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第三章 大谷匠、という男。
3-4
しおりを挟むはっはと少し息を荒くした田村さんが立っていた。
「田村さん・・・、先程はありがとうございました。嬉しかったです」
「白石。大丈夫か?」
「え?」
「辛くないか?」
「えっと、一体どうしたんですか?」
田村さんの真剣な眼差しに戸惑う。こちらを見つめてから、その視線が後ろに立つ匠くんへと動く。
「貴方が大谷グループの御曹司だと存じ上げております。その上で、男として問わせていただきたい。___気まぐれじゃないですよね?」
「・・・」
「白石のこと泣かせたりしたら、貴方がどれだけ偉かろうが俺が殴りに行きますから。そして、返してもらいます」
「白石さんは田村さんのモノではないでしょう? 返してもらうという表現は語弊があるのでは?」
状況が飲み込めないまま二人の会話が進んで行ってしまう。そんなに言ってもらえるほど、私の売り上げ良くなかったです。おじいちゃんに携帯の操作案内二時間して店長に怒られているレベルで、取り合うほどの人材じゃないんですけど。
もちろんそんなツッコミ入れられるような雰囲気じゃなくて、アタフタと二人の顔を交互に見ているしか出来なかった。田村さんの真剣な表情も、匠くんのこんな好戦的な姿も見たことない。田村さんはいつも笑わせてくれていたし、匠くんなんて甘えたの子犬さんなのに・・・。
「白石」
「う、あ、はい」
「いつでも連絡して。俺はお前の味方だから」
「あ、りがとうございます」
「行こうか、亜子ちゃん」
隣に立ってにこやかに見下ろしてくる匠くんの腕が腰に回ってくる。そんなこと田村さんの前でされるのは恥ずかしくて、腕を外してもらえるように抵抗したが更に引き寄せられてしまうだけだった。腕から逃げられないのであれば、この場から逃げるしかない。匠くんの腕に従って田村さんに背中を向ける。
「白石」
「は、ぅい?」
再度呼ばれて振り向こうとしたけれど、匠くんの腕がそれを許してくれない。
「ちょっと、匠くんんっ」
抗議のために見上げた匠くんの表情は冷たくて、無理矢理引き寄せられて唇を奪われる。腕を突っ張って胸板を押してみても、更に頭ごとホールドされてしまった。息苦しい程の口付けに鼻からの呼吸もやっとで、合わさった唇の隙間から必死で息を吸う。主導権は匠くんで、我が物顔で口内を弄ばれていた。
「っんは、はっ(ぱちん)
ようやく解放されて酸素不足の鈍い思考のまま、匠くんの頬を打つ。
「___ごめん」
「はぁ、はぁ・・・匠くんらしくないよ」
「そうだね。僕が悪かった」
徐々に息が整い、そして思い出した。先程まで田村さんが立っていたほうを振り返ると、そこに田村さんの姿は無かった。
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