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第五十三話【誓い】後
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真っ暗な暗闇の中、呼ばれた気がした。闇の中次々に浮かぶのは、母、友人、定食屋のおじさんとおばさん、孝仁、氷室、翔壱、修二、大事な人たちが次々と浮かぶ。
沢山の大事な人々の姿が消えたのに、それでもまだ声が聞こえた。その呼び声に答えようとするも、声が出ない。
次の瞬間だった。まるで抱き着かれたかのように、力也は振り返った。そこには……。
目を覚ませば、そこはソファーベッドの上だった。年代を感じさせる木の模様が浮かぶ天井を見上げ、数分ここがどこかを思い出した。
ここは冬真の伯父の家の居間だ。二人用に用意され翼が案内してくれた、客室ではない。
記憶は四人で居間で酒を飲んでいたところからなくなっている。
(まさか、寝落ち!?)
慌てて起きようとして、背中にもう馴染んでしまったほどに覚えのある感触を感じ、動きを止める。
「冬真……」
ため息交じりに名前を呼ぶ、がっしりと冬真が背中から抱きしめていた。
「起きてる?」
なんの反応もない、無理やり起きることも可能だがまだ時間が早いことは、なんとなくわかる。起こさないように身じろぐが、動きにくいことに気づき、よく見れば服を握り込まれていた。
「えー、ちょっと離して」
両手でしっかりと握った挙句に、足まで絡みついている。ここまでしっかり抱きこまれると身動きが取れない。
「冬真?」
全然起きないことに、困っていた力也だがしばらくして物音が聞こえてきたことに気づく。
「おっと、起きてたんだね。おはよう」
「おはようございます」
顔を覗かせたのは翼だった。にっこりと笑顔を浮かべながらも、寝間着と寝ぐせで乱れた髪のまま力也の傍へ来た。
「寒くなかった?」
「はい、大丈夫でした。すみません、俺寝ちゃったみたいで……」
「冬真君が、楽しそうに飲ませてたからね。寝ちゃっても仕方ないよ」
そう言われると、進まれるまま普段より飲んだ気がする。それでもまさか寝落ちするなんて思っていなかった。初めて来た場所に、初めて会う二人にそれなりに緊張していた筈なのに。
「もう起きるつもり?」
「はい、俺は起きたいんですけど……」
翼に問われ、チラッと冬真の方へ視線を送る。相変わらず、その手は力也の服を捕まえたままだ。
「よく寝てるね」
「どうすればいいと思いますか?」
「暴れていいと思うよ」
にっこり笑いながら、力づくで起きることを進めてきたことに、一瞬目を見張る。
「え……と暴れたら冬真も起きますよね」
「うん、起こしちゃえば?」
いつもの朝のトレーニングの癖で起きてしまっただけなのに、起こすのはどうだろうと考え込む。
「それとももう少し寝る? なんか予定ある?」
「いえ、予定があるわけじゃないんですけど……いつもの朝のトレーニングの癖で……」
「なるほど」
その説明に、翼は納得ができたとばかりに頷くと、力也の背中にくっついていた冬真へ手を伸ばした。力也が止める間もなく、グラグラと強めに揺らす。
「冬真君、力也君がトレーニングするんだって起きて」
「い、いや翼さん?」
「トレーニングって何するの? ランニングとか?」
冬真だけではなく、力也の体も揺れるぐらいに揺らしながら問われ、思わず肯定すれば翼は声を大きくした。
「力也君ランニング行くって! 起きてお散歩についていかなきゃだめだよ。ご主人様でしょ?」
そんな犬の散歩じゃないんだからと、戸惑う力也に構わずついには両手を使いグラグラと揺らす。そこまでされてやっと、冬真が動き出した。
「翼さん、相変わらず容赦ない」
「冬真君、おはようございますは?」
「おはようございます」
仕方なさそうに起きた冬真は、顔は動かすも手は尚も服を掴んだままだった。まだ眠いというように、力也の背中に頭をつける。
「冬真とりあえず離して」
「力也、お散歩いく?」
「いや、流石に人の家で……」
「行っておいでよ。帰ってくる頃にはご飯用意しとくから」
それは流石に申し訳ないと思うも、もしかしたらいないほうが落ち着いて支度ができるのかもしれないと思いなおす。
