63 / 102
5
5-1
しおりを挟む
日曜日
相手学校の体育館
プレー中の声やベンチの応援の声、顧問やコーチの指示など、練習試合にしては大きな声がこの空間に響いている。
それもそのはずで。
うちの男バスが、”忍び"”忍者"”陰"のプレーをしていないから。
いや、佐藤先輩だけはしているけれど・・・
「取ってやれ・・・・っっ!!」
佐藤先輩が”忍び"のパスをした瞬間、土屋先生がそう叫び・・・
「取れただろ・・・・っっっ!!!」
パスミスをした佐藤先輩ではなく、そのパスを取ることが出来なかった男子にそう言った。
それにはキャプテンが手を叩く。
「ドンマイドンマイっ!!
よく追えてた!!!惜しかった!!!」
キャプテンがそう言うとベンチの部員達も声を上げ、コートの中のメンバーはパスが取れなかった男子の背中を叩いていた。
今日はよく声が出ている。
金曜日も土曜日もまた”忍びの里"に戻っていたけれど、佐藤先輩の絶不調によりまた普通に良い感じのチームになっていて、これはこれで良いと思う。
「佐藤先輩のフォローもその後の攻撃も良い感じ・・・。
勝ててるし・・・。」
土屋先生の隣でスコアシートをつけながら呟き、「ドンマイ」「ドンマイ」とコートの中で言われまくっている佐藤先輩にまた視線を戻した。
みんなここぞとばかりに「ドンマイ」と言っていて、その顔はめ~~っちゃニヤニヤしている。
それには思わず吹き出しそうになった時、コートの向こう側にある体育館の扉がソ~と開いた。
「あ。」
土屋先生が声を上げたと同時にすぐに立ち上がり、ベンチの1番向こう側の部員の方を見た。
そしたら、その部員が扉の方を確認してサッと立ち上がる。
「悪いな!!」
土屋先生が部員に謝ると、体育館の扉からソ~と入ってきた可愛い女の人が「大丈夫だよ!立って見てるよ!」と両手を振っていて、それには土屋先生ではなくデレッデレの顔をした男子達が「どうぞどうぞどうぞ!!!!」とパイプ椅子をタオルで拭きながら言っていた。
女の人がパイプ椅子に座ったのを確認した土屋先生がまた私の隣の椅子に戻ってきたので、スコアシートとコートの中を確認していきながら言う。
「最近は奥さんだけなんですか?」
「うん、子どもも大きくなったからな。
上の女の子は1人でミニバスに行ってるし、下の男の子ばおばあちゃんの家でゲーム三昧。」
「女の子の方がバスケをやってるんですか。」
「うん、嫁さんの方に似たのか運動神経が壊滅的なのに楽しそうにやってるよ。
こんな機会はもうないだろうから佐藤にも娘見せたかった、めちゃくちゃ可愛い顔してるんだよ。」
「佐藤先輩からは土屋先生の方に似てて綺麗な顔だったって聞きましたよ?」
「そうか?嫁さんにも似てると思うけど・・・。」
「文化祭の時にチラッとしか見たことがなかったけど、奥さんほんっっっとに可愛いですね。
土屋先生ファンの女子達が負けをすんなり認めてました。」
「うん、俺の嫁さんマジで可愛くて。」
「高校生の頃から可愛かったでしょうね~。
あれは手ぇ出しちゃいますよね~。」
「・・・・・だから、教師と生徒として出会う前に、俺の友達の妹として先に出会ってたんだって。
あいつがランドセル背負ってた時から出会ってたんだよ。」
「それはそれでなんか・・・・・え。」
「俺はロリコンじゃねーよ!」
土屋先生が必死な顔で否定をしていて、それには思わず笑ってしまった。
笑った私の顔を見て、土屋先生が優しい顔で笑った。
「うちの男バスの奴らが色々言ってるとは思うけど、お前も結構可愛い顔してるからな?自信持てよ!」
「励ましてくれてありがとうございます。」
「こんなに男がいるのに兄貴だけしか”可愛い可愛い"してくれないとか励ますだろ。
あ、竜也、俺の嫁さんのこと何か言ってるだろ。
あいつ俺の娘なんてチラッと見るだけで、嫁さんの方にはニコニコした顔でいつも優しくしやがってくるんだよ。」
「う~ん・・・、娘さんの話しの方が多いですね。
”パパパパ言ってて可愛かった"とか、"土屋先生の後ろを一生懸命走ってた"とか、”休憩の時にたまに土屋先生からドリブルを教えて貰って嬉しそうな顔をしてた"とか。
奥さんのことは特に何も聞いたことなかったです。」
「はあ!?何だあいつ、ムカついてきた!!
