153 / 163
第二章
マリアベルの結婚 その2
しおりを挟む宴会が終わり、私はドゥラーク邸の自室に移動した。
夫婦の寝室を挟み階段に近い方がウーラノス様のお部屋、奥が私の部屋となっている
そして、私の部屋の隣にある続き部屋がガブリエルとメリッサの護衛の部屋である。
ドレスを脱ぎ化粧を落とし湯浴みする
そして、ズボン付きのパジャマに着替える。
ドゥラークの侍女さんは初めはズボンに難色を示したが、
「お風邪をひかれるよりは良いでしょう」
と言ってくれた。
「新婚さんいらっしゃーい!」の、スケスケのネグリジェじゃなくてよかったぁ
心からそう思った。
「ウーラノス様は来賓客様と少し話して来られるので先に休んでいるように、と仰せられました」
執事のハリルより伝言が来た。
では、疲れたので、遠慮なく休ませてもらいます。
私はフカフカの真新しい寝具の上で大の字になって寝た。
************
ふと、目を覚ました。
今何時? 夜中の11時40分
ウーラノス様は、、いない
まったく、まだ飲んでいるのね!
男の人ってお酒が入ると長丁場になっちゃうんだから•••
ちょっと小腹が空いてきた。
自室に戻り、ガブリエル達がいる続き部屋のドアをノックした。
「あれ、お嬢様?」ガブリエルが出てきた。
部屋にはガブリエルとメリッサ、それに侍女さん達三人
みんなで楽しくボードゲームをしていた。
「こんな時間にゴメンなさい。ちょっとお腹すいちゃって••• 」
「姫様、旦那様は•••」
「うん、まだみたいよ!」
「旦那様、きっとまだ飲んでいるんだわ!まったく初夜なのに何しているんでしょうね。ちょっと様子を見て来ます」
侍女さんがそう言って立ち上がった。
「私も行くわ! 食堂の係の者にも、労いの言葉を掛けてあげたいし•••、」
「では、みんなで行きましょう!」
私は取り急ぎカツラを被り、衣服を整え、魔道具を付けた
「ガブリエル、メリッサ、参りましょうぞ!」
はは———!
女5人、ずらずらと引き連れ、階段を降りて行った。
すっかり気分は黄門様の世直し旅である
普段は使用されない部屋のあちらこちらに灯が付いている。
「少し見て参りますね」
侍女さんが部屋を覗くと、ハワード侯爵とユチノフ近衛騎士団長が、酒を飲み紫煙を曇らせていた。
彼らは私に気が付き声を掛けてきた。
「マリアベル様、こんな夜更けに如何致した?」
「ええ、お腹が空いたものですから•••」
「ドゥラーク殿をお使いなさい!こんな夜更けに姫自らお出ましとは•••
知った邸といえど、酔っ払いがウヨウヨといておりますぞ!」
ハワード侯爵にそう言われてた、が、、、
「旦那様はまだ、何処かで飲んでおられるようなのです。ご存知ではありませんか?」
侍女さんが私に変わって答えてくれた。
「まさか、まだ部屋に帰ってもいないのか?」
「ええ、」
「そんな、まさか、今日は婚儀の日だぞ!」
ユチノフ団長もビックリしていた。
「では、私達も一緒にお探しいたそう」
ハワード侯とユチノフ団長を加えて総勢8人はズラズラと歩いて回った
今度は、グリム童話. ”金のガチョウ” の主人公 ハンス の気分である
一階の大広間の隣にあるシガールームから男達の声が響いていた。
「私が見て参りましょう。」
ユチノフ団長がそっとドアを開け中を覗い
た。
「だからさあ、きっと何かあるんだよぉ」
「17歳でこんなオヤジと縁組なんて変だと思わないか?」
「やっぱり噂は本当なのかもよ!」
「おい、ウーラノス、聞いているのか?」
「お前、王家にいいように使われたんだよ!」
なんだ?なんだ?
私達8人は耳を澄ませて室内の会話を聞いた。
「旦那様、寝ているんじゃないの?」
「いや、手が動いているぞ!」
「指で文字を書いているようですね。」
「寝ぼけているんじゃないですか?」
「顔が動いている!ニコニコしておるぞ!」
私達はヒソヒソ話しをした
「それより噂ってなに?」
「なんでしょう?」
髪が薄赤色の男が言った
「女神様の降りられた娘って触れ込みだけど、本当はそれ程美人ではないんだろぅ?
だから顔を隠しているのさ!」
そうだ!そうだ!
男達は盛り上がっている。
「従兄弟の子供が学園でマリアベル様と同期だが、聞いても、なにも言わないのだ
きっと醜女だから言えないのだ!」
ワハハハ!