「力也がお散歩いくならついてく」
「じゃあ、行こうかな」
そう言えばもぞもぞと動き出し、両手と足を離した。やっと解放され体を起こすと、冬真も体を起こした。
「ほら着替えていっておいで」
翼に追い出されるようにして、二人は家を出た。冬の外はまだ暗く、少し寒い。
吐き出す息が白いと思いつつ、力也をみると、さっそく準備運動を始めていた。
「走るんだよな?」
「そのつもりだけど?」
「俺ついてけるかな」
「バイクでもいいよ?」
絶対スピードが速く、ついていけないだろう予想がつき呟けば、マラソンランナーの先導みたいなことを言われてしまった。自転車でついていくぐらいならまだわかるが、バイクはおかしい気がする。
「因みにいつもどのぐらい走ってんだ?」
「6キロぐらい?」
力也のまねで準備運動をしながら聞いた冬真は固まった。これが力也一人でするトレーニングならすごい、の一言で済むのだが、一緒にいくと言ってしまった以上そうはいかない。
「いや、でも今日は4キロにしとく」
言ってはみたものの無理だとわかっていたのだろう。直ぐに力也は安心させるように言いなおした。
「4キロか」
「4キロ、競歩でもいいよ?」
どんどん妥協されていくのが情けなく、申し訳ない。しかし、ここで妥協しなくていいと言えるほど冬真は体力に自信がなかった。
さらに言えば、これからの事を考えてもっと体力をつけたほうがいいと思っていた。
「じゃあ、それでお願いします」
「了解」
そう言うと歩き出そうとした力也は、思いついたように冬真を見た。
「冬真、セーフワードは?」
いつもPlay時に冬真が言うのと同じ聞き覚えのあるセリフに、一瞬驚くも不敵に笑い返す。
「プリーズ」
「よし、道案内は頼むな」
「任せとけ」
そうして二人は朝の肌寒いなか、競歩で散歩を始めた。
「そう言えば、お前昨日のどこまで覚えてる?」
「どこまでって言われてもな」
「翼さんの愚痴は?」
「それは覚えてる」
そう、昨夜酒が入っていた四人は次第に、赤裸々な話になっていった。出会いや普段の話、更にはPlay内容など、Dom同士、Sub同士話すことはあってもペア同士で話すことは少ない。
長年のペアの二人の話がなにか参考になるかと思っていた力也だが、その思いはあっという間に崩れた。
「翼さんも苦労してるんだな」
「もってなんだよ。俺はあそこまでムッツリじゃないだろ」
「いや、片鱗はあると思うけど」
そう、Playについての話になった時、目が見えないままでは難しいんじゃないかと思っていた力也の想いを読むように伯父は自分から切り出したのだ。
自分はこんな風だから、なにもわからない。全て手探りで探って教えてもらわなきゃならないんだと、殊勝な様子で言った伯父に、翼が突っ込んだのだ。
翼曰く、自分の事を頼りにしてくれるのは嬉しいけど、Playの時に全て報告させる必要はないはずだと。
「常にSayさせられてるようなもんだよな」
「見えないのは仕方ないかなって思うけど、流石にな~」
「伯父さんあれ確信犯だからな」
「やっぱり? まあそうだよな」
そのことは翼自身もわかっている。それでも教えてくれないとわからないと不安げに言われてしまえば、言うしかない。結局自分がいまどんな感じになっているのか、常に自分で見て説明しなければならない。
「体のいい羞恥プレイだよな……」
「だよな……」
はぁはぁと息を吐きながらそう言った冬真の顔を見た力也は、そのどこか楽しそうな表情に嫌な予感を覚えた。
「でも、ちょっと楽しそうだよな。力也もそう思わな……」
最後まで聞く前に、力也は一気にスピードを上げた。あっという間に突き放され、言葉を失った冬真は、湧いていた欲望を口にすることなく苦笑した。
「力也、早い早い!」
慌てて置いて行かれないようにスピードを上げた。その後帰り道の途中で結局冬真は、当初の目的の距離を走り終える前に、セーフワードを口にした。
朝ご飯を食べさせてもらい、伯父の家をでると冬真の実家に向かった。ついてみれば、昨日話題に出ていた姪っ子の姫も二人を出迎えてくれた。
「すごい、りきやさんむきむき」
大興奮した姫を膝の上に乗せ、力也は好きに体を触られていた。昨日に続き、力を入れ欲しいと冬真の姉に言われ、力を入れる。
