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第五十二話【原点】後
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家をでた途端、力也が冬真をしっかりと睨んだ。怒っていますと表すように、詰め寄られ苦笑を返す。冬真的に言うなら、針を逆立てているような状態だ。
「冬真のバカ。なんで最初から全部言わなかったんだよ!」
怒られるだろうなとは思っていたので、宥めるようにしつつ、ヘルメットを渡す。心配しなくても絶対歓迎されるとわかってはいたから、言わずに進めたがそう言う問題じゃなかったらしい。
「そりゃ……お前に逃げられたくなくて?」
「……またそうやってごまかす」
誤魔化すためだけに言った事じゃないが、ため息をつかれ、力也へ近づく。真剣な表情と共に見つめられ、怒りをそがれた力也はそれでも負ける物かと不満そうな顔を浮かべていた。
「誤魔化してるだけじゃないって。家に連れてくなんて言って断られたら嫌じゃん?」
「……断るわけがないって知ってるくせに」
「わかんねぇって、家族に紹介ってなったらやっぱりしり込みされるかもしれないだろ?」
「……本当にそんなこと疑ってんなら俺本気で怒るよ?」
「ごめん、降参です」
睨まれ、返ってきたセリフに一瞬言葉を失うも苦笑を浮かべ、嬉しい答えをくれたその口へキスを返した。直ぐに口を離すも、力也の頼りがいのある体に寄りかかる。
「全然帰ってねぇから言うのもなんか照れくさくて、黙ってました。すみませんでした」
甘えるように体を寄せれば、力也は仕方なさそうに抱きしめた。まったく不安がないと言えば嘘になる。力也が嫌がるなど考えてはいなかったが、どちらかと言えば冬真の我儘で連れていくだけだ。気が進まないという反応をされる可能性はあった。
久しぶりに会う家族に紹介されるなど、大きなイベントだ。普段は人当たりのいい力也でも緊張して、後ろ向きになってしまってもおかしくはない。
力也を見ていると忘れがちだが、そもそもSubは自分に自信がなく卑屈なところがある。自分でいいのかと不安に感じ、その結果距離を置かれるのも嫌だった。
普段通りの力也を連れて行きたかった。楽しんでほしかった。すべては冬真の希望だった。
「受け入れられてよかった」
「拒否されるわけねぇって」
「孫が欲しいってなったら俺じゃダメじゃん」
「そう言うのは気にしねぇって。こう言っちゃなんだけど、多分父さん達はSubなら誰でもいいってなってたと思う」
本来なら、なんという言い草だと怒るだろうことを言われても、力也は怒る様子はなかった。それどころか話の先を促すように“そうなんだ”と相槌を打った。
「何やってるかわかんねぇ、Domの息子を持った親なんてそんなもんだって」
そう言うと冬真は少しだけ体を離し、力也を見つめるとニヤッと笑みを浮かべ続けた。
「だから、明日はちょっとでいいから俺を褒めて」
まったく予想していなかった事をお願いされ、力也は一瞬面くらうも目線を反らした。
「えー、難しいな~。俺嘘苦手だし。命令なら聞くけど?」
「命令じゃねぇし、嘘も言わなくていいから。お願い」
懇願を込めたグレアを送り、もう一度キスをする。
そうして駐車場で散々イチャイチャと痴話げんかのような物を繰り広げた二人は、やっと伯父の家に向った。
伯父の家は家からバイクで直ぐの場所にあった。見た目は如何にも昔ながらの一軒家で伯父は父の兄になるので、ここが父の実家になる。
「力也、ここが伯父さんの家で父さんの実家。今は叔父さんと伯父さんのパートナーが住んでる」
「え?パートナーってことは……」
「そう、叔父さんは俺と同じ王華学校出のDomでパートナーはお前と同じSubの男性なんだ」
世間的には少数派のダイナミクスだが、一家族に何人か生まれることも珍しくはない。力也のように親子そろってということも、冬真のように少し離れている場合も多くある。DNAの関係だとか、生まれる前の環境だとか色々言われてはいるが、それらはまだ解明されていない。
