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第38話
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決勝戦が始まろうとしている。
勇者君が現れた瞬間に「きゃー!!」と黄色い声援が上がる。部長よりもその声援の量は少ないものの、顔人気はあるんだよなー。
(なんで順番にするんだよ…。今まで通りに同時に入場でよかっただろ…)
そんな感じに部長に悪態をつく。
俺が入ってきた時には、その声援は消えており静まり返っている。まるで嵐がやってくる前の静けさだな。ここで殺し合いをするわけでもないのに、もっとテンションを上げてもらわないと。
さてさて、肝心の勇者君のご尊顔をお目にかかれたわけだがその表情は怒りだ。顔は仏様ではない、どちらかというと阿形吽形(あぎょううんぎょう)だな。
(ん~。理由としてはなんだ?)
勇者御一行様(笑)と戦ったのは覚えているけど?
観客の方では「光くん頑張ってー!」と声援を送られているようだ。そして振り返り声援に答える。なんか、お前空気読めよ?みたいな無言の圧を感じるな~。
(確か勇者君は、あれから固定パーティーを組んで4階層を攻略中だっけな?)
休み時間中にそんな話が聞こえてきていた。声がデカすぎて聞きたくなくても聞こえてしまう。体のどこに音量調節の機能がついているのだろう。レバーがあるなら下げたいところだ。
(勇者君は強いのか?)
気力操作に集中していたから、あまり見ておらずよくわからない。
見ようと思っていたが、全て気力操作の練習で時間がつぶれてしまった。まあ、見ても意味はないか。試合が始まる。勇者君は腰に刺していた剣を引き抜き構えをとる。
右手で武器を持ち、左手には何も装備をしていない。そんな左手を背中の方に当てることで、視界から情報を消しているのだろう。
部長の合図により試合が始まった。勇者君の突撃から始まる。そして攻撃範囲内に俺の体が入ると水平に振りかぶる。武器の位置からその攻撃は予想できている。軽いバックステップで簡単に回避が可能だ。
勇者君からみて、右から左への切り払いだった。その後、右手首に左手を当て威力を殺す。その左手を上に上げることで、両手で剣を握るのだった。剣に体が振り回されないようにする方法だ。
(剣術か何かでもやっていたのか?)
他の同級生とは比べ物にならないほど、動きが洗練されている。
勇者君は切り払いからの数歩前に出ての切り落としが入る。短剣に気力を通すことで耐久性を上げた。そして、俺の体は左側に半歩移動する。短剣の頭を剣の腹に当て、攻撃の方向を逸らす。
地面に衝突した剣は、砂埃を上げ、武器と顔を隠している。これでは勇者君がどのように行動するのかをみることができない。そのため、バックステップを取ることで距離を空け、様子を見る選択を取る。
魔力探知により、魔力が高まっているのが分かる。さらに後ろに下がるのだった。予備動作が分かっていたため、余裕を持って回避を取ることができた。飛んできた魔法はライトバレットだった。
狙っていた場所は、俺が剣を避けた場所とそのバックステップの後の場所だ。
(予備動作が分かっていなければ当たっていたな…)
当たっていれば被害が出ていただろう。魔法を使ってくるのなら、こちらも魔法を使うまでだ。
お返しとばかりに、ウィンドジャベリンを繰り出す。魔法職業の合計レベル20ほどのステータスだ。魔力的にも俺のほうが強いはず…。とりあえず連射をするのだ。
1つの唱えで、1つの魔法が出る時代は終わった。魔法を使うときに、魔力を多めに込めることで、魔法が複数個同時に出る。魔法が勇者がいるであろう場所の地面に当たる。
これにより、さらに砂埃が発生するのだった。勇者君の姿が見当たらない。気配探知だ。1つだけ、近づいてくる気配を感じる。しかも後ろからだ。
「はああぁぁぁ!」
と声を上げて切り下ろしをしてくるのだった。声を上げて奇襲をするのかよくわからないな。何か勇者から得ることがあるかな?と思い、魔力や気力での身体強化は封印している。