姪っ子が触るだけかと思えば、気づけば冬真の姉にも触られていた。
「すごいね。かっこいいね」
「うん!」
なにが面白いのか暫くそうして触りまくっていると、不意に思い出したように膝から降りどっかにいってしまった。姉が後をおいかけるのを見送り、冬真の母へと視線を向けた。
「ごめんなさいね、力也君」
「いえ、姫ちゃん人見知りしないんですね」
「そうみえる? ああ見えて最近人見知りが激しいのよ?」
「そうなんですか?」
「それが証拠に冬真は振られたでしょ?」
そう言うと、二人はマッサージチェアを独占している冬真へ目を向けた。
冬真は先ほど久しぶりにあった姪っ子に冷たくあしらわれた心と、お散歩の付き添いで悲鳴を上げる足を癒すために、両親のお気に入りのマッサージチェアを占領している。
「すっごい警戒された」
「そりゃそうでしょ。前会ってから二年近くたってるんだから」
「力也にはすぐに懐いたのに」
「危険人物を見分けられてていいことじゃないか」
「親父……」
自分の息子に対してあんまりな言い方に冬真は父を睨んだ。確かに、それはそうなのだが納得がいかない。
「で、クレイム式だっけ?それって姫も連れて行っても大丈夫なの?」
「結婚式とは違うから不思議な感じするかもしれないけど、トラウマになるようなことはしないし楽しめるようにするから」
「ならよかった」
詳しい段取りや参加者は決めていないが、飽きることはあっても多分怖いことはないはずだ。
「式の前に力也君のご家族と挨拶をしたいんだができないのか?」
父の問いかけに、答えたのは力也だった。力也は申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げた。
「すみません、自分の母さんは施設からでてこられないと思うので……」
「そう、残念ね。いつかご挨拶できるといいのだけど」
「残念だが、よろしく伝えてほしい」
「ありがとうございます」
力也も冬真も呼べるものなら呼びたいが、クレイム式は冬真の関係者としてDomが沢山出席するだろう。そんな中に弱ったままの力也の母を連れてくることは不可能だし、いくらUsualとはいえ、冬真の存在を理解していない限り両親と会わせても意味がない。
いつか施設からでた時に、母を連れてもう一度挨拶にこようと思った。
沢山の大事な人々の姿が消えたのに、それでもまだ声が聞こえた。その呼び声に答えようとするも、声が出ない。
次の瞬間だった。まるで抱き着かれたかのように、力也は振り返った。そこには……。
目を覚ませば、そこはソファーベッドの上だった。年代を感じさせる木の模様が浮かぶ天井を見上げ、数分ここがどこかを思い出した。
ここは冬真の伯父の家の居間だ。二人用に用意され翼が案内してくれた、客室ではない。
記憶は四人で居間で酒を飲んでいたところからなくなっている。
(まさか、寝落ち!?)
慌てて起きようとして、背中にもう馴染んでしまったほどに覚えのある感触を感じ、動きを止める。
「冬真……」
ため息交じりに名前を呼ぶ、がっしりと冬真が背中から抱きしめていた。
「起きてる?」
なんの反応もない、無理やり起きることも可能だがまだ時間が早いことは、なんとなくわかる。起こさないように身じろぐが、動きにくいことに気づき、よく見れば服を握り込まれていた。
「えー、ちょっと離して」
両手でしっかりと握った挙句に、足まで絡みついている。ここまでしっかり抱きこまれると身動きが取れない。
「冬真?」
全然起きないことに、困っていた力也だがしばらくして物音が聞こえてきたことに気づく。
「おっと、起きてたんだね。おはよう」
「おはようございます」
顔を覗かせたのは翼だった。にっこりと笑顔を浮かべながらも、寝間着と寝ぐせで乱れた髪のまま力也の傍へ来た。
「寒くなかった?」
「はい、大丈夫でした。すみません、俺寝ちゃったみたいで……」
「冬真君が、楽しそうに飲ませてたからね。寝ちゃっても仕方ないよ」
そう言われると、進まれるまま普段より飲んだ気がする。それでもまさか寝落ちするなんて思っていなかった。初めて来た場所に、初めて会う二人にそれなりに緊張していた筈なのに。
「もう起きるつもり?」
「はい、俺は起きたいんですけど……」