「だから伯父さんもランクAだけど、怖くねぇから警戒いらねぇよ」
「わかった。ところで、伯父さんの名前とパートナーさんの名前は?」
「伯父さんが卓也でパートナーが翼さん」
「卓也さんと翼さんね。了解」
力也が繰り返したのを聞き、冬真は頷き玄関のチャイムを鳴らした。
「はーい、今行きます」
チャイムからそう声が聞こえると少しして、玄関の戸が開いた。中から、一人の穏やかそうな男性が出てくる。
「冬真君久しぶり、いらっしゃい」
「こんばんは、翼さん。お邪魔します」
「うん。あ、そっちの人が連れてくるって言ってたSubの力也君?初めまして冬真君の伯父さんのパートナーの翼です」
「初めまして、お世話になります」
頭を下げた力也に、翼は家に入る様に進めた。中に入ると、玄関に一人の男性が立っていた。冬真の父と似た顔つきのその人が伯父だ。
「よく来た。冬真」
壁に手をつき立ったままの伯父は冬真に向い手招きした。呼ばれた冬真が近づくとその顔を両手で挟み、ペタペタと触った。
「うん、元気そうだ。身長も伸びたか?」
「ずっと前に止まったって知ってんだろ?」
「ははっ、そうだったな。え……っとそれに力也だっけか?おいで」
顔だけでなく、肩や腕をペタペタ触ったは、力也の方を見ると手招きした。一瞬なにか違和感を感じた力也だがDom特有の空気感に力也は素直にそばに寄った。
「力也、動くな」
「冬真?」
近くに力也が寄ってくると、冬真は伯父から離れ逃げ道を塞ぐよう力也の後ろへ回った。続けて出された命令に、不思議そうにした力也に伯父が一歩近づき両手を顔へと伸ばしてきた。
「叔父さんもう少し上」
「そっか、力也君は背が高いんだな」
その言葉と先ほどから感じていた違和感が、確信に変わった。伯父の目線は冬真と力也を捕らえているようで捕えていなかった。
顔へと伸ばされた手も少しずれていた。力也の顔の位置がわからないかのようにしている手に、パートナーの翼の手が伸びる。そっと誘導するように持ち上げ、力也の顔へと触れさせる。
「ここ」
「ああ、ありがとう。うん、本当に高い。これは俺より高いんじゃないか?」
力也の顔を伯父はペタペタと指先で確かめるように触った。顔の輪郭や頬をなぞり、頭へと到着すると頭をガシガシと撫でた。
「伯父さん、昔はもっと見えてたんだけど、どんどん見えなくなって今じゃ輪郭しかわかんねぇんだって」
「輪郭もぼやけてるから、触らないとわからなくてね。おかげで今も冬真が成長している実感がないんだ」
説明に笑いながら付け足しながらも、頭を自然と押さえつけるように撫でる伯父に、力也は柔らかく笑みを浮かべた。
「そうなんですね。……冬真は……今は貴方よりも高いですよ」
「え!?」
その言葉に驚いた声を上げると、伯父は冬真を探して視線を泳がせた。力也と輪郭が重なり見つけることができないらしい様子に、冬真は声を出した。
「こっちこっち、ってか知らなかったのかよ」
「そんな気は薄っすらとしていたんだが、誰も言ってくれなかったからね。そうか、そうか、抜かされてしまったか。で、君はそれより高いんだよね」
「俺は、自動販売機ぐらいあります」
その説明に、伯父は一瞬面くらったものの、次の瞬間こらえきれないかのように“ハハハハッ”と声を上げ爆笑し始めた。
「そっか、そっか。冬真は自販機をパートナーに選んだのか」
笑いのツボにハマってしまったのか、笑い続けながら顔を指先でたどり、肩まで行くと両肩に手を置きバンバンと叩いた。
「面白い子だ。体もがっしりしてて頼りがいがありそうだ」
上機嫌に、肩や腕を確かめながら“いいこ”だと繰り返され、照れくさそうな表情を力也は浮かべていた。
「卓也、もうその辺で。二人を中に通さなきゃ」
「ああ、そうだったな。じゃあ、二人とも上がってくれ」
そう言い、伯父の手を取った翼に頷かれ冬真と力也は、家に上がった。