交代!!!」
土屋先生が急に立ち上がり、”交代"と言った後にベンチの方を見て1人の男子の名前を呼んだ。
佐藤先輩と同じガードのポジション、私が話してからはよく練習後にも残っていた中の1人の男子。
その男子が緊張した顔でこっちに歩いてきたので、私は言った。
「頑張れ!!!」
男子は頷いた後、何でか少しだけ照れたような顔をしていた。
「おっ、何だ!ハイハイハイ、そ~いうやつ!!
へぇぇぇぇ~。」
土屋先生が意地悪な顔をした後にその男子の背中をバンッと叩いた。
「行って来い!!
竜也の代わりじゃなくて2年の元気なプレーをしてこいよ!!」
「はい!!!」
元気な返事をしたその男子と交代で、険しい顔をした佐藤先輩がベンチに戻ってきた。
「おい、そっち詰めて。竜也!!こっち座れ!!」
絶不調だった佐藤先輩を怒った口調で自分の隣に座らせた土屋先生が、険しい顔をしながらドリンクを飲んでいる佐藤先輩に言った。
そして・・・
「どうだ、彼女と別れた気分は!!!」
大きく笑いながら、さっきまでのプレーとは何も関係のないことを言い出した。
相手学校の体育館
プレー中の声やベンチの応援の声、顧問やコーチの指示など、練習試合にしては大きな声がこの空間に響いている。
それもそのはずで。
うちの男バスが、”忍び"”忍者"”陰"のプレーをしていないから。
いや、佐藤先輩だけはしているけれど・・・
「取ってやれ・・・・っっ!!」
佐藤先輩が”忍び"のパスをした瞬間、土屋先生がそう叫び・・・
「取れただろ・・・・っっっ!!!」
パスミスをした佐藤先輩ではなく、そのパスを取ることが出来なかった男子にそう言った。
それにはキャプテンが手を叩く。
「ドンマイドンマイっ!!
よく追えてた!!!惜しかった!!!」
キャプテンがそう言うとベンチの部員達も声を上げ、コートの中のメンバーはパスが取れなかった男子の背中を叩いていた。
今日はよく声が出ている。
金曜日も土曜日もまた”忍びの里"に戻っていたけれど、佐藤先輩の絶不調によりまた普通に良い感じのチームになっていて、これはこれで良いと思う。
「佐藤先輩のフォローもその後の攻撃も良い感じ・・・。
勝ててるし・・・。」
土屋先生の隣でスコアシートをつけながら呟き、「ドンマイ」「ドンマイ」とコートの中で言われまくっている佐藤先輩にまた視線を戻した。
みんなここぞとばかりに「ドンマイ」と言っていて、その顔はめ~~っちゃニヤニヤしている。
それには思わず吹き出しそうになった時、コートの向こう側にある体育館の扉がソ~と開いた。
「あ。」
土屋先生が声を上げたと同時にすぐに立ち上がり、ベンチの1番向こう側の部員の方を見た。
そしたら、その部員が扉の方を確認してサッと立ち上がる。
「悪いな!!」
土屋先生が部員に謝ると、体育館の扉からソ~と入ってきた可愛い女の人が「大丈夫だよ!立って見てるよ!」と両手を振っていて、それには土屋先生ではなくデレッデレの顔をした男子達が「どうぞどうぞどうぞ!!!!」とパイプ椅子をタオルで拭きながら言っていた。
女の人がパイプ椅子に座ったのを確認した土屋先生がまた私の隣の椅子に戻ってきたので、スコアシートとコートの中を確認していきながら言う。
「最近は奥さんだけなんですか?」