翼に問われ、チラッと冬真の方へ視線を送る。相変わらず、その手は力也の服を捕まえたままだ。
「よく寝てるね」
「どうすればいいと思いますか?」
「暴れていいと思うよ」
にっこり笑いながら、力づくで起きることを進めてきたことに、一瞬目を見張る。
「え……と暴れたら冬真も起きますよね」
「うん、起こしちゃえば?」
いつもの朝のトレーニングの癖で起きてしまっただけなのに、起こすのはどうだろうと考え込む。
「それとももう少し寝る? なんか予定ある?」
「いえ、予定があるわけじゃないんですけど……いつもの朝のトレーニングの癖で……」
「なるほど」
その説明に、翼は納得ができたとばかりに頷くと、力也の背中にくっついていた冬真へ手を伸ばした。力也が止める間もなく、グラグラと強めに揺らす。
「冬真君、力也君がトレーニングするんだって起きて」
「い、いや翼さん?」
「トレーニングって何するの? ランニングとか?」
冬真だけではなく、力也の体も揺れるぐらいに揺らしながら問われ、思わず肯定すれば翼は声を大きくした。
「力也君ランニング行くって! 起きてお散歩についていかなきゃだめだよ。ご主人様でしょ?」
そんな犬の散歩じゃないんだからと、戸惑う力也に構わずついには両手を使いグラグラと揺らす。そこまでされてやっと、冬真が動き出した。
「翼さん、相変わらず容赦ない」
「冬真君、おはようございますは?」
「おはようございます」
仕方なさそうに起きた冬真は、顔は動かすも手は尚も服を掴んだままだった。まだ眠いというように、力也の背中に頭をつける。
「冬真とりあえず離して」
「力也、お散歩いく?」
「いや、流石に人の家で……」
「行っておいでよ。帰ってくる頃にはご飯用意しとくから」
それは流石に申し訳ないと思うも、もしかしたらいないほうが落ち着いて支度ができるのかもしれないと思いなおす。
「力也がお散歩いくならついてく」
「じゃあ、行こうかな」
そう言えばもぞもぞと動き出し、両手と足を離した。やっと解放され体を起こすと、冬真も体を起こした。
「ほら着替えていっておいで」
翼に追い出されるようにして、二人は家を出た。冬の外はまだ暗く、少し寒い。
吐き出す息が白いと思いつつ、力也をみると、さっそく準備運動を始めていた。
「走るんだよな?」
「そのつもりだけど?」
「俺ついてけるかな」
「バイクでもいいよ?」
絶対スピードが速く、ついていけないだろう予想がつき呟けば、マラソンランナーの先導みたいなことを言われてしまった。自転車でついていくぐらいならまだわかるが、バイクはおかしい気がする。
「因みにいつもどのぐらい走ってんだ?」
「6キロぐらい?」
力也のまねで準備運動をしながら聞いた冬真は固まった。これが力也一人でするトレーニングならすごい、の一言で済むのだが、一緒にいくと言ってしまった以上そうはいかない。
「いや、でも今日は4キロにしとく」
言ってはみたものの無理だとわかっていたのだろう。直ぐに力也は安心させるように言いなおした。
「4キロか」
「4キロ、競歩でもいいよ?」
どんどん妥協されていくのが情けなく、申し訳ない。しかし、ここで妥協しなくていいと言えるほど冬真は体力に自信がなかった。
さらに言えば、これからの事を考えてもっと体力をつけたほうがいいと思っていた。
「じゃあ、それでお願いします」
「了解」
そう言うと歩き出そうとした力也は、思いついたように冬真を見た。
「冬真、セーフワードは?」
いつもPlay時に冬真が言うのと同じ聞き覚えのあるセリフに、一瞬驚くも不敵に笑い返す。
「プリーズ」
「よし、道案内は頼むな」
「任せとけ」
そうして二人は朝の肌寒いなか、競歩で散歩を始めた。
「そう言えば、お前昨日のどこまで覚えてる?」
「どこまでって言われてもな」
「翼さんの愚痴は?」
「それは覚えてる」
そう、昨夜酒が入っていた四人は次第に、赤裸々な話になっていった。出会いや普段の話、更にはPlay内容など、Dom同士、Sub同士話すことはあってもペア同士で話すことは少ない。
長年のペアの二人の話がなにか参考になるかと思っていた力也だが、その思いはあっという間に崩れた。
「翼さんも苦労してるんだな」
「もってなんだよ。俺はあそこまでムッツリじゃないだろ」
「いや、片鱗はあると思うけど」