泊まる部屋を案内してもらい、着替えを渡すとお風呂の場所は冬真が知っているからごゆっくりと言って、翼と伯父は二人を残し、戻って行ってしまった。
「ごゆっくりって?」
「行ってみればわかるって。お風呂こっちだから」
無論、ごゆっくりの意味を知っていた冬真だが、流石に伯父の家でというはどうだろうと思った。泊まるときに使ったことがある風呂を思い浮かべる。
(確かに邪魔もないし、少しぐらいなら……)
たどり着いた風呂は、冬真の記憶にも残っているヒノキで出来た広い和風の物だ。目が不自由な卓也の為にリフォームされ、段差も少なく手すりもある。足元も滑りにくい工夫がされ、ちょっとした旅館の風呂のようだった。
「すごい」
「伯父さん温泉とか好きで気合い入れたんだって」
「へぇ……。」
感心したように、風呂を見ていた力也だが、冬真が服を脱ぎ始めたのをみて、顔を顰めた。
「ごゆっくりってまさか」
「ハハッ気づいたか」
肯定するように笑われ、なんとも言えない顔を浮かべた力也に構わず冬真は服を脱いだ。
二人で入っても十分な浴槽に、動いても危険が少ない洗い場とくればやることは一つしかないだろう。
「ここ、伯父さんの家だろ」
「ごゆっくりって言っただろ?わかってるって」
「でも……」
既に全部脱いでいる冬真と比べ、なかなか脱ごうとしない力也に苦笑を返した。
「どうしたんだ?」
「どうって……」
いつもならドンドン脱ぐだろうと笑いからかえば、力也は不服そうにジロリと睨んだ。無論、力也が躊躇う理由がわかっていながら聞いている冬真は、わざと不思議そうな顔を作り更に聞いた。
「風呂入るのに、服脱がなきゃ入れないだろ?」
「冬真、楽しそうだな」
「そんなに俺と一緒にお風呂入りたくねぇ?」
「そうじゃないけど……」
「冗談だって、流石にやんねぇよ」
からかわれていることに気づいた力也は、もう一度ジロッと睨むと、ため息をつき服に手をかけた。別にそこまで嫌ではないが、初めて来た冬真の伯父の家でするのは抵抗があるのだろう。
同じダイナミクスの同性同士のペアとはいえ、恥ずかしいという気持ちは冬真もわかる。だから先ほどの話も冗談で本気ではない。残念ではあるが。
「冬真のバカ。なんで最初から全部言わなかったんだよ!」
怒られるだろうなとは思っていたので、宥めるようにしつつ、ヘルメットを渡す。心配しなくても絶対歓迎されるとわかってはいたから、言わずに進めたがそう言う問題じゃなかったらしい。
「そりゃ……お前に逃げられたくなくて?」
「……またそうやってごまかす」
誤魔化すためだけに言った事じゃないが、ため息をつかれ、力也へ近づく。真剣な表情と共に見つめられ、怒りをそがれた力也はそれでも負ける物かと不満そうな顔を浮かべていた。
「誤魔化してるだけじゃないって。家に連れてくなんて言って断られたら嫌じゃん?」
「……断るわけがないって知ってるくせに」
「わかんねぇって、家族に紹介ってなったらやっぱりしり込みされるかもしれないだろ?」
「……本当にそんなこと疑ってんなら俺本気で怒るよ?」
「ごめん、降参です」
睨まれ、返ってきたセリフに一瞬言葉を失うも苦笑を浮かべ、嬉しい答えをくれたその口へキスを返した。直ぐに口を離すも、力也の頼りがいのある体に寄りかかる。
「全然帰ってねぇから言うのもなんか照れくさくて、黙ってました。すみませんでした」
甘えるように体を寄せれば、力也は仕方なさそうに抱きしめた。まったく不安がないと言えば嘘になる。力也が嫌がるなど考えてはいなかったが、どちらかと言えば冬真の我儘で連れていくだけだ。気が進まないという反応をされる可能性はあった。
久しぶりに会う家族に紹介されるなど、大きなイベントだ。普段は人当たりのいい力也でも緊張して、後ろ向きになってしまってもおかしくはない。
力也を見ていると忘れがちだが、そもそもSubは自分に自信がなく卑屈なところがある。自分でいいのかと不安に感じ、その結果距離を置かれるのも嫌だった。
普段通りの力也を連れて行きたかった。楽しんでほしかった。すべては冬真の希望だった。
