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号泣しながらお願いをした。
佐藤先輩のことをギュッとしながら"離して”と、そんな矛盾しているようなお願いをした。
そんな面倒でしかないお願いをした。
そんな私の身体を佐藤先輩は強く強く抱き締め返してくる。
さっきよりも強く、抱き締め返してきて・・・。
「俺から離すことなんて絶対にしない、絶対に出来ない、絶対に有り得ない・・・。
でも、晶が俺と兄妹に戻れないなら、聞いて欲しい話がある。」
佐藤先輩が震える声で、なのに不思議としっかりした声でそう言った。
それを聞き、私はまた大きく泣く。
「何の話か分かってます・・・っっ!!
それは嫌・・・・っ、それは聞きたくない・・・っっ!!
最後にそれを佐藤先輩の口から聞いてバイバイするのは、絶対に嫌です・・・っっ!!!」
佐藤先輩の噂話を思い浮かべながら必死に佐藤先輩の胸を押す。
自分からは離れられないと言ったばかりなのに、私から必死に佐藤先輩から離れようとする。
なのに、佐藤先輩は何も離してくれなくて。
全然、離そうとしてくれなくて・・・。
「晶が聞くのが嫌なのは分かってる。
でも、聞いて欲しい。
晶の心に入ることはないけど、もしかしたら届くかもしれないから・・・もしかしたら、動いてくれるかもしれないから・・・。
聞いて欲しい・・・俺、晶に聞いて欲しい話がある。」
「嫌・・・・っ、嫌です・・・・・。
も・・・大丈夫です、届いてます・・・。
もう、動ける・・・私、もう動けて・・・佐藤先輩から、私から離れられるから・・・言わないでください・・・っっ。」
佐藤先輩の胸を強く強く押す私に、佐藤先輩はしっかりとした声を出した。
「じゃあ、入れる。」
「え・・・・・?」
「此処からゴールに向かってロングシュートを入れる。」
「此処から・・・?」
佐藤先輩の腕の中でたった1つしかないバスケットゴールを見ると、此処からゴールまでは凄く遠い。
スリーポイントラインよりももっと遠くて・・・
スリーポイントラインどころか、センターラインよりも遠い・・・。
それに・・・
「此処から入れるには、高さが・・・」
高速道路が空を隠しているこの場所では、此処からゴールを決める綺麗な軌道は私には1つしか見えない。
私の目にはその軌道しか見えないから、佐藤先輩の目にもそれしか見えていないはずで。
「凄く・・・難しいと思います・・・。」
「うん、でも入れる。」
「このくらいの距離からロングシュートを打ったことがありますか?」
「練習でも試合でも打ったことはある。
でもこの距離からは1度も入ったことはない。」
「それなら・・・」
「でも、絶対に入れる。
絶対に入れるから、俺の話を俺の口から聞いて。」
佐藤先輩のしっかりとした声を聞き、私が二度と佐藤先輩の所に戻ってこられないようにしてくれるのだと分かる。
それは分かるけれど、佐藤先輩の口からはその話は聞きたくない。
どうしても、聞きたくない・・・。
でも、それ以上に・・・
それ以上に、私・・・。
佐藤先輩の背中から両手をソッと話し、佐藤先輩のことを見上げた。
「佐藤先輩が此処からゴールを決める所を見たいです・・・。
佐藤先輩の格好良い姿を、見たい・・・。」
そしたら、あんな噂話にもきっと深くは傷付かない。
きっと、治らない怪我にはならない。
ちゃんとまた走れる・・・。
ゆっくりかもしれないけど、全然速くはないと思うけど、私はちゃんとゆっくり、大人になっていけると思う。
佐藤先輩がいない未来に、進んでいけるのだと思う。
佐藤先輩のことをギュッとしながら"離して”と、そんな矛盾しているようなお願いをした。
そんな面倒でしかないお願いをした。
そんな私の身体を佐藤先輩は強く強く抱き締め返してくる。
さっきよりも強く、抱き締め返してきて・・・。
「俺から離すことなんて絶対にしない、絶対に出来ない、絶対に有り得ない・・・。
でも、晶が俺と兄妹に戻れないなら、聞いて欲しい話がある。」
佐藤先輩が震える声で、なのに不思議としっかりした声でそう言った。
それを聞き、私はまた大きく泣く。
「何の話か分かってます・・・っっ!!
それは嫌・・・・っ、それは聞きたくない・・・っっ!!
最後にそれを佐藤先輩の口から聞いてバイバイするのは、絶対に嫌です・・・っっ!!!」
佐藤先輩の噂話を思い浮かべながら必死に佐藤先輩の胸を押す。
自分からは離れられないと言ったばかりなのに、私から必死に佐藤先輩から離れようとする。
なのに、佐藤先輩は何も離してくれなくて。
全然、離そうとしてくれなくて・・・。
「晶が聞くのが嫌なのは分かってる。
でも、聞いて欲しい。
晶の心に入ることはないけど、もしかしたら届くかもしれないから・・・もしかしたら、動いてくれるかもしれないから・・・。
聞いて欲しい・・・俺、晶に聞いて欲しい話がある。」
「嫌・・・・っ、嫌です・・・・・。
も・・・大丈夫です、届いてます・・・。
もう、動ける・・・私、もう動けて・・・佐藤先輩から、私から離れられるから・・・言わないでください・・・っっ。」
佐藤先輩の胸を強く強く押す私に、佐藤先輩はしっかりとした声を出した。
「じゃあ、入れる。」
「え・・・・・?」
「此処からゴールに向かってロングシュートを入れる。」
「此処から・・・?」
佐藤先輩の腕の中でたった1つしかないバスケットゴールを見ると、此処からゴールまでは凄く遠い。
スリーポイントラインよりももっと遠くて・・・
スリーポイントラインどころか、センターラインよりも遠い・・・。
それに・・・
「此処から入れるには、高さが・・・」
高速道路が空を隠しているこの場所では、此処からゴールを決める綺麗な軌道は私には1つしか見えない。
私の目にはその軌道しか見えないから、佐藤先輩の目にもそれしか見えていないはずで。
「凄く・・・難しいと思います・・・。」
「うん、でも入れる。」
「このくらいの距離からロングシュートを打ったことがありますか?」
「練習でも試合でも打ったことはある。
でもこの距離からは1度も入ったことはない。」
「それなら・・・」
「でも、絶対に入れる。
絶対に入れるから、俺の話を俺の口から聞いて。」
佐藤先輩のしっかりとした声を聞き、私が二度と佐藤先輩の所に戻ってこられないようにしてくれるのだと分かる。
それは分かるけれど、佐藤先輩の口からはその話は聞きたくない。
どうしても、聞きたくない・・・。
でも、それ以上に・・・
それ以上に、私・・・。
佐藤先輩の背中から両手をソッと話し、佐藤先輩のことを見上げた。
「佐藤先輩が此処からゴールを決める所を見たいです・・・。
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そしたら、あんな噂話にもきっと深くは傷付かない。
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