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綿竹城の攻防
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劉璝は綿竹城に入った。
城兵は二千人しかいなかったが、彼は絶望しなかった。
ここでの戦いが雒城を救い、雒城の戦いが成都を救うのだと思った。ひいては益州全体を救うことになる。
劉備軍二万五千は綿竹城を包囲した。
「まずは降伏勧告を行おう。李厳、使者になってくれ」と劉備は言った。
李厳は城内で劉璝と会談した。
「劉璝殿、劉備様に降伏しないか。この州を守り切れるのは、あの方しかいない」
「私はそうは思わない。益州を託せるのは、劉循様だ」
劉璝の言葉を聞いて、李厳は意外に思った。
「劉循様? 劉璋様ではなく?」
「劉璋様と劉備殿を比べると、確かに主の方が劣るのだろう。しかし、主のご子息の劉循様は素晴らしい方なのだ。私は降伏しない。劉循様のために戦う」
李厳は城から出て、劉備に報告した。
「劉循殿とは、劉璋殿の息子か。そんなによくできた子なのか?」
「実はよく知らないのです」
李厳は首をかしげた。
劉循は二十歳の若者で、なんの実績もない。劉璝がなぜあれほど肩入れするのかわからなかった。
「劉循殿はどこにいる?」
「成都城にいたと思いますが、いまどこにおられるかはわかりません」
劉備は劉循のことが妙に気にかかった。
劉備軍は綿竹城を攻め始めた。
はしごを立て掛け、城壁を登ろうとするが、城兵は懸命に守って、なかなか突破できなかった。
「敵の士気は高いな……」
劉備は目を見張った。
「城兵は二千人ほどらしいです。攻めに攻めれば、必ず落とせます」と龐統は言った。
「そうだろうが、ここであまり犠牲者を出したくない」
「消極的になれば、いつまで経っても落とせません」
「ううむ。だが、なにか不気味な感じがするのだ。用心しろ」
劉備軍は総攻撃を控え、綿竹城をゆるやかに攻めた。
二か月が過ぎた。
城兵の士気は下がらず、いつまでも意気盛んだった。
劉備は間諜を放って、劉循のことを調べた。
そして、劉循が雒城にいて、防備を固めているのを知った。
「しまった、本丸は雒城だ。綿竹の戦いは、時間稼ぎにすぎない。用心しずきて失敗した」
劉備は総攻撃を命じた。
黄忠や魏延らが、綿竹城を全力で攻めた。馬謖、劉封、関平、張苞らの若い武将が、われ先にと城壁を登った。
「劉璝様、守り切れません。このままでは城壁を突破されます」
副官が悲鳴のように叫んだ。
「無理に守らなくてもよい。この城は役目を果たした。雒城ではもう、充分に準備を整えていることだろう」
劉璝は余裕の笑みを浮かべた。
「西門から撤退する。私がしんがりをつとめる。皆、雒城へ逃げよ」
劉璝とわずかな手勢が城に残り、多くの兵が雒城へ向かって走った。
張苞が最初に城壁の上に立ち、すぐに関平がつづいた。
「退去する。おのおの、懸命に逃げよ!」と劉璝は叫んだ。
綿竹城の兵が雒城へ逃げてくるのを、劉循は城塔から目撃した。そのすぐ後ろに、劉備軍の追手が迫っている。
「僕が援護する。味方を迎え入れろ!」
劉循は騎兵隊を率いて出撃し、劉備軍とぶつかった。
彼らが戦っている間に、綿竹の兵は雒城に入ることができた。
劉璝も生き残って、入城した。
劉循は最後の兵が雒城に入ったのを見て、城に戻った。
「劉循様、おかげで助かりました」と劉璝は言った。
「こちらこそ礼を言う。あなたが綿竹でがんばったから、雒城の防衛体制が整った。ここで劉備軍を防いでみせる」
「私もまだまだ戦います」
