【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く

Bu-cha

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そう言われ、私はお母さんのことを・・・桃子のことを思い浮かべる。
私が“お母さんごっこ”をして欲しいとお願いをした時の嬉しそうな桃子の顔を。
私が“本当のお母さん”になって欲しいとお願いをした時の安心したような桃子の顔を。



そんな“お母さん”の顔を思い浮かべて・・・また、泣いた・・・。



「お母さんのこと、無視してる・・・。」



「うん・・・。」



「ちゃんと謝る・・・。」



「うん・・・。
怒ってはなかったよ・・・。
“何を言われても何をされても可愛い”ってこの前言ってたよ・・・。」



昔からよく言ってくれているその言葉を、この歳になってもまだ言ってくれている・・・。



「お母さんは格好良すぎるよね・・・。
桃子は格好良いなんて無縁な感じだったのに、格好良くなり過ぎたよね・・・。
お母さんでもなくお父さんに思うくらいに、格好良くなっちゃった・・・。
だから渡に恋をしなかったのかな・・・。」



そう呟きながら、“お兄ちゃん”を見詰める。



“お兄ちゃん”を強く抱き締めながら、見詰める。



そして、口を大きく開いた。



噛み付く・・・。



でも、鋭い歯ではなくて甘く噛み付く・・・。



甘噛みをする・・・。



「“お兄ちゃん”・・・。」



“お兄ちゃん”を見上げながら、お願いをする・・・。



「豊も、私のお兄ちゃんになって?
真理姉も私のお姉ちゃんで、豊も私のお兄ちゃんになって?」



“豊”と呼べた。
初めて、お兄ちゃんのことを“豊”と呼べた。
すんなりと、この口から出てきた。
何も不安ではなかったから。
何も怖くはなかったから。



そんな私にお兄ちゃんは嬉しそうな顔で笑って・・・



「うん・・・りーちゃん・・・。」



頷きながら、私を“りーちゃん”と呼んでくれる。



“お母さん”が私を“可愛い”と思う時に呼んでくれている時の呼び方を、お兄ちゃんがしてくれる。



お兄ちゃんからはいつも“可愛い”と思っていて欲しいから。



お兄ちゃんからはどんな私でも“可愛い”と思っていて欲しいから。



太ってしまった私だけど、動画に撮られるなら太らなければよかったと後悔していると・・・



お兄ちゃんが片手をスーツのポケットに入れ・・・



すぐにその手を出してきて・・・



出してきて・・・



それを、見て・・・



その箱を見て・・・



私は、固まる・・・。



そんな私を無視して、お兄ちゃんは小さな箱を開けた・・・。



小さな箱を開けて、お兄ちゃんが口を開いた・・・。



「“お兄ちゃん”と“妹”で、“婚約”しよう・・・。」



そう、口を開いた・・・。
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