「受け入れられてよかった」
「拒否されるわけねぇって」
「孫が欲しいってなったら俺じゃダメじゃん」
「そう言うのは気にしねぇって。こう言っちゃなんだけど、多分父さん達はSubなら誰でもいいってなってたと思う」
本来なら、なんという言い草だと怒るだろうことを言われても、力也は怒る様子はなかった。それどころか話の先を促すように“そうなんだ”と相槌を打った。
「何やってるかわかんねぇ、Domの息子を持った親なんてそんなもんだって」
そう言うと冬真は少しだけ体を離し、力也を見つめるとニヤッと笑みを浮かべ続けた。
「だから、明日はちょっとでいいから俺を褒めて」
まったく予想していなかった事をお願いされ、力也は一瞬面くらうも目線を反らした。
「えー、難しいな~。俺嘘苦手だし。命令なら聞くけど?」
「命令じゃねぇし、嘘も言わなくていいから。お願い」
懇願を込めたグレアを送り、もう一度キスをする。
そうして駐車場で散々イチャイチャと痴話げんかのような物を繰り広げた二人は、やっと伯父の家に向った。
伯父の家は家からバイクで直ぐの場所にあった。見た目は如何にも昔ながらの一軒家で伯父は父の兄になるので、ここが父の実家になる。
「力也、ここが伯父さんの家で父さんの実家。今は叔父さんと伯父さんのパートナーが住んでる」
「え?パートナーってことは……」
「そう、叔父さんは俺と同じ王華学校出のDomでパートナーはお前と同じSubの男性なんだ」
世間的には少数派のダイナミクスだが、一家族に何人か生まれることも珍しくはない。力也のように親子そろってということも、冬真のように少し離れている場合も多くある。DNAの関係だとか、生まれる前の環境だとか色々言われてはいるが、それらはまだ解明されていない。
「だから伯父さんもランクAだけど、怖くねぇから警戒いらねぇよ」
「わかった。ところで、伯父さんの名前とパートナーさんの名前は?」
「伯父さんが卓也でパートナーが翼さん」
「卓也さんと翼さんね。了解」
力也が繰り返したのを聞き、冬真は頷き玄関のチャイムを鳴らした。
「はーい、今行きます」
チャイムからそう声が聞こえると少しして、玄関の戸が開いた。中から、一人の穏やかそうな男性が出てくる。
「冬真君久しぶり、いらっしゃい」
「こんばんは、翼さん。お邪魔します」
「うん。あ、そっちの人が連れてくるって言ってたSubの力也君?初めまして冬真君の伯父さんのパートナーの翼です」
「初めまして、お世話になります」
頭を下げた力也に、翼は家に入る様に進めた。中に入ると、玄関に一人の男性が立っていた。冬真の父と似た顔つきのその人が伯父だ。
「よく来た。冬真」
壁に手をつき立ったままの伯父は冬真に向い手招きした。呼ばれた冬真が近づくとその顔を両手で挟み、ペタペタと触った。
「うん、元気そうだ。身長も伸びたか?」
「ずっと前に止まったって知ってんだろ?」
「ははっ、そうだったな。え……っとそれに力也だっけか?おいで」
顔だけでなく、肩や腕をペタペタ触ったは、力也の方を見ると手招きした。一瞬なにか違和感を感じた力也だがDom特有の空気感に力也は素直にそばに寄った。
「力也、動くな」
「冬真?」
近くに力也が寄ってくると、冬真は伯父から離れ逃げ道を塞ぐよう力也の後ろへ回った。続けて出された命令に、不思議そうにした力也に伯父が一歩近づき両手を顔へと伸ばしてきた。
「叔父さんもう少し上」
「そっか、力也君は背が高いんだな」
その言葉と先ほどから感じていた違和感が、確信に変わった。伯父の目線は冬真と力也を捕らえているようで捕えていなかった。
顔へと伸ばされた手も少しずれていた。力也の顔の位置がわからないかのようにしている手に、パートナーの翼の手が伸びる。そっと誘導するように持ち上げ、力也の顔へと触れさせる。
「ここ」
「ああ、ありがとう。うん、本当に高い。これは俺より高いんじゃないか?」