だが、何も得るものはない。剣術と言っても俺が使うのは短剣だし…。どちらかと言うと、タンクくんとの戦闘の方が楽しかったものである。魔法の威力の上げ方の勉強にもなったからなー。
だが、この勇者くんはどうだろうか?全く学ぶところや突出したところがない。それにより、対策を立てようとしてもいい魔法が思いつかないのだ。インスピレーションが湧かない。
どちらかと言うと、死ぬような思いをせずに、楽しくダンジョンに潜っているような人間なのだろう。その苦労は、タンクが全て引き受けているのか?イライラが溜まるな…。
もっとマシな力を見せてよ。ワクワクさせてくれよ。まあ、こんな茶番は終わらせる。アースジャベリンを空中に作る。それら全てを勇者くんに向けて飛ばすのだった。
そしてすぐにコントロールを手放し、アースバレットを作り出す。先端を丸くしていることで殺傷力は極限まで落とされている。こっちは正面に向けて放った。
死なないが気絶くらいはするだろう。
アースジャベリンの方は誘導だ。威力の高いアースジャベリンは1回見せている。それにより、勇者の動きは回避かアーツの二択に絞ることができるのだった。
勇者が選択したのは、回避だった。俺の方に回避することでついでに距離を詰めようと考えたのだ。そこにアースバレットが飛んでいき、命中する。大量のアースバレットが当たるのだった。
皮膚が青くなるのは確実だな。そして、勇者くんの方は気絶をしている。勇者くんが完敗に負けたことでそっちに注目が行っている。今のうちに気配を消して、元の場所に戻るのだった。
まあ、終わりだな。優勝とかのトロフィーも景品もないことから、もう終わりだ。参加していた一年は、決勝が終わると帰ってもいいと言われていた。だから、それに従い家に帰るのだった。
学校で浮かなければいいな…。気分が悪いので家に帰ります。とだけメールをするのだった。部長からは了解と即返事が返ってくる。
了承も得たことだし、家に帰るのだった。
勇者君が現れた瞬間に「きゃー!!」と黄色い声援が上がる。部長よりもその声援の量は少ないものの、顔人気はあるんだよなー。
(なんで順番にするんだよ…。今まで通りに同時に入場でよかっただろ…)
そんな感じに部長に悪態をつく。
俺が入ってきた時には、その声援は消えており静まり返っている。まるで嵐がやってくる前の静けさだな。ここで殺し合いをするわけでもないのに、もっとテンションを上げてもらわないと。
さてさて、肝心の勇者君のご尊顔をお目にかかれたわけだがその表情は怒りだ。顔は仏様ではない、どちらかというと阿形吽形(あぎょううんぎょう)だな。
(ん~。理由としてはなんだ?)
勇者御一行様(笑)と戦ったのは覚えているけど?
観客の方では「光くん頑張ってー!」と声援を送られているようだ。そして振り返り声援に答える。なんか、お前空気読めよ?みたいな無言の圧を感じるな~。
(確か勇者君は、あれから固定パーティーを組んで4階層を攻略中だっけな?)
休み時間中にそんな話が聞こえてきていた。声がデカすぎて聞きたくなくても聞こえてしまう。体のどこに音量調節の機能がついているのだろう。レバーがあるなら下げたいところだ。
(勇者君は強いのか?)
気力操作に集中していたから、あまり見ておらずよくわからない。
見ようと思っていたが、全て気力操作の練習で時間がつぶれてしまった。まあ、見ても意味はないか。試合が始まる。勇者君は腰に刺していた剣を引き抜き構えをとる。
右手で武器を持ち、左手には何も装備をしていない。そんな左手を背中の方に当てることで、視界から情報を消しているのだろう。
部長の合図により試合が始まった。勇者君の突撃から始まる。そして攻撃範囲内に俺の体が入ると水平に振りかぶる。武器の位置からその攻撃は予想できている。軽いバックステップで簡単に回避が可能だ。
勇者君からみて、右から左への切り払いだった。その後、右手首に左手を当て威力を殺す。その左手を上に上げることで、両手で剣を握るのだった。剣に体が振り回されないようにする方法だ。
(剣術か何かでもやっていたのか?)
