エキゾチックアニマル【本編完結】

霧京

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過去編【王華学園の日常】後

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 王華学校は高等学校に属する学校だ。兄弟校は全国に三カ所、それだけではなく関係する中学もある。
 中学は第二の性別を持つ、生徒のみを受け入れている訳ではないが、それでもダイナミクスコミュニケーションというダイナミクスに関係する授業を取り入れている。
 むろん王華学校は中学とは比べものにならないほど、ダイナミクスコミュニケーションの時間が多くとられている。
 その内容も常識的な物から深く重い内容まで幅広く、夢見がちのDomの生徒達に、悲しい現実を教えている。

「今日のダイナミクスコミュニケーションの授業はビデオ鑑賞です」

 その言葉が言われた途端、生徒達の顔つきが変わった。何を見せられるかも言っていないのに、こわばった表情はこれから流される物を警戒していた。
 Playの説明ビデオや、ダイナミクスについての説明ならば既に何度も見ているので今更改まって見ることはない。無論、過激なPlayのビデオでもない。
 ならばなにかと言われそうだが、考えられるのは二つ、一つはDPVと呼ばれ、世間に出回っているPlay代わりのビデオだ。欲求不満にならないように使われているためSub用とDom用の両方が存在するが、授業でみるのは大抵Sub用の物だ。Dom用のPlay代わりのビデオは生徒達の多くが既に知っており、図書室にも置かれているため、授業としてみなくとも勝手に見ている。
対してSub用は当たり前だが所持しておらず、見てもいない。その為Subの立場に立ってみることができるように授業ではそれを見せられることが多い。
ダイナミクスを持たない人からすれば、どちらにしても同じように思うだろうが、実際には全然違うものとなる。Sub用ならば視線の先はDomに設定されており、Subはあまり映らないか後ろ姿だけ、その為Domの生徒たちが見ても面白くないどころか、下手をするとストレスがたまる。
 しかし、それ以上に生徒たちが警戒しているのは、心に傷を負ったSub達の映像だ。例えば麻薬中毒者の映像、または交通事故の映像などのショッキングな映像を戒めとして見せるように、Subと接する上での危険性を教える。
 今日はどちらの映像だろうと、生徒たちが警戒する中、教師は教室の入り口のそばに行くとそのカギを閉めた。
 その後流されたビデオの内容で、教室内は怒りのグレアと嫌悪感、憎悪、そして傷ついたSubに向ける哀れみの感情に包まれた。

「なんで、なんでなんだよ」
「ひでぇ……」
「許せない」

 ある生徒は涙を流しつつ、ある生徒は怒りのグレアを抑えられず、ある生徒は体を震わせ、目をそらしたい内容を見た。
 そしてそれは生徒だけではなく、何度も見ている教師たちも同じだった。感情を表に出すことなく、生徒たちを見張る為冷静に見てはいるが、その映像にはいつまでたっても慣れることなく、組んだ腕は跡がつくほど強く握りしめていた。

 ビデオの内容は悲惨だった。
Sub特有の純粋な瞳を持った人々が、Domによって絶望させられ心を破壊され自分を失い壊れていく。徐々に濁っていく瞳は常に不安げに揺れ、痛いほど健気な心を映す。
 どれほど怖くても、相手に従う事しかできず、心どころかコマンドで動く筈の体さえもうまく時にうまく動かなくなる。
 抑圧され続け、自分が悪いと言い聞かせられ続けたSubはそのうちにセーフワードを言えなくなり、ロストワードと言われる状態に陥る。
 それでも自分の思い通りに動かそうとするDomは気づかず、Subを自分の色に塗り替えていると思いつつ、心を壊していく。サブドロップを軽く考え、日常化していてもおかしいことだと思わないその状態はSubを確実に壊していく。
 どれほどSubの精神に負担を強いているか考えることもせず、自分の欲を通し相手を責める。それは暴力となんら変わりない。
 そしてSubは己に絶望し、サブドロップに陥ったまま戻ってくることができなくなる。
 ビデオはそして保護施設に入居しているSub達の映像で終わった。
 ここにいるのはありのままのSubが大好きで手に入れたいと思っているDom達だ。それが奪われていく過程は彼らにとって耐えがたいほど辛い内容だった。