力也の顔を伯父はペタペタと指先で確かめるように触った。顔の輪郭や頬をなぞり、頭へと到着すると頭をガシガシと撫でた。
「伯父さん、昔はもっと見えてたんだけど、どんどん見えなくなって今じゃ輪郭しかわかんねぇんだって」
「輪郭もぼやけてるから、触らないとわからなくてね。おかげで今も冬真が成長している実感がないんだ」
説明に笑いながら付け足しながらも、頭を自然と押さえつけるように撫でる伯父に、力也は柔らかく笑みを浮かべた。
「そうなんですね。……冬真は……今は貴方よりも高いですよ」
「え!?」
その言葉に驚いた声を上げると、伯父は冬真を探して視線を泳がせた。力也と輪郭が重なり見つけることができないらしい様子に、冬真は声を出した。
「こっちこっち、ってか知らなかったのかよ」
「そんな気は薄っすらとしていたんだが、誰も言ってくれなかったからね。そうか、そうか、抜かされてしまったか。で、君はそれより高いんだよね」
「俺は、自動販売機ぐらいあります」
その説明に、伯父は一瞬面くらったものの、次の瞬間こらえきれないかのように“ハハハハッ”と声を上げ爆笑し始めた。
「そっか、そっか。冬真は自販機をパートナーに選んだのか」
笑いのツボにハマってしまったのか、笑い続けながら顔を指先でたどり、肩まで行くと両肩に手を置きバンバンと叩いた。
「面白い子だ。体もがっしりしてて頼りがいがありそうだ」
上機嫌に、肩や腕を確かめながら“いいこ”だと繰り返され、照れくさそうな表情を力也は浮かべていた。
「卓也、もうその辺で。二人を中に通さなきゃ」
「ああ、そうだったな。じゃあ、二人とも上がってくれ」
そう言い、伯父の手を取った翼に頷かれ冬真と力也は、家に上がった。
泊まる部屋を案内してもらい、着替えを渡すとお風呂の場所は冬真が知っているからごゆっくりと言って、翼と伯父は二人を残し、戻って行ってしまった。
「ごゆっくりって?」
「行ってみればわかるって。お風呂こっちだから」
無論、ごゆっくりの意味を知っていた冬真だが、流石に伯父の家でというはどうだろうと思った。泊まるときに使ったことがある風呂を思い浮かべる。
(確かに邪魔もないし、少しぐらいなら……)
たどり着いた風呂は、冬真の記憶にも残っているヒノキで出来た広い和風の物だ。目が不自由な卓也の為にリフォームされ、段差も少なく手すりもある。足元も滑りにくい工夫がされ、ちょっとした旅館の風呂のようだった。
「すごい」
「伯父さん温泉とか好きで気合い入れたんだって」
「へぇ……。」
感心したように、風呂を見ていた力也だが、冬真が服を脱ぎ始めたのをみて、顔を顰めた。
「ごゆっくりってまさか」
「ハハッ気づいたか」
肯定するように笑われ、なんとも言えない顔を浮かべた力也に構わず冬真は服を脱いだ。
二人で入っても十分な浴槽に、動いても危険が少ない洗い場とくればやることは一つしかないだろう。
「ここ、伯父さんの家だろ」
「ごゆっくりって言っただろ?わかってるって」
「でも……」
既に全部脱いでいる冬真と比べ、なかなか脱ごうとしない力也に苦笑を返した。
「どうしたんだ?」
「どうって……」
いつもならドンドン脱ぐだろうと笑いからかえば、力也は不服そうにジロリと睨んだ。無論、力也が躊躇う理由がわかっていながら聞いている冬真は、わざと不思議そうな顔を作り更に聞いた。
「風呂入るのに、服脱がなきゃ入れないだろ?」
「冬真、楽しそうだな」
「そんなに俺と一緒にお風呂入りたくねぇ?」
「そうじゃないけど……」
「冗談だって、流石にやんねぇよ」
からかわれていることに気づいた力也は、もう一度ジロッと睨むと、ため息をつき服に手をかけた。別にそこまで嫌ではないが、初めて来た冬真の伯父の家でするのは抵抗があるのだろう。
同じダイナミクスの同性同士のペアとはいえ、恥ずかしいという気持ちは冬真もわかる。だから先ほどの話も冗談で本気ではない。残念ではあるが。
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