他の同級生とは比べ物にならないほど、動きが洗練されている。
勇者君は切り払いからの数歩前に出ての切り落としが入る。短剣に気力を通すことで耐久性を上げた。そして、俺の体は左側に半歩移動する。短剣の頭を剣の腹に当て、攻撃の方向を逸らす。
地面に衝突した剣は、砂埃を上げ、武器と顔を隠している。これでは勇者君がどのように行動するのかをみることができない。そのため、バックステップを取ることで距離を空け、様子を見る選択を取る。
魔力探知により、魔力が高まっているのが分かる。さらに後ろに下がるのだった。予備動作が分かっていたため、余裕を持って回避を取ることができた。飛んできた魔法はライトバレットだった。
狙っていた場所は、俺が剣を避けた場所とそのバックステップの後の場所だ。
(予備動作が分かっていなければ当たっていたな…)
当たっていれば被害が出ていただろう。魔法を使ってくるのなら、こちらも魔法を使うまでだ。
お返しとばかりに、ウィンドジャベリンを繰り出す。魔法職業の合計レベル20ほどのステータスだ。魔力的にも俺のほうが強いはず…。とりあえず連射をするのだ。
1つの唱えで、1つの魔法が出る時代は終わった。魔法を使うときに、魔力を多めに込めることで、魔法が複数個同時に出る。魔法が勇者がいるであろう場所の地面に当たる。
これにより、さらに砂埃が発生するのだった。勇者君の姿が見当たらない。気配探知だ。1つだけ、近づいてくる気配を感じる。しかも後ろからだ。
「はああぁぁぁ!」
と声を上げて切り下ろしをしてくるのだった。声を上げて奇襲をするのかよくわからないな。何か勇者から得ることがあるかな?と思い、魔力や気力での身体強化は封印している。
だが、何も得るものはない。剣術と言っても俺が使うのは短剣だし…。どちらかと言うと、タンクくんとの戦闘の方が楽しかったものである。魔法の威力の上げ方の勉強にもなったからなー。
だが、この勇者くんはどうだろうか?全く学ぶところや突出したところがない。それにより、対策を立てようとしてもいい魔法が思いつかないのだ。インスピレーションが湧かない。
どちらかと言うと、死ぬような思いをせずに、楽しくダンジョンに潜っているような人間なのだろう。その苦労は、タンクが全て引き受けているのか?イライラが溜まるな…。
もっとマシな力を見せてよ。ワクワクさせてくれよ。まあ、こんな茶番は終わらせる。アースジャベリンを空中に作る。それら全てを勇者くんに向けて飛ばすのだった。
そしてすぐにコントロールを手放し、アースバレットを作り出す。先端を丸くしていることで殺傷力は極限まで落とされている。こっちは正面に向けて放った。
死なないが気絶くらいはするだろう。
アースジャベリンの方は誘導だ。威力の高いアースジャベリンは1回見せている。それにより、勇者の動きは回避かアーツの二択に絞ることができるのだった。
勇者が選択したのは、回避だった。俺の方に回避することでついでに距離を詰めようと考えたのだ。そこにアースバレットが飛んでいき、命中する。大量のアースバレットが当たるのだった。
皮膚が青くなるのは確実だな。そして、勇者くんの方は気絶をしている。勇者くんが完敗に負けたことでそっちに注目が行っている。今のうちに気配を消して、元の場所に戻るのだった。
まあ、終わりだな。優勝とかのトロフィーも景品もないことから、もう終わりだ。参加していた一年は、決勝が終わると帰ってもいいと言われていた。だから、それに従い家に帰るのだった。
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