私達は目を見合わせた。
「誰あの人?」
「チャールズ•カーライト子爵です。旦那様と学園と士官学校で同期で、ノーザンコートの親戚でごさいます。」
男達の噂はさらに続く
「俺は卒業パーティーの惨事は殿下とマリアベル嬢の痴話喧嘩だと聞いたぜ!」
「あっ、それ、俺も、聞いたぞ!」
カフェオーレ色の髪の男と、白いに近い水色の髪の男が相槌を打つ
「アイツ•••」ユチノフ団長が怒っていた。
「あれはウチの副長です。」
調子に乗って水色の髪の男はしゃべり出した
「殿下とマリアベル嬢が恋仲だったが、マリアベル嬢は殿下を捨てた、
怒った殿下がパーティーで逆上したって聞いたぞ!」
カフェオーレ色の髪の男が口を挟んだ
「あぁ。2人は恋仲だったのは本当らしいぜ。
でも、俺が聞いた話しによると、
殿下がマリアベル様の侍女に手を出したらしいぞ!
嫉妬したマリアベル嬢が、その侍女に酷い嫌がらせをして、学園から追い出したのだそうだ。
怒った殿下はマリアベル嬢をパーティーで断罪した、っていうのか本当の話しらしいぞ!」
「で、2人は復縁したんだろ!
2人で仲良くお詫びに回っていたらしいからな。」
薄赤の髪の男が言った。
「あれ、誰?」私はワナワナしながら聞いた
「水色の髪の方は近衛副団長 カルバートン•スミス伯爵です。
そして薄茶の男はレジナルド•マスグレープ伯爵
2人とも旦那様のご友人です。」
マスグレープ伯爵は、さらに追い討ちをかけるように言った
「もしかしたら、殿下の子が出来たんじゃないのか?だから王家は厄介払いしたとか?
マリアベル様の母君のコーネリア様も、確か月足らずでのご出産だったらしいし••• 」
「親子揃って淫乱だな!」
{{{ カチーン!!!}}}
キレた、皆んなキレた、
背後にいる2人の男の拳は、ワナワナと震えていた。
そして、それに対して反論もしないウーラノス•ドゥラークにも愛想が尽きた
私は言った。
「先程の会話、こんな侮辱を何故受けなければならないのでしょう、、、
晴れの席にこの様な仰り方、あんまりです。」
「酒の席だといえ、女性を侮辱するとは許せない、アイツら揃いもそろって•••
騎士の風上にもけない!」
ユチノフ団長は激怒である。
「何故、ドゥラーク殿は諫めないのだ!大事なマリアベル様をここまでコケにされて、、、
彼は、何故怒らないのだ!!!
アイツら、コーネリア様まで侮辱しやがって••• 許さない、」
ハワード侯爵も激怒である。
そして侍女さん達も激怒である。
私は侍女さん達にお願いした
「お願いがあります。あの3人の会話の記録を取ってもらえませんか?
何時に、誰が、何を言ったかの、」
「分かりました、給仕のフリして侵入して来ます」
侍女さん達は直ぐに行動に移った
「せっかく結婚式に来て頂いたのに、
こんな事になってしまい申し訳ありません」
私はハワード侯とユチノフ団長に謝罪をした。
「 私の事だけでなく亡き母まで、、、母は陛下の妹。デビューこそはしておりませんか王族です。
あまりにも酷い言われ方です。
これは王家に対する不敬です。」
2人は我が事の様に怒ってくれた。
そして、何かあったら証人になる事を約束してくれた。
「ガブリエル、メリッサ、部屋に帰ります」
私は2人を、引き連れて部屋にもどった
***************
その時のウーラノスはと言うと•••
まったく友人の会話など耳に入っていなかった。
ベロベロに酔った頭の中はマリアベルの事で一杯だった。
グラスの水滴で 「マリアベル•ドゥラーク、マリアベル•ドゥラーク」と、ニヤニヤしながら彼女の名前をテーブルになぞる
情け無いウーラノスであった。
マリアベルが好き過ぎて、顔すら見る事が出来ない彼が、彼女を抱く事など 果たして出来るであろうか?
ウーラノスは1人で脳内シュミレーションをしていたのであった。
「まずは、以前のようにお手を取れるようになる事から初めよう。
さりげなく会話をする練習からだな。
マリアベル様はまだお若い、暫くは白い結婚で過ごそう。
少しずつ距離を縮めて行けば良い。
今日の姫様は、あまりのお美しさに声も出なかった。すっかり舞い上がっしまった。
しかし、魔道具のない姫様は危険だ。
尊過ぎて、本物の女神が降臨したと思ってしまった。
あれではやはり外には出せぬはずだ。皆の心配がよくわかった。
あゝ、やっと今日から 毎日姫のお顔を拝見出来る•••
俺の姫だ、俺のマリアベル様だ!俺が守るのだ!!!
今頃は安らかにお眠りになっているだろうか•••
一目、寝顔でも•••
いやいや、それはダメだ、お顔を拝見してしまったら、俺は•••
はぁ、お会いしたい。
眠っている時なら抱きしめても••• そんな事してはダメだ!紳士のする事ではない。
•••マリアベル様は、••••今は夜着なのだ。
あっ、鼻血が•••. 」
思春期の少年の様に悶々としていた。
なんとも哀れなウーラノスであった
****************
32
あなたにおすすめの小説
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる