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昼休み
楓やクラスの他の女の子達と机をつけてお弁当を食べていたら、「晶!」と女の子から私の名前を呼ばれた。
教室の扉の所にいる、1年の時も同じクラスだったその子の方を見ると、その子の隣にはバスケの格好のままの佐藤先輩がいた。
「久しぶりにお兄ちゃ・・・・ぁ、佐藤先輩が来たよ!」
私が怪我をしてからは教室までは1度も来なくなっていた佐藤先輩が、久しぶりに此処まで来たらしい。
「すみません・・・っ、私、晶の本当のお兄さんなのかと思ってて!!
名字も同じだし顔も結構似てるし、男バスとか女バスの子達も”晶のお兄ちゃん"って言ってて・・・!!」
「全然大丈夫だよ、晶の本物のお兄ちゃんだと自分でも思ってるし。
2年でも晶と同じクラスなんだね、晶と仲良くしてあげてね。」
「はぁい・・・っ。」
作ったニコッという顔で笑う佐藤先輩の顔を見上げている女の子の目が完全にハートになっているのを見て苦笑いをし、佐藤先輩の前まで辿り着いた。
「どうしたんですか?」
「今日さ、一緒に帰れなくなって、ごめんね。」
「なんだ、ビックリしました。
メッセージでそう送ってくれるだけで大丈夫でしたよ?」
「一緒に帰る約束してたし、晶が寂しがるかなって。」
「家にも来られなくなったんですか?」
「それは絶対に行くよ!!!」
「あ、そうなんですか?」
佐藤先輩が何を言いたいのか分からずに首を傾げると、佐藤先輩は少し不貞腐れながら口を開いた。
「今日は部活もないし学校で全然会えないじゃん。
昼練にも晶は来なくなっちゃったし、マジで全然会えないじゃん。
俺が寂しいから教室まで来たの!」
「あ、そうなんですかっ?」
思わず笑ってしまった私に佐藤先輩はムキになった顔になる。
「晶もちょっとは寂しがってよ。」
「えぇ・・・、あ、でも、私が膝を怪我しちゃった時は佐藤先輩が前みたいに話し掛けてくれなくなって、バスケが出来ない私のことを嫌いになったのかなって結構寂しかったです。」
「そんなはずないじゃん・・・、俺が晶のことを嫌いになるとか絶対ナイじゃん・・・。
むしろ、晶の怪我は俺のせいだと晶から思われてるんじゃないかと思って、すげー怯えてたよ・・・。」
「それこそ絶対ナイじゃないですか。」
「そう・・・?本物に?
俺のこと、嫌いになってない?」
「なってないですよ。」
「よかった・・・っっ!!!
晶に嫌われたかもと思うと死ぬほど怖かったんだよ!!!」
佐藤先輩がそう言い終わったタイミングで昼休みが終わるチャイムが鳴った。
「ヒマリから放課後に話したいことがあるって言われてさ!!
多分別れ話だと思うから速攻で晶の家に行くから!!
あ、晶のお母さんに”今日はハンバーグと生姜焼きが良いです"って連絡してあるから夜ご飯ハンバーグと生姜焼きだから!!」
「やったぁ、その組み合わせは佐藤先輩がいる時しか出してくれないからめっちゃ嬉しい~!!!」
”食べ切れない"という理由でその組み合わせは佐藤先輩がいる時しか食べられない。
久しぶりにハンバーグと生姜焼きが一緒に食べられる夜ご飯にめちゃくちゃテンションが上がった。
私が佐藤先輩に片手を出したタイミングで佐藤先輩も同じ動きをし、2人で久しぶりにハイタッチをする。
「こら・・・!佐藤、走るな!!」
「すみませんっ、5時間目は体育で!!
体育着に着替えておくの忘れた!!!
あ・・・・・・!!!!」
ロンTにバスパン、バッシュ姿で廊下を走り出していた佐藤先輩がキュッと止まり、私に振り返る。
そして片手で何かを投げてきた。
凄いスピードで、直線で私の所へと飛んできた小さな”何か"を、私も片手で普通にキャッチした。
私の手の中に届いた”何か"を確認すると、私の手の中には佐藤先輩の家の鍵があった。
「母ちゃんに洗濯物入れておけって言われててさ!!
家に行かないで晶の家にそのまま行くから、うちの洗濯物だけ入れておいて!!」
「分かりました~!!」
「あ!!!!例の男がどんな奴か見ておくの忘れた!!!!
まあ、いいや、サッカー部の奴から聞いておく!!!」
「佐藤!!!走るなって!!!」
「大丈夫です!!
俺誰にもぶつからないし!!!」
「そういう問題じゃ・・・・って、やっぱりはえぇなぁ~、陸部に欲しかった。」
陸上部の顧問の先生のその言葉には小さく笑った後、手の中の鍵をまた見下ろす。
そこには、中学の時に佐藤先輩の引退試合前に渡した、私が作った下手くそな”必勝"のお守りがついた鍵があった。
「こんなに下手くそでボロボロなやつ、恥ずかしいよ・・・。」
今でもこのお守りを他の人に自慢している佐藤先輩の姿を思い出し、本気で恥ずかしいと思ったら・・・
「兄妹っていうか、今の会話って普通にカレカノだよね?」
佐藤先輩が来たことを教えてくれた女の子がすぐ近くに立ったままだったらしく、驚いた顔をしながら私にそう言ってきた。
それには首を横に振った。
「全然カレカノなんかじゃないよ。」
”佐藤先輩が彼女と話してる時の顔って全然楽しそうじゃないから、全然彼氏と彼女じゃないよ。"
"私と話してる時は花音ちゃんと話してる時みたいにめっちゃ楽しそうに笑ってる。”
心の中だけでそう続けた。
楓やクラスの他の女の子達と机をつけてお弁当を食べていたら、「晶!」と女の子から私の名前を呼ばれた。
教室の扉の所にいる、1年の時も同じクラスだったその子の方を見ると、その子の隣にはバスケの格好のままの佐藤先輩がいた。
「久しぶりにお兄ちゃ・・・・ぁ、佐藤先輩が来たよ!」
私が怪我をしてからは教室までは1度も来なくなっていた佐藤先輩が、久しぶりに此処まで来たらしい。
「すみません・・・っ、私、晶の本当のお兄さんなのかと思ってて!!
