程 彼女に踊らせてはいただけないでしょうか?」

「しかし、、、」

「いま、ホールに割って入ってはとても悪目立してしまいます。
照明が落ちた頃を見計らって私達とパートナーチェンジをした方が得策だと思うのですが••••、如何でしょうか?」

「成る程、確かにそうであるな、ここで大声でマリアベル様をお呼びしたら場を壊してしまうな。
ハハハ、では、私とアルフレッド殿で踊るとしよう」


照明が落ち、音楽が鳴る。
薄灯の中でも彼女の髪は目立つ

俺たちはコッソリと彼女らの側に近づいた。

そしてアルフレッドがサッと令嬢の手を取り、俺は空いた 姫の手 を私が掴んだ。

ハハハ、作戦成功だな!

「姫、遅くなりました。ウーラノス•ドゥラークただ今 参上いたしました」

「来ていただけて、とても嬉しいです」

その時、ライトが姫を照らした。

私は息を呑んだ。

誰だ、この美しい人は、確かに、私の姫だか、、、、
なんなのだ、この輝きは•••

私はまともに姫を見る事が出来ず目を逸らしてしまった。

なにか、会話を、しなければ、、、

「姫は背が伸びたのですね。」

「ええ、160㎝にギリギリ届きました。」

「そうですか•••」

会話が続かない、どうすればいいんだ

娼婦相手ならいくらでも話せるのに•••
バカ、マリアベル様は令嬢だ、私の天使、いや、天使が女神におなりになったのだ!

ああ、どうしよう、どうしょう、どうしよう

そうして最悪のラストダンスは終わってしまった。

俺は、どうしたらよかったのだ、、、、
まさか姫が、あのお可愛らしい姫が大人になるとは思っても見なかった。

絵姿は毎年送られては来たが、そこに書かれた姫は、以前の面影が多く残っていた。

いつ、お姿を変えられたのだ•••

俺は混乱してしまった。





ドゥラークのタウンハウスに帰り着くと 皆が声を掛けて来た。

「姫様、美しくなったでしょう!」
「姫様程 美しい方は見たことがございません」
「姫様はまるで女神様のようですなぁ」

「なんだ、お前達、知っていたのか?」

「ええ、姫様は年に何度か遊びにいらしておりましたから」
執事のハリルは答えた

「私達は未来のドゥラーク辺境伯夫人のお世話係ですので今から姫様の趣味を把握しておかなくてはなりませんので•••」
侍女達も当たり前のように答える。

側近のエルダーは言った。
「若!ビックリしましたよねー、あんなに美しく成長されていたなんて、、、」

「エルダー、お前も知っていたのか?」

「だって、俺、こちらに帰って来て、連絡に行ったじゃないですか」

「はぁ、、、せめて一言ぐらい言って欲しかったよ、、、、」

「だって、学園卒業ですよ!もともと天使のような方だから、大人になったら凄い美人さんになるに決まっているじゃないですか!
全く、何言っているんですかぁ、、、」

エルダーはアホの子を見るように凹んでいる主人を見下ろした。

そうか、いつまでもお小さい可愛らしい姫ではなかったのだな。
子供とは成長するものなのだった
すっかり失念していた。

ウーラノスは、様変わりしたマリアベルを思い出し、どうしてよいのかわからなくなった。








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