転生したおばあちゃんはチートが欲しい ～この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない～

第二章

マリアベル 知恵を絞り考える

ハワード侯爵とクレイ卿は、連れ立って、マリアベルのいるトレバスト修道院を訪問した。

貴賓面会室に通されるとそこには、、、
マリアベルの隣りに祖母ポーリンか座っていた。
そして、床にはチャールス•ノーザンコートが正座していた。

「 わたしが悪かった、許してくれ！」

「まあ、何の事かしら？、オホホ、ねぇマリアベル 」

「 さあ、私もちっとも••• 、
ねえ、お婆様、お祖父様は何故正座されているのかしら？」

「さぁ～ 殿方のされる事はわたくしには察する事は出来ませんわ！
だって、わたくし愚かな女ですもの！」

「 そうですね！私も先日お祖父様に ”察する事が出来ない” と叱られたばかりでしたわ！」

「 おーほほほ 」 と2人は声高く笑い合っていた。


ハワード侯とクレイ卿は、巻き添えを食わぬよう 伯爵を視線に入れないように注意して、マリアベルの元に向かった

彼らから、結婚の晩のマリアベルに関する中傷の件を聞いた。

「カーライト卿は直ぐにノーザンコートを通して謝罪したそうです。」

クレイ卿はちらっとノーザンコート伯爵を、見た。
彼は首を縦に振った。

「  カルバートンの方はハワード家を通して謝罪をしたいと連絡が来た。
スミスめ、今頃ガンガンと鍛えられているだろう、
カルバートン夫人のコニーは、私の歳の離れた従兄妹でな、実はカルバートンより強いのだよ！」

ネイサン•ハワード侯爵は、私の頭を撫ぜながら「 だから元気を、出しなさい」と言ってくれた。

以前、フレディ兄様から妹を事故で亡くした事を聞いた。
ハワード侯爵は、いつも、私を娘のように可愛がってくれる。
それがとても居心地がよかった。

「 問題はマスグレープですな、、、」

クレイ卿の調べによると、マスグレープ伯爵は子供の頃よりアイラを慕っており、成人しても、まだなおアイラを神格化しているようなのだ。

「 どうして、アイラ様はそんなに男の方の気持ちを虜に出来るのでしょう？」
私は不思議に思った。

ポーリンは言った
「 殿方とはね、無知な女が好きなのですよ、自分より、非力で劣っている女性に甘えられて、優越感を感じる生き物なのです。
だから華奢で庇護欲を感じる女性を見ると、”守ってやらなければ！” といい気持ちになるのです 」

「 そうですね、”ぶりっ子”はモテましたものね 」　私は前世を思い出した

「 なんだ、その、ぶりっ子とは？」ハワード侯が聞いた

「 わざとらしく、可愛い子の振りをする。
かわい子ぶる、から ”ぶりっ子” です 」

「 ウハハハ、やっぱりマリアベル様は面白いぃぃい、、ウハハハ、」
なんだかクレイ法務大臣のツボにハマったようだった。


「 しかし、ここに来て、またアイラとはなぁ••• 」 ノーザンコート伯が呟いた。

「お祖父様、アイラ様は今どこにいるのか分かりませんか？」

「 お前の誘拐事件の後からは、全くの行方知れずだ。足取りすら掴めない。
海外に逃亡したのか、死んでいるのか、はたまた売られてしまったのか、、、」

「 アナベル様は今は？」

「 あの子は薬が強すぎたようで、脳がイカれて大人にはなれないらしい。
クロスリー子爵家では、娼館で見つかったのはアナベルではなく(子爵の愛人との間に出来た子が産んだ娘) と発表したようだ。
アナベルはあくまでとアイラと一緒に出奔した事にしてある。」

