132 / 241
8
8-23
しおりを挟む
理子がそう言うと、お兄ちゃんは凄く驚いた顔をしていた。
「それ・・・でも、“お母さん”の特別な、呼び方・・・。」
「そうだよ?
理子のことを1番可愛いと思ってる時に呼んでくれてた呼び方。」
「それを・・・僕が・・・?」
お兄ちゃんが驚きながらそう言ってきて、理子は大きく頷く。
「だって理子、お兄ちゃんのことが1番大好きになったから。」
「・・・ぇ・・・」
お兄ちゃんの口から小さな声が漏れ、理子はニヤニヤしてしまった。
「だって、ピンク色の鮫を見付けてくれたのはお兄ちゃんだもん!!
この広い現実の世界で、お兄ちゃんが理子を見付けてくれたの!!」
そう言ってから、理子はカメラを下に下ろした。
そして・・・
「・・・ゎっ」
お兄ちゃんに、抱き付いた・・・。
「理子のことを見付けてくれてありがとう!!
理子、お兄ちゃんのことが大好き!!
1番大好き!!!大大大好き!!!」
大好きや大大好きは、家族といる時によく感じる。
でも、お兄ちゃんのことはそれ以上で・・・
大大大好きだと、思った・・・。
お父さんは理子が産まれる前に死んじゃった。
お母さんは理子が3歳の時に死んじゃった。
お父さんの記憶はないし、お母さんのことも何も覚えていない。
とにかく、理子は小さかったから何も覚えてはいなくて。
なんとなく覚えているのは、幼稚園に入ってからだと思う。
理子はいつも何かに怒っていた。
いつも何かにイライラしていた。
いつも何かを不安に思っていた。
いつも何かを怖いと思っていた。
早く死んで、お父さんとお母さんに会いたいとも思っていた。
いつも誰かに怒られているような理子と会って、お父さんとお母さんは喜んでくれるかは分からないけど・・・。
皆から嫌われているような理子を見て、お父さんとお母さんは理子を好きになってくれるかは分からないけど・・・。
でも、理子はお父さんとお母さんに会いたかった・・・。
会って、抱き締めて貰いたかった・・・。
会って、強く強く、抱き締めたかった・・・。
そう望んでいた理子は・・・
今は、“生きていたい”と・・・
“生き延びていたい”と・・・
強く、強く、思っている・・・。
ピンク色の鮫として・・・
生きて、生き延びる・・・。
お母さんが見付けられるように・・・。
天国にいるお母さんが、理子を見てすぐに理子だと分かるように・・・。
だからもう、たまに何かに怒って・・・
たまに何かにイライラして・・・
たまに何かに不安に思って・・・
たまに何かに怖くなるだけ・・・。
「お兄ちゃんが、大大大好き・・・。」
お兄ちゃんを強く抱き締めて甘噛みした理子に、お兄ちゃんも理子のことを少し強く抱き締めてくれた・・・。
「りーちゃん・・・」
“りーちゃん”と小さく呟いたお兄ちゃんの声が、理子の身体に甘く噛み付いた・・・。
甘く、甘く・・・
噛み付いて、この身体から離れなくなった・・・。
「それ・・・でも、“お母さん”の特別な、呼び方・・・。」
「そうだよ?
理子のことを1番可愛いと思ってる時に呼んでくれてた呼び方。」
「それを・・・僕が・・・?」
お兄ちゃんが驚きながらそう言ってきて、理子は大きく頷く。
「だって理子、お兄ちゃんのことが1番大好きになったから。」
「・・・ぇ・・・」
お兄ちゃんの口から小さな声が漏れ、理子はニヤニヤしてしまった。
「だって、ピンク色の鮫を見付けてくれたのはお兄ちゃんだもん!!
この広い現実の世界で、お兄ちゃんが理子を見付けてくれたの!!」
そう言ってから、理子はカメラを下に下ろした。
そして・・・
「・・・ゎっ」
お兄ちゃんに、抱き付いた・・・。
「理子のことを見付けてくれてありがとう!!
理子、お兄ちゃんのことが大好き!!
1番大好き!!!大大大好き!!!」
大好きや大大好きは、家族といる時によく感じる。
でも、お兄ちゃんのことはそれ以上で・・・
大大大好きだと、思った・・・。
お父さんは理子が産まれる前に死んじゃった。
お母さんは理子が3歳の時に死んじゃった。
お父さんの記憶はないし、お母さんのことも何も覚えていない。
とにかく、理子は小さかったから何も覚えてはいなくて。
なんとなく覚えているのは、幼稚園に入ってからだと思う。
理子はいつも何かに怒っていた。
いつも何かにイライラしていた。
いつも何かを不安に思っていた。
いつも何かを怖いと思っていた。
早く死んで、お父さんとお母さんに会いたいとも思っていた。
いつも誰かに怒られているような理子と会って、お父さんとお母さんは喜んでくれるかは分からないけど・・・。
皆から嫌われているような理子を見て、お父さんとお母さんは理子を好きになってくれるかは分からないけど・・・。
でも、理子はお父さんとお母さんに会いたかった・・・。
会って、抱き締めて貰いたかった・・・。
会って、強く強く、抱き締めたかった・・・。
そう望んでいた理子は・・・
今は、“生きていたい”と・・・
“生き延びていたい”と・・・
強く、強く、思っている・・・。
ピンク色の鮫として・・・
生きて、生き延びる・・・。
お母さんが見付けられるように・・・。
天国にいるお母さんが、理子を見てすぐに理子だと分かるように・・・。
だからもう、たまに何かに怒って・・・
たまに何かにイライラして・・・
たまに何かに不安に思って・・・
たまに何かに怖くなるだけ・・・。
「お兄ちゃんが、大大大好き・・・。」
お兄ちゃんを強く抱き締めて甘噛みした理子に、お兄ちゃんも理子のことを少し強く抱き締めてくれた・・・。
「りーちゃん・・・」
“りーちゃん”と小さく呟いたお兄ちゃんの声が、理子の身体に甘く噛み付いた・・・。
甘く、甘く・・・
噛み付いて、この身体から離れなくなった・・・。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる