【R18版】佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら【他サイトでのカットページ連載中】

Bu-cha

文字の大きさ
79 / 102
6

6-1

しおりを挟む
号泣しながらお願いをした。



佐藤先輩のことをギュッとしながら"離して”と、そんな矛盾しているようなお願いをした。



そんな面倒でしかないお願いをした。



そんな私の身体を佐藤先輩は強く強く抱き締め返してくる。



さっきよりも強く、抱き締め返してきて・・・。



「俺から離すことなんて絶対にしない、絶対に出来ない、絶対に有り得ない・・・。
でも、晶が俺と兄妹に戻れないなら、聞いて欲しい話がある。」



佐藤先輩が震える声で、なのに不思議としっかりした声でそう言った。



それを聞き、私はまた大きく泣く。



「何の話か分かってます・・・っっ!!
それは嫌・・・・っ、それは聞きたくない・・・っっ!!
最後にそれを佐藤先輩の口から聞いてバイバイするのは、絶対に嫌です・・・っっ!!!」



佐藤先輩の噂話を思い浮かべながら必死に佐藤先輩の胸を押す。



自分からは離れられないと言ったばかりなのに、私から必死に佐藤先輩から離れようとする。



なのに、佐藤先輩は何も離してくれなくて。



全然、離そうとしてくれなくて・・・。



「晶が聞くのが嫌なのは分かってる。
でも、聞いて欲しい。
晶の心に入ることはないけど、もしかしたら届くかもしれないから・・・もしかしたら、動いてくれるかもしれないから・・・。
聞いて欲しい・・・俺、晶に聞いて欲しい話がある。」



「嫌・・・・っ、嫌です・・・・・。
も・・・大丈夫です、届いてます・・・。
もう、動ける・・・私、もう動けて・・・佐藤先輩から、私から離れられるから・・・言わないでください・・・っっ。」



佐藤先輩の胸を強く強く押す私に、佐藤先輩はしっかりとした声を出した。



「じゃあ、入れる。」



「え・・・・・?」



「此処からゴールに向かってロングシュートを入れる。」



「此処から・・・?」



佐藤先輩の腕の中でたった1つしかないバスケットゴールを見ると、此処からゴールまでは凄く遠い。



スリーポイントラインよりももっと遠くて・・・



スリーポイントラインどころか、センターラインよりも遠い・・・。



それに・・・



「此処から入れるには、高さが・・・」



高速道路が空を隠しているこの場所では、此処からゴールを決める綺麗な軌道は私には1つしか見えない。



私の目にはその軌道しか見えないから、佐藤先輩の目にもそれしか見えていないはずで。



「凄く・・・難しいと思います・・・。」



「うん、でも入れる。」



「このくらいの距離からロングシュートを打ったことがありますか?」



「練習でも試合でも打ったことはある。
でもこの距離からは1度も入ったことはない。」



「それなら・・・」



「でも、絶対に入れる。
絶対に入れるから、俺の話を俺の口から聞いて。」



佐藤先輩のしっかりとした声を聞き、私が二度と佐藤先輩の所に戻ってこられないようにしてくれるのだと分かる。



それは分かるけれど、佐藤先輩の口からはその話は聞きたくない。



どうしても、聞きたくない・・・。



でも、それ以上に・・・



それ以上に、私・・・。



佐藤先輩の背中から両手をソッと話し、佐藤先輩のことを見上げた。



「佐藤先輩が此処からゴールを決める所を見たいです・・・。
佐藤先輩の格好良い姿を、見たい・・・。」



そしたら、あんな噂話にもきっと深くは傷付かない。



きっと、治らない怪我にはならない。



ちゃんとまた走れる・・・。



ゆっくりかもしれないけど、全然速くはないと思うけど、私はちゃんとゆっくり、大人になっていけると思う。



佐藤先輩がいない未来に、進んでいけるのだと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...