劉備が勝つ三国志

みらいつりびと

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孔明と龐統

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 劉備は成都城から蜀郡の山々を眺めていた。
 益州は険しい山脈に囲まれた盆地で、守るのに適した天然の要害である。
 山を見ながら、彼は七年前に交わした約束のことを考えていた。

 龐統は毎日忙しく働いていた。
 彼は劉備から益州の行政を任されていた。州を富ませるのが仕事。
 人材を発掘し、人口を把握し、税を公平に集めるのが急務だ、と思っていた。やることはいくらでもあった。
 彼は行政家としての才能をめきめきと伸ばしていた。
 軍事では魏延におくれを取ったが、内治では益州で並ぶ者がなかった。
 
「殿、成都県は益州を治めるのに適した地ですが、江州県は長江に面しており、荊州と連絡を取るのに最適の地です。江州城を改修し、第二の居城となさってはいかがでしょうか」と龐統は劉備に提案した。
「よい考えだ。早速進めよ」
 龐統は江州城の工事に着手し、江州港を整備し、新しい船を多数建造した。

 劉備は龐統とともに江州城に入った。
「素晴らしい城だ。よくやってくれた。ありがとう」
「殿のために働けるのが喜びです」
「目に隈ができておる。きちんと眠っていないのではないか?」
「生きていける程度には寝ております。問題ありません」
「そうか、ご苦労。だが、身体にはくれぐれも気をつけろよ」
 龐統は微笑み、頭を下げた。
 江州城からは巴郡の山々が見えた。
 山を眺めながら、劉備はここのところ考えていたことを龐統に伝えた。
「龐統、荊州へ行き、関羽を助けてやってくれないか?」

 龐統は耳を疑った。
 荊州へ?
 関羽を助けるということは、劉備のもとから離れるということである。
「殿、私は必要ないのですか?」
「おまえは大切な家臣だ」
「ではなぜ益州から出なくてはならないのです?」
「孔明を呼ぼうと思っておる。孔明がいなくなった荊州を任せられるのは、龐統だけだ」
「私は殿のもとで働きたいのです」
 劉備は山から龐統へ視線を移した。
「七年前、新野で孔明と約束したのだ。ともに曹操を倒そうと。彼は徐州で曹操に母親を殺されている」
「徐州大虐殺……」
「約束を果たそうと思っている。龐統、荊州を頼む」
 龐統はしばらく表情を曇らせていたが、顔を上げて言った。
「わかりました。荊州で殿のために働きます」

 龐統は江州港から船に乗り、公安へ行った。
 公安港も拡充され、船が増えていた。孔明の仕事だろう、と龐統は思った。
 公安城に入り、孔明に会った。
「諸葛亮殿、殿があなたを必要としている。ともに曹操を倒そうとおっしゃっていた」
 孔明は城から長江を見下ろした。
「そうか。約束を憶えていてくださったのだな」
「私は荊州で働き、殿が曹操を倒す手伝いをしたいと思う。どこにいても、殿を助けることはできる。だが、お近くで働けるあなたをうらやましく思う」
 孔明はこくんとうなずいた。
「ふたりで殿をお助けしよう」

 龐統は一枚の紙を孔明に渡した。
「益州の人材の名が書いてある。彼らを活用すれば、州はもっと強くなる」
 孔明はその紙を受け取った。
 そして、別の紙に筆でさらさらと人名を書いていった。
「荊州の人材です」
「考えることは同じだな」
 龐統は笑った。

 孔明は江州へ行き、劉備と再会した。そこから成都へ向かった。
「孔明、約束を果たすときがきた。ともに曹操と戦おう」
「はい」
 孔明は万感をそのひと言に込めた。

 道々、ふたりは荊州と益州の人材についての話をした。
 荊州には廖化、楊儀、蔣琬、張南、馮習、傅彤、陳震らがいた。 
 益州では黄権、費詩、費禕、董和、董允、張翼、張嶷、呉懿、呉蘭、雷銅らが見い出されていた。

「廖化殿や楊儀殿は、関羽殿を慕い、あの方のもとで頭角を現しています。蔣琬には、政治の才があるようです」などと孔明は語った。
「益州も人材が豊富だ。彼らを活用すれば、曹操にも負けはせぬ」と劉備は言った。
「人事を整えねばなりませんね。新旧の人材をうまく使って、益州と荊州を治め、曹操と戦える軍隊をつくらねばなりません」
 孔明は成都城で多くの人に会い、劉備と相談しながら人事案を練った。 
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