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第一章 ハロー、旦那様。
1-8
しおりを挟む匠くんの表情は見えない。耳元にかかる息、さっきまでとは違う低い声。急激に速まる鼓動が、昨夜何かがあったと告げている。でも、思い出せない。欠けてしまった記憶は、ころんと転がってどこかに無くしてしまった。
「昨日、私、なにか?」
お酒の勢いに任せて未成年に手を出してしまったのか。先程までのドキドキとは全く違う、冷や汗さえ出ない緊張が身体を強張らせる。
「覚えてない?」
「___はい」
「そっか。でも、もうしちゃったしな」
「し、しし、しちゃった・・・」
「うん」
そう言ってより一層強く抱き締められると、もうアレを奪ってしまったとしか考えられない。
「は、初めて・・・デスカ?」
「当り前じゃん」
恥ずかしそうに首元に頬をぐりぐりと押し付けられれば、それはもう確定で。
「責任取ります」
「___いい」
「でもっ」
見切り発車で、ナニの責任をどう取るかだなんて自分でもわからない。それでも私は匠くんの大切なものを奪ってしまったんだ。
匠くんの腕をぎゅっと握り、首だけ振り返る。ちゃんとした誠意を見せたくて。至近距離で見えた彼の表情は、なんだか悲しそうに見えた。
「僕のセリフだよ。責任取って幸せにする」
「・・・」
なんだか飛躍している気がするようで、そうでもないような気もする。未成年の初めてを無理矢理奪った私は、責任を取って・・・幸せにする?
眉を寄せて冷静になるように努める。まず私たちの出会いって・・・
「これ。よく撮れてるでしょう?」
にっこりと微笑んだ匠くんの手に握られているのは、最近出たばかりの最新のスマホ。しかし見るべきものはそこに映っているもの。
私と匠くんが映っている。それはいい。なんの問題もない。問題なのは二人で笑いながら手に持っているもの。
「これ?」
「これ」
「これ・・・、私初めて見たんだけど」
「それは昨日も言ってたね」
「私が、書いた?」
「うん。書いた」
「これ、どこにあるの?」
「役所だよ」
「役所?」
「役所」
「受理?」
「された」
「じゃあ」
「僕たちは今日から夫婦だよ」
オーマイゴッド!!!!
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