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第二章 秘密のベール、脱がせます。
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しおりを挟む大谷グループとは、確か元々は全国展開の家具屋さんだったはず。全国にあって田舎出身の私も利用した事があるということは、県に一つとかそんなレベルではなく展開しているということ。それだけでも震えるのに、優良企業としても名高いし今や家具だけじゃなく不動産業やIT、ホテル事業もしているどえらい会社だ。多分私の知らない事の方がたくさんありそうだけれど、情報に疎い私でも知っているくらいだから・・・。
ちらりと匠くんを見れば、怒られた子犬のような眼差しを私に向けている。そんな大企業の息子なら、尚更なんで私と結婚なんかしたんだ。
「嫌いになった?」
「嫌いというか・・・、寄って来る女性はたくさんいるんじゃないかなと」
「僕は亜子ちゃんに嫌われないかだけが怖いよ」
「いやぁ・・・」
嫌いとかじゃなくて、さすがにレベルが違い過ぎる。お金持ちに憧れないわけではない。イケメンでド級にお金持ちで、若くて優しくて可愛くて紳士な男性に言い寄られるなんて現実的じゃない。あれかな。王道漫画である、お金持ちが貧乏人を見て「お前、面白いな。俺の女になれ」という傲慢から始まるラブストーリー。本来ならば涎が出るほど大好きな展開だけれど、その主人公が自分だなんて在り得ない。気まぐれ? 遊び? やっぱり夢?
「___ちゃん。亜子ちゃん、おーい」
すっかり旅に出ていた思考が、匠くんに揺すられてようやく身体に戻って来た。眼前には綺麗な顔があり、彼の中性的で綺麗な手で両頬をぶにゅっと潰されている。
「あい」
「おかえり」
「てでいま」
「ふふ、可愛いよ」
すっかりイケメンにも慣れてきた私は、今更可愛く見せようだなんて悪足掻きはしない。潰れた顔のまま、突き出た唇を上下にピヨピヨと動かして見せた。それを見た匠くんの目が一層大きく開いたかと思うと、くしゃりと笑って近付いて来る。来ると思ったとき、思わず目を閉じて顔を逸らしていた。
「・・・」
少しの間の後、こつんと額に小さな痛みを感じて目を開ける。額を合わせてほんの数センチの距離にある匠くんの瞳。いつもは真っ直ぐに見てくるはずなのに、何故だか今は視線が合わない。パタパタと揺れる睫毛は下を向いていて、より一層長く見える。
「どうしたの?」
「なんでもないよ。亜子ちゃ(ピンポーン)
笑顔なのに、笑顔に見えなかった。口角と目はちゃんとお手本のように笑顔を作っているのに、そう見えないのは匠くんの雰囲気の所為かもしれない。
(ピンポーン)
匠くんの様子が気がかりで、再度慣らされたチャイムにようやく気付く。立ち上がろうとした時には、匠くんがリビングから出ていくところだった。
来客に直ぐ立ち上がることも出来ないなんて、私はやっぱりだめな妻だ。そう思った時、自分の妻という立ち位置にも違和感を感じた。私は匠くんの頼りないけれど、姉という立ち位置のほうがずっとしっくりくる。愛し合う二人というよりは、冗談を言い合える姉弟。匠くんには女兄弟がいないのかもしれない。だから、この関係を”好き”だと勘違いしているのかもしれない。箱入り息子なら在り得なくもない話だ。
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