Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ

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第六章 グッバイ、旦那様。

6-2

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 車の多く行き交う道を歩いていた。ビジネス街だからか、夕日が落ちかけているこの時間は人通りが少ない。恐らくあと二時間くらい経ったら、そこかしこのビルからくたびれた顔の大人たちが波のように出てくるのだろう。私もついひと月ほど前まで、そうだったから。
 匠くんは私を縛らない。田村さんと会ったあの日以来、誰といるかやどこにいるかとか、何しているかなんてなんにも聞いてこない。連絡も帰る頃に来るくらいで、それは私が家にいることをわかっているからなのかもしれないけれど、正直私に興味ないんだなって思ってしまう。私は貴方に興味深々ですよ。

 特に意識していたわけではないけれど、足が向かっていたのは大谷グループの本社。匠くんは今日スーツで出て行ったから、大学ではなく仕事の日。ホテルは都内だけでも十以上あるし、どこにいるかだなんてわからない。聞く事なんて出来ない。ただ、少しの願掛け。もしも、もしも偶然匠くんに会えたら・・・。
 そう思いながら本社前に着いても、入る勇気なんてない。こんな格好の私を、本社から出てくる社員たちが不思議そうに見ながら通り過ぎていく。ここで待ちぼうけしたって、運が悪ければ通報されるかもしれない。だから、近くの公園の花壇の淵に座った。中の方ではなく、外の車通りが見える位置に。なんだか、ここがいいと思ったから。


 すっかり日が落ちてしまって、風も冷たくなってきた。約束をしているわけでもないのに、ただ待ちたくてここにいる。私、ストーカーの素質があるかもしれない。携帯を覗いても匠くんからの連絡はなくて、はあと息を吐いて空を見上げる。

「月が綺麗ですね」

 欠けた月がくっきりと空に浮かんでいて、周りにはたくさんの星が散らばっている。きっと私の実家からならもっと綺麗に見えたはず。
 あの月が匠くん。周りに煌めいている星が一握りの女性で、私はきっと都会の明るさに勝てずに見えていない星。じゃあ、あそこでひと際輝いているのが沙也加さん、か・・・。

「___れ? あれ? ははっ」

 涙が零れていた。月が霞んでしまうくらいに。

「見て、泣いてるよ」
「ほんとだ。フラれたんじゃない?」
「あー・・・」

 目の前を通り過ぎる綺麗なお姉さんたちが、私を憐れみながら通り過ぎていく。こんなに寒いのにスカートを穿いて、歩き辛そうなピンヒールをツカツカと鳴らしながら。彼女たちは努力している。だから美しい。わかっているの。私も努力しなくちゃいけないのに、目指すべき人は遥か上の方から穢れの無い笑顔を私に向けている。

 なんだ、私。辛いじゃん。一緒に居られるならって、そう決めたのに。代わりでもいいって思ってたのに、いつしか本物求めちゃってるじゃん。

「欲張り・・・、っく、うぐっ・・・」
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