エキゾチックアニマル【本編完結】

霧京

文字の大きさ
122 / 331

番外 過去【聞き分けのない子】

しおりを挟む

 手を離したくない。目を離したくない。誰になにを言われようとも、離したくない。
 子供らしく我儘に、聞き分けなく、執着する。
自分が手を離したらなくなってしまうかもしれない。壊れてしまうかもしれない。
実際ずっと大事にしていたはずの玩具は気づけば、姿を変えていたり新しくなっていたりした。自分がつけた汚れも消え、臭いも変わり、色も変わる。それがすごく嫌だった。
だから誰にもとられないようになるべく手放さないようにした。隠すようにした。
 なにもおかしくはない。自分にとって当たり前のことだった。

「冬真今度は何を拾ってきたの?」
「スズメ、怪我してたから」
「お母さんに見せてくれる?」
「いや」

母はいつもと同じ困った顔を浮かべる。本当は見せてあげたい。でもダメだ。
だって母に見せたら、奪われてしまう。前にも鳥を拾ってきたとき見せたら、親に返すと言って奪われた。
親鳥はいなかったのに、誰に返すと言うのだろう?どこかで見ている?
 ならなぜ自分が連れ去ったときにこないのだろうか?

「僕が助ける。僕が守る」
「あ、また困らせてる」

 呆れたような声にドキッとした。三歳年上の姉は、口喧嘩が聞こえてきたのか部屋から顔を出し怒った顔をした。

「ほんと、冬真はお母さん困らせるの好きだね」
「そんなことないもん」

 言い返せば、姉はパタパタと冬真の前まで走ってくると必死で小鳥を後ろに隠したままの冬真の前に立った。

「困らせてるじゃん!できもしないのにできるっていって!」
「できるもん!」
「できない!」
「できるもん!!」

 強く叫んだ瞬間、一瞬姉がたじろいだ。しかし、姉はすぐに立て直し、キリっと睨み返した。

「小鳥さんが死んじゃってもいいの!?」
「いやだ!」
「ならお母さんに渡して!」

 その激昂に押され、涙を流しながらも後ろ手に隠していた小鳥を母へと差し出した。

「ありがとう。じゃあ、お母さんが小鳥さんのお母さんに探しに行くね」
「小鳥さん助かる?」
「うん、冬真が助かりますようにってお祈りしてればきっと助かるよ」

 そう言い、母はハンカチに小鳥をくるむと外へと出ていった。

「小鳥さん!元気でね」

 しかし母が連れて行った頃には、引き離している間に母鳥が諦めてしまい、結局小鳥は動物病院に保護された。
 そのことを冬真はずっと後になってから知った。救うどころか助けるつもりで奪ってしまったのだと気づくのは更にもっと後になってからだった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...