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最終章 極上の旦那様を、ご賞味あれ。
Last-4
しおりを挟むどこの官能小説にウインナーを押し付け合うという珍プレイをする人がいるのだ。ええ。私は官能小説ではないこの世界で、ウインナーを押し付け合っています。とっても美味しいウインナーです。
「可愛いなあ、亜子ちゃん」
「んぐ」
「いつも色んな表情を見せてくれるね」
それはこの阿保面のことでしょうか、旦那様?
匠くんが咥えていたときはあんなにえろかったのに、私に触れた瞬間にウインナーは色気を失ってしまった。
「食べていいの?」
「・・・」
それなのに匠くんがウインナーを奪い去る。咥える瞬間の半開きの口の中で、赤い舌がちろりと動いたのが最高にえろかった。ああ、だめだ。前ページから、えろいの連呼が止まらない。むぐむぐと動く頬が可愛くて、嚥下する喉仏が色っぽい。極めつけの舌なめずりまで見せられて、庶民の私でもこの映像が十万円だとしても買いたいと思ってしまったくらい。
「ごちそうさま」
「こちらこそ」
「え?」
「いえ、なんでもありませぬ」
首を傾げて笑う匠くんを見て、意図的なのかなんなのかよくわからない。大人のそれなのか、子どもながらに純粋にしたそれが私に刺さっているだけなのか。
「そういえば、こうわって何?」
自分の心臓を静めるためにも、匠くんを押しのけてソファに座り直した。隣で同じように姿勢を正す匠くんは本当に空気が読める。
「口に話すって書いて口話。僕はパーティとかにも参加しないといけないから、会話しつつ他の人の話していることも知れるのは大切なことだと思わない?」
「そんな聖徳太子みたいなことしているの・・・?」
「慣れだよ」
「私は二十七年間生きてきて、慣れで口話を会得出来てなんかいないんだけど」
「亜子ちゃんは出来ないくらいが可愛いよ」
「それ、褒めてない」
ははっと笑った匠くんは立ち上がり、ワゴンからコーヒーポットを持ち上げた。
「飲む?」
「・・・」
ぱくぱくと口だけ動かしてみた。「飲む」と短く動かせば、微笑んだ匠くんが二つのカップにコーヒーを注ぐ。「おぉ」と小さく感嘆の声を漏らせば、楽しそうに細められた匠くんの目が私に向いた。
「砂糖は?」
「・・・」
新しいおもちゃを買ってもらった子どものように、うきうきと唇を動かす。「ひとつ」と動かせば、匠くんが急に笑い始めた。
「え? な、なに?」
「ああ、ははは。もう、亜子ちゃん可愛い過ぎるよ。そんな口ぱくと一緒に指を一本立てたら、僕じゃなくてもわかるよ。ははっ、もうだめだ」
そこまで笑われると、恥ずかしいよりもつられ笑いのほうが勝まさる。匠くんと過ごす日々は楽しかった。それでも今日が一番可笑しくて、昨日よりもずっと匠くんのことを好きだと思う。苦しい胸の痛みは消えて、私の心は幸福の愛しさで溢れている。匠くんもそうでありますように。
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