雒城まで敵兵を追った魏延は、若い将に迎撃されて、掃討できなかったと劉備に伝えた。
「その若者が、劉循であろう。なるほど、劉璋殿はよい息子を持っているようだ」
城兵は二千人しかいなかったが、彼は絶望しなかった。
ここでの戦いが雒城を救い、雒城の戦いが成都を救うのだと思った。ひいては益州全体を救うことになる。
劉備軍二万五千は綿竹城を包囲した。
「まずは降伏勧告を行おう。李厳、使者になってくれ」と劉備は言った。
李厳は城内で劉璝と会談した。
「劉璝殿、劉備様に降伏しないか。この州を守り切れるのは、あの方しかいない」
「私はそうは思わない。益州を託せるのは、劉循様だ」
劉璝の言葉を聞いて、李厳は意外に思った。
「劉循様? 劉璋様ではなく?」
「劉璋様と劉備殿を比べると、確かに主の方が劣るのだろう。しかし、主のご子息の劉循様は素晴らしい方なのだ。私は降伏しない。劉循様のために戦う」
李厳は城から出て、劉備に報告した。
「劉循殿とは、劉璋殿の息子か。そんなによくできた子なのか?」
「実はよく知らないのです」
李厳は首をかしげた。
劉循は二十歳の若者で、なんの実績もない。劉璝がなぜあれほど肩入れするのかわからなかった。
「劉循殿はどこにいる?」
「成都城にいたと思いますが、いまどこにおられるかはわかりません」
劉備は劉循のことが妙に気にかかった。
劉備軍は綿竹城を攻め始めた。
はしごを立て掛け、城壁を登ろうとするが、城兵は懸命に守って、なかなか突破できなかった。
「敵の士気は高いな……」
劉備は目を見張った。
「城兵は二千人ほどらしいです。攻めに攻めれば、必ず落とせます」と龐統は言った。
「そうだろうが、ここであまり犠牲者を出したくない」
「消極的になれば、いつまで経っても落とせません」
「ううむ。だが、なにか不気味な感じがするのだ。用心しろ」
劉備軍は総攻撃を控え、綿竹城をゆるやかに攻めた。
二か月が過ぎた。
城兵の士気は下がらず、いつまでも意気盛んだった。
劉備は間諜を放って、劉循のことを調べた。
そして、劉循が雒城にいて、防備を固めているのを知った。
「しまった、本丸は雒城だ。綿竹の戦いは、時間稼ぎにすぎない。用心しずきて失敗した」
劉備は総攻撃を命じた。
黄忠や魏延らが、綿竹城を全力で攻めた。馬謖、劉封、関平、張苞らの若い武将が、われ先にと城壁を登った。
「劉璝様、守り切れません。このままでは城壁を突破されます」
副官が悲鳴のように叫んだ。
「無理に守らなくてもよい。この城は役目を果たした。雒城ではもう、充分に準備を整えていることだろう」
劉璝は余裕の笑みを浮かべた。
「西門から撤退する。私がしんがりをつとめる。皆、雒城へ逃げよ」
劉璝とわずかな手勢が城に残り、多くの兵が雒城へ向かって走った。
張苞が最初に城壁の上に立ち、すぐに関平がつづいた。
「退去する。おのおの、懸命に逃げよ!」と劉璝は叫んだ。
綿竹城の兵が雒城へ逃げてくるのを、劉循は城塔から目撃した。そのすぐ後ろに、劉備軍の追手が迫っている。
「僕が援護する。味方を迎え入れろ!」
劉循は騎兵隊を率いて出撃し、劉備軍とぶつかった。
彼らが戦っている間に、綿竹の兵は雒城に入ることができた。
劉璝も生き残って、入城した。
劉循は最後の兵が雒城に入ったのを見て、城に戻った。
「劉循様、おかげで助かりました」と劉璝は言った。
「こちらこそ礼を言う。あなたが綿竹でがんばったから、雒城の防衛体制が整った。ここで劉備軍を防いでみせる」
「私もまだまだ戦います」
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