ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。

水鳴諒

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 翌日も俺は、風紀委員長に連れられて登校した。
 するといつかのように、生徒会長が俺達の前に立った。これは珍しいことではなく、会長と風紀委員長は頻繁に口舌戦を繰り広げている。

 だが、今日は少し、会長の発言がいつもと違った。

「で? アホ風紀。お前とそこの報道部は、付き合ってたんだろ?」

 ニヤリと笑ったその声に、風紀委員長が息を呑んだ。
 硬直した委員長は、それから俺をチラリと見る。

「……」

 俺は目が合った時、何度か瞬きをしてから、会長に向き直った。

「それは、違うと思う」
「ん?」

 すると会長が目を丸くした。

「俺の片想いだったみたいだ。日記があって……そこにそう書いてあった。なんか、俺は委員長に告白したみたいで、それで……いつもの通りにフラれて、だからもうそれを最後に諦めるって書いてあったから、俺のただの片想いで――」

 俺が続けようとした時、息を呑んだ風紀委員長が、ギュッと俺の手首を掴み、焦ったように俺を見た。その瞳には苦しそうな色が合って、俺の手首を握る指先は震えていた。

「やめろ、違う。違うんだ」
「え?」
「俺はきちんと……お前が好きだった、だから、違うんだ。それを今のお前に伝えなかったのは、俺の方こそ振られるのが怖かったからで」
「委員長……?」
「俺は……っ、学内の風紀を乱してはいけないという思いもあったし、お前が俺の気持ちを弄んでいる可能性がずっと怖かったのもあって……ただ、だから……言えなかったんだ。好きだと」

 人前で、風紀委員長が俺に言った。会長も含めて、通行していた生徒達が、驚愕したように沈黙して、こちらを凝視している。

「確かにあの日は、いつもと違った。お前は、いつもなら……俺が断っても、諦めないと言って笑っていたのに……あの日は……『そっか』とだけ言って、部屋から出て行ったんだ。俺は、それが……お前からの愛が、あったとすれば好意が、消えてしまったと思って……怖くなって」

 風紀委員長が俺の腕を強く引いた。
 よろけた俺を、風紀委員長が不意に抱きしめた。ギュッと目を閉じた委員長が、それから俺の肩に顎をのせた。

「――放課後、俺が中庭に呼び出した。お前の気持ちを、もう一度確認するために」
「?」
「そうしたらお前は、木の枝に座っていて、空の写真を撮っていた」

 委員長の声が次第に小さくなる。そして俺の耳元で、囁くように言った。

「お前は……空に行きたいと笑って、俺は不謹慎だとそこでも言って、それは――お前がまるで死んでしまいそうで、最期の声のようで……そうしたら、お前は次に俺にカメラを向けて、一枚だけで良いから残させて欲しいと……そう言って俺の方を見て俯いたら、バランスを崩して落下したんだ。俺は手を伸ばしたが、間に合わなかった」

 そんな事があったのかと、俺は驚いた。

「……言ってくれたらよかったのに」
「俺を覚えていないお前にか?」
「確かに俺は覚えてないけどな……きっと、記憶を失う前の俺は喜んだと思うから、だから……俺のどこかがきっと喜んだと思う。俺は、委員長を拒絶したりしないよ」

 俺はそう告げ微笑した。すると俺を腕の中に収めたままで、少し体を離したい委員長が、じっと俺を見る。その目は、涙で潤んでいた。

 ――バリン、と。
 音がしたのはその時で、俺は振り替えろとしたのだが、その時には頭部に衝撃を感じ、そこから意識がなくなったようだった。


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