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夕食後
「晶のお母さんが作ってくれるハンバーグと生姜焼きはマジで美味しいよね~。
俺の引退試合の日に初めて2つを一緒に作ってくれて、”俺、3年間頑張ったな~"と思ったし、”明日からの高校での練習参加、そこに晶はいないけど頑張ろう!"とも思えてた気持ちを思い出したよ。
あと、それまでは周りが言うほど”晶のお兄ちゃん!"って思えてなかったけど、”晶のお兄ちゃんとしてももっと頑張ろう!"と初めて強く思った時のことも思い出した。」
2階にある私の部屋、3人掛けの座椅子に座っている佐藤先輩の少し隣で、”やっぱり、あの時からだったんだ"と心の中で答え合わせが出来てしまい、少しだけ下を向いた。
”お母さんが余計なことを言っちゃったな"
という気持ちがどうしても芽生えてしまう。
でも、私のことを未熟児として産んでしまい、更に私に一人っ子で寂しい思いをさせているのは自分のせいだとも思い、私に”ごめんね"とよく言ってたお母さん。
だから、中学の部活を引退した佐藤先輩にあの言葉を伝えたお母さんの気持ちも分かる。
佐藤先輩と私は凄く凄く仲が良かったし、周りの子達が”佐藤兄妹"と呼んでいることもお母さんだって知っていたから。
それに・・・
お母さんが余計なことを言っていなかったとしても、佐藤先輩は私のことを女子として好きになることはなかった。
佐藤先輩は普通に何人も彼女がいたし、お母さんからあの話をされる前から、佐藤先輩は私のことを妹的な存在として接しているだけだった。
でも、それが当時は”嬉しい"と思っていた。
佐藤先輩の彼女よりも私は佐藤先輩の特別な存在なのだと喜んだ気持ちにもなってしまっていた。
中学時代だけではない、ついこの前まで私はそう思ってしまっていた。
佐藤先輩のことは佐藤先輩の彼女よりも私が1番知っていると思っていた。
男バスのマネージャーとして佐藤先輩から選んで貰えたことにより、それが死んでしまいたくなるほどの勘違いだったとやっと分かった。
私は知らない・・・。
”家族"以外の佐藤先輩の姿を全然知らない・・・。
"エッチしたいな”と言えばエッチをしてくれる佐藤先輩のことなんて、私は少しも知らない・・・。
「晶。」
苦しくて苦しくて、泣きそうになっている私の名前を佐藤先輩が呼ぶ。
佐藤先輩は私の名前を1度だって間違えたことはないのに、それが今はこんなにも"悲しい”と思ってしまう。
そんな私に、佐藤先輩が言う。
「何度も話したことがあるけど、俺ってこの顔とこの身体には昔からめちゃくちゃコンプレックスがあってさ。」
「はい・・・。」
突然そんな話をまた始め、それも真面目な声で始まり、それには涙は引っ込み自然と姿勢を正す。
「だからさ、女子から"好き”とか"付き合いたい”とか言って貰えると本当に嬉しくて。」
「はい。」
「あと俺、晶と仲良くなってからは"こんな妹が欲しかったな”と思ったし、その数日後には"妹もそうだけど、こんな娘が欲しい!!”にまでなったくらい、晶みたいな子どもが欲しいとも思ってて。
だから俺、結婚願望は強めで。」
「はい。」
「だからさ、告白してくれた女子で良い子そうなら付き合ってきてたじゃん?」
「はい。」
「でも色んな女子と付き合っては思うんだよ。
"彼女とよりも晶と話したい”って。」
「はい・・・。」
「"彼女にじゃなくて晶と会いたい”って。」
「はい・・・。」
「"彼女よりも晶のことが好きで、大好きで、マジで本当に愛してる”って。」
「・・・・・・・。」
「俺さ、彼女との時間よりも晶との時間の方が大切だし、彼女よりも晶のことが大切すぎて、愛しすぎてて。」
「・・・・・・・。」
「そんなことを毎回思ってた中で、今回"ヒヨリ”と3ヶ月も付き合いが続いて。」
「あ、すみません、"ヒマリ”です。」
「何が?」
「彼女さんのお名前。」
「え、うん、そうだよ?