名字も同じだし顔も結構似てるし、男バスとか女バスの子達も”晶のお兄ちゃん"って言ってて・・・!!」
「全然大丈夫だよ、晶の本物のお兄ちゃんだと自分でも思ってるし。
2年でも晶と同じクラスなんだね、晶と仲良くしてあげてね。」
「はぁい・・・っ。」
作ったニコッという顔で笑う佐藤先輩の顔を見上げている女の子の目が完全にハートになっているのを見て苦笑いをし、佐藤先輩の前まで辿り着いた。
「どうしたんですか?」
「今日さ、一緒に帰れなくなって、ごめんね。」
「なんだ、ビックリしました。
メッセージでそう送ってくれるだけで大丈夫でしたよ?」
「一緒に帰る約束してたし、晶が寂しがるかなって。」
「家にも来られなくなったんですか?」
「それは絶対に行くよ!!!」
「あ、そうなんですか?」
佐藤先輩が何を言いたいのか分からずに首を傾げると、佐藤先輩は少し不貞腐れながら口を開いた。
「今日は部活もないし学校で全然会えないじゃん。
昼練にも晶は来なくなっちゃったし、マジで全然会えないじゃん。
俺が寂しいから教室まで来たの!」
「あ、そうなんですかっ?」
思わず笑ってしまった私に佐藤先輩はムキになった顔になる。
「晶もちょっとは寂しがってよ。」
「えぇ・・・、あ、でも、私が膝を怪我しちゃった時は佐藤先輩が前みたいに話し掛けてくれなくなって、バスケが出来ない私のことを嫌いになったのかなって結構寂しかったです。」
「そんなはずないじゃん・・・、俺が晶のことを嫌いになるとか絶対ナイじゃん・・・。
むしろ、晶の怪我は俺のせいだと晶から思われてるんじゃないかと思って、すげー怯えてたよ・・・。」
「それこそ絶対ナイじゃないですか。」
「そう・・・?本物に?
俺のこと、嫌いになってない?」
「なってないですよ。」
「よかった・・・っっ!!!
晶に嫌われたかもと思うと死ぬほど怖かったんだよ!!!」
佐藤先輩がそう言い終わったタイミングで昼休みが終わるチャイムが鳴った。
「ヒマリから放課後に話したいことがあるって言われてさ!!
多分別れ話だと思うから速攻で晶の家に行くから!!
あ、晶のお母さんに”今日はハンバーグと生姜焼きが良いです"って連絡してあるから夜ご飯ハンバーグと生姜焼きだから!!」
「やったぁ、その組み合わせは佐藤先輩がいる時しか出してくれないからめっちゃ嬉しい~!!!」
”食べ切れない"という理由でその組み合わせは佐藤先輩がいる時しか食べられない。
久しぶりにハンバーグと生姜焼きが一緒に食べられる夜ご飯にめちゃくちゃテンションが上がった。
私が佐藤先輩に片手を出したタイミングで佐藤先輩も同じ動きをし、2人で久しぶりにハイタッチをする。
「こら・・・!佐藤、走るな!!」
「すみませんっ、5時間目は体育で!!
体育着に着替えておくの忘れた!!!
あ・・・・・・!!!!」
ロンTにバスパン、バッシュ姿で廊下を走り出していた佐藤先輩がキュッと止まり、私に振り返る。
そして片手で何かを投げてきた。
凄いスピードで、直線で私の所へと飛んできた小さな”何か"を、私も片手で普通にキャッチした。
私の手の中に届いた”何か"を確認すると、私の手の中には佐藤先輩の家の鍵があった。
「母ちゃんに洗濯物入れておけって言われててさ!!
家に行かないで晶の家にそのまま行くから、うちの洗濯物だけ入れておいて!!」
「分かりました~!!」
「あ!!!!例の男がどんな奴か見ておくの忘れた!!!!
まあ、いいや、サッカー部の奴から聞いておく!!!」
「佐藤!!!走るなって!!!」
「大丈夫です!!
俺誰にもぶつからないし!!!」
「そういう問題じゃ・・・・って、やっぱりはえぇなぁ~、陸部に欲しかった。」
陸上部の顧問の先生のその言葉には小さく笑った後、手の中の鍵をまた見下ろす。
そこには、中学の時に佐藤先輩の引退試合前に渡した、私が作った下手くそな”必勝"のお守りがついた鍵があった。
「こんなに下手くそでボロボロなやつ、恥ずかしいよ・・・。」
今でもこのお守りを他の人に自慢している佐藤先輩の姿を思い出し、本気で恥ずかしいと思ったら・・・
「兄妹っていうか、今の会話って普通にカレカノだよね?」
佐藤先輩が来たことを教えてくれた女の子がすぐ近くに立ったままだったらしく、驚いた顔をしながら私にそう言ってきた。
それには首を横に振った。
「全然カレカノなんかじゃないよ。」
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