ビデオが終わり、鬱々とした気分のまま、play用の部屋に移動した生徒たちの目の前にいたのはいつも通りはにかむような笑顔を浮かべたSubの生徒たちだった。
彼らを見た瞬間、再び何人かの生徒たちは涙を流した。

「彰、どうかした?」
「ううん、なんでもない」
「冬真さんも、どうしたの?」
「なんでもないよ。ありがとう」

 いつもと違う様子のDomの生徒たちを心配し、Subの生徒たちが近寄り次々に尋ねる。それになんでもないと返しつつ、そっと頭を撫で、中には思わず抱きしめてしまう者までいた。
そうしてその日のplayの練習は全員がSubの生徒を相手に、やさしいplayができた。

授業が終わると、部活の時間となる。部活は他の学校と同じく、運動部から文化部までいろいろな物がある。中にはSubと一緒に楽しめる物もあり、それは倍率がいつも高い。
中でも人気なのは料理部だった。Subと一緒に料理を楽しむことができ、Subの料理を食べられるとありとても倍率が高い。
それ故に、三年間必ず所属できるものではなくDomの生徒だけは途中で入れ替わる。

「冬真、ダイコン行こう」
「ああ」
「二人とも、よくこんな日にダイコンやろうと思うよな。Subもいないのに」
「将来の役に立つし」
「そうそう」
「そんなこと言って、冬真は自主的だけど、有利は強制だろ」

 Domのタイプの中で、破壊型と呼ばれ危険視されている生徒達は強制的にダイコンと呼ばれるダイナミクスコミュニケーションに関する部に所属することが決まっている。
部活では授業で習うよりも更に深く、色々なPlay内容にも触れていく、その為多くのPlayの知識を得ることができる。しかしその反面、部活の時間が長く、内容も厳しく、Subの生徒もいないためあまり人気とは言えない。

「いいじゃん、早く行こうぜ。冬真」
「それにしても今日は随分積極的だよね。なんかあるの?」
「今日は柚葉先生が来るんだよ」

 その瞬間、その場で聞いていた三人の生徒と近くにいた生徒達からは声があがった。

「なんで冬真言っちゃうんだよ!」
「部員以外は入れないし、別にいいだろ」
「柚葉先生来るの!? なにしに!?」
「なにかは知らないけど、先生達がそんな話しをしてるの聞こえたから」

基本Sub不足に陥っているDomの生徒達は、Subの生徒ではなくSubの教師が来るだけでも盛り上がる。その為、Subの教師は多くの部活に顔を出してはいるが、いつどこにいくかはあかされないことが多い。それでも、ときたまこうしてバレることがある。

「いいな~」

 Subが好きすぎる生徒達はSubであれば、割と誰でもいい。現にいま彼らがうらやましがっているSubの教師は、彼らから見れば祖母に当たるほどの年頃の女性だ。
 それでも、会えるだけで特別な事のようにうらやましがる生徒達を軽く交わしつつ、今日の勝ち組のダイコン部の部員は部活動に向かった。

 部活が終われば、夕食の時間だ。その時間が過ぎれば、自由時間となる。自由時間は短い時間だが自由に過ごすことができる。
 更に土日の休日には仲良くなったSubとPlayルームで個別にPlayすることもでき、うまくすればその生徒がのちにパートナーとなることもある。

 そうして三年間をしっかりと使い、徹底的にダイナミクスについて学ぶことができ、自分自身についても学ぶことができる。
その為軍隊のような厳しさが目立つが意外と楽しかったし、行って正解だったと言われる。それがダイナミクスを持つ者を専門とすることで有名な王華学校だ。
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