今ヒマリの話になってる。」
「あ・・・・はい、どうぞ続けてください。」
「どこまで話したっけ?」
「"ヒヨリ”と3ヶ月付き合いが続いてって。」
「ああ、そう、"ヒヨリ”と3ヶ月付き合って思ったんだよ。」
また"ヒヨリ”と間違えている佐藤先輩の顔が凄く凄く真剣な顔で私のことを見詰めている。
それには、ドキドキとして。
さっきから、凄く凄くドキドキとして。
お母さんの前では"妹”と言っていた私のことを、こんなにも深く愛してくれていると言ってくれて・・・。
年頃の佐藤先輩が、私の前ではそう言ってくれていて・・・。
「俺、"ヒヨリ”が産んだ子どもより晶が産んだ子どもの方が絶対に"可愛い”って、"愛してる”って、"大切だ”って、"俺の命とか余裕で懸けられる”って、そう思った。」
そこまで話が進んだことには驚き固まっていると、佐藤先輩が続けた。
「"ヒヨリ”が産んだ俺とソックリな見た目の晶みたいな娘より、晶が産んだ子なら、例え気に食わない男との子どもで、そいつに似た生意気な男の子だったとしても・・・。
俺は、”ヒヨリ”との娘の"パパ”よりも、晶の息子の"竜也おじちゃん”の方が幸せだと思えると思う。」
そう、続けてきた。
「晶のお母さんが作ってくれるハンバーグと生姜焼きはマジで美味しいよね~。
俺の引退試合の日に初めて2つを一緒に作ってくれて、”俺、3年間頑張ったな~"と思ったし、”明日からの高校での練習参加、そこに晶はいないけど頑張ろう!"とも思えてた気持ちを思い出したよ。
あと、それまでは周りが言うほど”晶のお兄ちゃん!"って思えてなかったけど、”晶のお兄ちゃんとしてももっと頑張ろう!"と初めて強く思った時のことも思い出した。」
2階にある私の部屋、3人掛けの座椅子に座っている佐藤先輩の少し隣で、”やっぱり、あの時からだったんだ"と心の中で答え合わせが出来てしまい、少しだけ下を向いた。
”お母さんが余計なことを言っちゃったな"
という気持ちがどうしても芽生えてしまう。
でも、私のことを未熟児として産んでしまい、更に私に一人っ子で寂しい思いをさせているのは自分のせいだとも思い、私に”ごめんね"とよく言ってたお母さん。
だから、中学の部活を引退した佐藤先輩にあの言葉を伝えたお母さんの気持ちも分かる。
佐藤先輩と私は凄く凄く仲が良かったし、周りの子達が”佐藤兄妹"と呼んでいることもお母さんだって知っていたから。
それに・・・
お母さんが余計なことを言っていなかったとしても、佐藤先輩は私のことを女子として好きになることはなかった。
佐藤先輩は普通に何人も彼女がいたし、お母さんからあの話をされる前から、佐藤先輩は私のことを妹的な存在として接しているだけだった。
でも、それが当時は”嬉しい"と思っていた。
佐藤先輩の彼女よりも私は佐藤先輩の特別な存在なのだと喜んだ気持ちにもなってしまっていた。
中学時代だけではない、ついこの前まで私はそう思ってしまっていた。
佐藤先輩のことは佐藤先輩の彼女よりも私が1番知っていると思っていた。
男バスのマネージャーとして佐藤先輩から選んで貰えたことにより、それが死んでしまいたくなるほどの勘違いだったとやっと分かった。
私は知らない・・・。
”家族"以外の佐藤先輩の姿を全然知らない・・・。
"エッチしたいな”と言えばエッチをしてくれる佐藤先輩のことなんて、私は少しも知らない・・・。
「晶。」
苦しくて苦しくて、泣きそうになっている私の名前を佐藤先輩が呼ぶ。
佐藤先輩は私の名前を1度だって間違えたことはないのに、それが今はこんなにも"悲しい”と思ってしまう。
そんな私に、佐藤先輩が言う。
「何度も話したことがあるけど、俺ってこの顔とこの身体には昔からめちゃくちゃコンプレックスがあってさ。」
「はい・・・。」
突然そんな話をまた始め、それも真面目な声で始まり、それには涙は引っ込み自然と姿勢を正す。
「だからさ、女子から"好き”とか"付き合いたい”とか言って貰えると本当に嬉しくて。」
「はい。」
「あと俺、晶と仲良くなってからは"こんな妹が欲しかったな”と思ったし、その数日後には"妹もそうだけど、こんな娘が欲しい!!”にまでなったくらい、晶みたいな子どもが欲しいとも思ってて。
だから俺、結婚願望は強めで。」
「はい。」
「だからさ、告白してくれた女子で良い子そうなら付き合ってきてたじゃん?」
「はい。」
「でも色んな女子と付き合っては思うんだよ。
"彼女とよりも晶と話したい”って。」
「はい・・・。」
「"彼女にじゃなくて晶と会いたい”って。」
「はい・・・。」
「"彼女よりも晶のことが好きで、大好きで、マジで本当に愛してる”って。」
「・・・・・・・。」
「俺さ、彼女との時間よりも晶との時間の方が大切だし、彼女よりも晶のことが大切すぎて、愛しすぎてて。」
「・・・・・・・。」
「そんなことを毎回思ってた中で、今回"ヒヨリ”と3ヶ月も付き合いが続いて。」
「あ、すみません、"ヒマリ”です。」
「何が?」
「彼女さんのお名前。」
「え、うん、そうだよ?
今ヒマリの話になってる。」
「あ・・・・はい、どうぞ続けてください。」
「どこまで話したっけ?」
「"ヒヨリ”と3ヶ月付き合いが続いてって。」
「ああ、そう、"ヒヨリ”と3ヶ月付き合って思ったんだよ。」
また"ヒヨリ”と間違えている佐藤先輩の顔が凄く凄く真剣な顔で私のことを見詰めている。
それには、ドキドキとして。
さっきから、凄く凄くドキドキとして。
お母さんの前では"妹”と言っていた私のことを、こんなにも深く愛してくれていると言ってくれて・・・。
年頃の佐藤先輩が、私の前ではそう言ってくれていて・・・。
「俺、"ヒヨリ”が産んだ子どもより晶が産んだ子どもの方が絶対に"可愛い”って、"愛してる”って、"大切だ”って、"俺の命とか余裕で懸けられる”って、そう思った。」
そこまで話が進んだことには驚き固まっていると、佐藤先輩が続けた。
「"ヒヨリ”が産んだ俺とソックリな見た目の晶みたいな娘より、晶が産んだ子なら、例え気に食わない男との子どもで、そいつに似た生意気な男の子だったとしても・・・。
俺は、”ヒヨリ”との娘の"パパ”よりも、晶の息子の"竜也おじちゃん”の方が幸せだと思えると思う。」
そう、続けてきた。
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