そう、Playについての話になった時、目が見えないままでは難しいんじゃないかと思っていた力也の想いを読むように伯父は自分から切り出したのだ。
自分はこんな風だから、なにもわからない。全て手探りで探って教えてもらわなきゃならないんだと、殊勝な様子で言った伯父に、翼が突っ込んだのだ。
翼曰く、自分の事を頼りにしてくれるのは嬉しいけど、Playの時に全て報告させる必要はないはずだと。
「常にSayさせられてるようなもんだよな」
「見えないのは仕方ないかなって思うけど、流石にな~」
「伯父さんあれ確信犯だからな」
「やっぱり? まあそうだよな」
そのことは翼自身もわかっている。それでも教えてくれないとわからないと不安げに言われてしまえば、言うしかない。結局自分がいまどんな感じになっているのか、常に自分で見て説明しなければならない。
「体のいい羞恥プレイだよな……」
「だよな……」
はぁはぁと息を吐きながらそう言った冬真の顔を見た力也は、そのどこか楽しそうな表情に嫌な予感を覚えた。
「でも、ちょっと楽しそうだよな。力也もそう思わな……」
最後まで聞く前に、力也は一気にスピードを上げた。あっという間に突き放され、言葉を失った冬真は、湧いていた欲望を口にすることなく苦笑した。
「力也、早い早い!」
慌てて置いて行かれないようにスピードを上げた。その後帰り道の途中で結局冬真は、当初の目的の距離を走り終える前に、セーフワードを口にした。
朝ご飯を食べさせてもらい、伯父の家をでると冬真の実家に向かった。ついてみれば、昨日話題に出ていた姪っ子の姫も二人を出迎えてくれた。
「すごい、りきやさんむきむき」
大興奮した姫を膝の上に乗せ、力也は好きに体を触られていた。昨日に続き、力を入れ欲しいと冬真の姉に言われ、力を入れる。
姪っ子が触るだけかと思えば、気づけば冬真の姉にも触られていた。
「すごいね。かっこいいね」
「うん!」
なにが面白いのか暫くそうして触りまくっていると、不意に思い出したように膝から降りどっかにいってしまった。姉が後をおいかけるのを見送り、冬真の母へと視線を向けた。
「ごめんなさいね、力也君」
「いえ、姫ちゃん人見知りしないんですね」
「そうみえる? ああ見えて最近人見知りが激しいのよ?」
「そうなんですか?」
「それが証拠に冬真は振られたでしょ?」
そう言うと、二人はマッサージチェアを独占している冬真へ目を向けた。
冬真は先ほど久しぶりにあった姪っ子に冷たくあしらわれた心と、お散歩の付き添いで悲鳴を上げる足を癒すために、両親のお気に入りのマッサージチェアを占領している。
「すっごい警戒された」
「そりゃそうでしょ。前会ってから二年近くたってるんだから」
「力也にはすぐに懐いたのに」
「危険人物を見分けられてていいことじゃないか」
「親父……」
自分の息子に対してあんまりな言い方に冬真は父を睨んだ。確かに、それはそうなのだが納得がいかない。
「で、クレイム式だっけ?それって姫も連れて行っても大丈夫なの?」
「結婚式とは違うから不思議な感じするかもしれないけど、トラウマになるようなことはしないし楽しめるようにするから」
「ならよかった」
詳しい段取りや参加者は決めていないが、飽きることはあっても多分怖いことはないはずだ。
「式の前に力也君のご家族と挨拶をしたいんだができないのか?」
父の問いかけに、答えたのは力也だった。力也は申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げた。
「すみません、自分の母さんは施設からでてこられないと思うので……」
「そう、残念ね。いつかご挨拶できるといいのだけど」
「残念だが、よろしく伝えてほしい」
「ありがとうございます」
力也も冬真も呼べるものなら呼びたいが、クレイム式は冬真の関係者としてDomが沢山出席するだろう。そんな中に弱ったままの力也の母を連れてくることは不可能だし、いくらUsualとはいえ、冬真の存在を理解していない限り両親と会わせても意味がない。
いつか施設からでた時に、母を連れてもう一度挨拶にこようと思った。
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