「 可哀想に、、、」


噂とは、生き物なのだ
小さな核が雪だるまの様に転がって成長していく
そして、、、全く異なったモノに成長した噂だけが独り立ちをして歩き始める


アイラは、一途に1人の男性だけを思い、奪われてもなお、愛し続けた純粋で健気な女性。
庇ってあげたい、守ってあげたい、、、

うん？、庇ってあげたい、と思わせなければよいのではいの？
守る価値も無い、、、
純真無垢は見せかけで、実態は、皆の嫌いな “淫乱” だったら••••

こちらから核を仕掛ければ••••

ハッと、顔を持ち上げ祖父を見つめた

「 ねえ、お祖父様、クロスリー子爵を動かす事は出来ますか？」

「ああ、誘拐事件の後片隅をしてやって以来、ウチの傘下に、入っておる。」

「　アイラ様は、実は駆け落ちした事にしませんか？
アナベル様はその方の子供、
初恋を達成したのはよいが、相手は自分が思ったような人ではなかった。
新たに愛人を作り、アナベル様を産んだ。
それがバレて愛人と侯爵家のお金を盗み駆け落ちした。

そのように話をでっち上げればよいのでは無いですか？」

「うむ、、、　しかし思い込みの崇拝はそう落ちるものではないぞ！
言われれば言われる程反発するかもしれん。」

「それは、それでよいと思います。外堀から埋めていけば•••
10人中9人がアイラ＝悪人という風潮をつくる、残った1人はどうなりますか！」

「自爆するか、社交界から確実に干されますね！」
クレイ法務大臣が頷いた

「 マリアベル様、相変わらず悪知恵が働きますね！」

「 嫌だわ、クレイ大臣、生き残る為の知恵と仰って下さいまし、、、」

私は扇を開き、悪役令嬢がするように「フフフ」と微笑んだ


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[  ジョン•クレイの考察  ]


話し合いが終わり侍女がお茶を、持ってきた。

私は、そのお茶を一気に飲み干した。

そして、本題に移った。

「 サインをもらってまいりました 」

「 あら、早っかったわね。
ありがとう、お手間お掛けしたわね 」

マリアベル様は、そう言うとサラサラとまるで試し書きをする様に離婚承諾書にサインをした

「マリアベル様、本当によろしいのですか？」

「あら、どうして？」
彼女は無邪気な顔して不思議そうに答えた

「 以前はとても仲睦まじくいらっしゃたご様子。
離婚の届けを出して他人となったら後戻りは出来ませんよ！
話し合いでまた以前の仲に戻れるかもと、、、」

「 私は何も変わっていないわ。三年前も今と同じ人間よ。
変わったのはウーラノス様だわ。
私の外見に惑わされ本質を見誤りっている。そして、ご自分の気持ちを優先させ、その先に、私がいる事が分からないご様子。
以前の彼ならあり得ない事だわ 」

「しかし、、」

「残念ながら、私は大人になってしまったの。
少女の外見には戻れないわ 」
マリアベル様は悲しそうな顔をした。


「まあ••• もしまた、やり直す気があったら、再婚でもすればよいでしょう。」

「 しかし、離縁した女性の、再婚はとても難しいのもなのですよ。」
私はそう言った

「 時代は、進化するものよ！
私ね、学園で魔石で走る車を作ったの。
そしてそれは次代に引き継がれ、そのうち、きっと実用化されるわ
そんな時代が来るのよ。
女性の、離婚再婚なんて珍しくもない時代がくるのも時間の問題よ。
その為にも、女性の地位を上げ、女性の目線での法を整備をしなければならないわ！」

マリアベル様は、まだ、あどけなさが残る天使の微笑みを私に向けた

私の心は震えた

この方なら、出来るかも知れない

いや、この方ならきっとそれをやり遂げる事が出来る！！！

その為には、私は彼女の手足になる事は厭わない。


「 私も、大分、感化されたようだな 」

帰りの馬車の中で、未完成の [離婚承諾書]を眺めながら これから来るであろう未来を想像した。

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