「うん、子どもも大きくなったからな。
上の女の子は1人でミニバスに行ってるし、下の男の子ばおばあちゃんの家でゲーム三昧。」
「女の子の方がバスケをやってるんですか。」
「うん、嫁さんの方に似たのか運動神経が壊滅的なのに楽しそうにやってるよ。
こんな機会はもうないだろうから佐藤にも娘見せたかった、めちゃくちゃ可愛い顔してるんだよ。」
「佐藤先輩からは土屋先生の方に似てて綺麗な顔だったって聞きましたよ?」
「そうか?嫁さんにも似てると思うけど・・・。」
「文化祭の時にチラッとしか見たことがなかったけど、奥さんほんっっっとに可愛いですね。
土屋先生ファンの女子達が負けをすんなり認めてました。」
「うん、俺の嫁さんマジで可愛くて。」
「高校生の頃から可愛かったでしょうね~。
あれは手ぇ出しちゃいますよね~。」
「・・・・・だから、教師と生徒として出会う前に、俺の友達の妹として先に出会ってたんだって。
あいつがランドセル背負ってた時から出会ってたんだよ。」
「それはそれでなんか・・・・・え。」
「俺はロリコンじゃねーよ!」
土屋先生が必死な顔で否定をしていて、それには思わず笑ってしまった。
笑った私の顔を見て、土屋先生が優しい顔で笑った。
「うちの男バスの奴らが色々言ってるとは思うけど、お前も結構可愛い顔してるからな?自信持てよ!」
「励ましてくれてありがとうございます。」
「こんなに男がいるのに兄貴だけしか”可愛い可愛い"してくれないとか励ますだろ。
あ、竜也、俺の嫁さんのこと何か言ってるだろ。
あいつ俺の娘なんてチラッと見るだけで、嫁さんの方にはニコニコした顔でいつも優しくしやがってくるんだよ。」
「う~ん・・・、娘さんの話しの方が多いですね。
”パパパパ言ってて可愛かった"とか、"土屋先生の後ろを一生懸命走ってた"とか、”休憩の時にたまに土屋先生からドリブルを教えて貰って嬉しそうな顔をしてた"とか。
奥さんのことは特に何も聞いたことなかったです。」
「はあ!?何だあいつ、ムカついてきた!!
交代!!!」
土屋先生が急に立ち上がり、”交代"と言った後にベンチの方を見て1人の男子の名前を呼んだ。
佐藤先輩と同じガードのポジション、私が話してからはよく練習後にも残っていた中の1人の男子。
その男子が緊張した顔でこっちに歩いてきたので、私は言った。
「頑張れ!!!」
男子は頷いた後、何でか少しだけ照れたような顔をしていた。
「おっ、何だ!ハイハイハイ、そ~いうやつ!!
へぇぇぇぇ~。」
土屋先生が意地悪な顔をした後にその男子の背中をバンッと叩いた。
「行って来い!!
竜也の代わりじゃなくて2年の元気なプレーをしてこいよ!!」
「はい!!!」
元気な返事をしたその男子と交代で、険しい顔をした佐藤先輩がベンチに戻ってきた。
「おい、そっち詰めて。竜也!!こっち座れ!!」
絶不調だった佐藤先輩を怒った口調で自分の隣に座らせた土屋先生が、険しい顔をしながらドリンクを飲んでいる佐藤先輩に言った。
そして・・・
「どうだ、彼女と別れた気分は!!!」
大きく笑いながら、さっきまでのプレーとは何も関係のないことを言い出した。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる