ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ

文字の大きさ
98 / 182

98

しおりを挟む
 会場に残った30人の実力者たち。
 どの冒険者も雰囲気がある。この会場にもうザコはいないようだ。

 番号が呼ばれ、2人の冒険者がダンジョンへと足を進める。
 その背中は、さっきよりも重苦しい雰囲気だ。

「いつも使ってる武器……ですもんね。みんな防御力アップのアイテムを装備しているとはいえ、怖いですね……」
 花子は不安そうな表情だ。

 スクリーンにはダンジョン内の闘技場での戦いが映し出される。
 闘技場の周りには、先ほどのように回復魔法使いの姿が。
 そして、今回は運営のスタッフたちがいつでも止められるよう、スタンバイしている。
 どのスタッフも凄腕の冒険者なのだろう。

「それでは、始めてくれ」
 虎石が戦闘開始の合図を出す。

 今までの戦いとは違い、桁違いの緊張感。
 2人とも剣使いのようで、剣を構え、向かい合い睨み合っている。

「……すごい緊張感だ」

 緊張に耐えられなくなったのか、1人の剣士が動く。
 素早く相手に駆け寄り剣を振り下ろす。
『キンッ!』

 しかし、簡単には決まらない。
 当たり所が悪ければ、命に関わるケガをしかねない実戦だ。

「うおおお!」
 もう片方の剣士が反撃する。
 素早く振り回した剣が相手の腕を刺す。

「ぐわぁぁぁ!」
 刺された冒険者は、剣を落とし倒れ込む。

「そこまでだ!ッ」
 すぐに回復魔法使いが駆け寄り、ケガの治療をする。
 防御力アップアイテムのおかげもあり、傷は浅くすぐに治癒したようだ。

 ◇

「うう……」
 倒れ込む冒険者を見て、気分の悪そうなまどか。

「まどかちゃん……大丈夫?」
 心配そうにまどかの肩に手を置く花子。

「だ、大丈夫です……」
 とは言え、高校生のまどかにはショッキングな映像だったようだ。

「それでは、次の対戦を始める」
 次に呼ばれた番号はまどかだった。

「ま、まどかちゃん……」
「大丈夫です、花子姉さん。見ててください。私も相手も傷つけずに帰ってきますわ」
 そう言って、まどかは闘技場へ向かった。

「まどかちゃんの言ってた『私も相手も』って?」

 ◇

 まどかの戦いが始まった。
 対戦相手の男は弓使いのようで、大きな弓を持っていた。

「弓使いか……あんまり見ないタイプの冒険者だね。まどかちゃん、大丈夫かな?」
 心配そうにスクリーンを眺めるアキラたち。

 弓使いは試合が始まるとすぐにまどかから距離を取る。
 弓矢は接近戦は苦手だ。いかに離れた安全圏から矢を放てるかが勝負のポイントだ。
 男は素早く矢を装填し、まどかに向けて放つ。

『ピュンピュンッ!』
 まどかを目がけ、高速で飛んでくる矢。胸にでも刺さったら、致命傷になりかねない攻撃だ。

 しかし、まどかの目にはしっかりと矢が見えていた。
 自分の体に近づく矢を剣で叩き落とす。

「くっ……俺の矢が見えてるのかッ!?」
 男はさらに装填速度を上げるが、まどかは矢を斬りながら弓使いに走り寄る。

「ま、まどかちゃん! それは無防備すぎるぞッ!!」
 アキラはたまらず、スクリーンに向け大声を上げる。

「くっくっく……勝負を焦ったか! まだ子供だな!」
 自分に向かい、一直線に走ってくるまどか。
 弓使いからすれば格好の的だ。

『ピュンピュンッ』
 連続で放たれる矢の1本がまどかの体に突き刺さる。

「あぁ……」
 青ざめるアキラと花子。最悪の事態を想像した2人……

 しかし、矢の刺さったまどかの体は煙のように消え去った。
「な、なにぃ!?!?」
 信じられないものを見た弓使いは気が動転する。

 その時、弓使いは自分の首に冷たいモノが当たる感触に気づいた。

「ぁ……」
 声にならない声を上げる男。首に触れているのは、まどかの剣だ。
 まどかは分身に矢を受けさせ、その隙に相手の背後に回り込んだのだ。

「降参ですわね?」

「……はい」
 こうして、まどかの対戦は終わった。

 まどかは『私も相手も傷つけない』という言葉を有言実行した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。 主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。 ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。 果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎町に住んでいたロボット好きの宮本荒人は、交通事故に巻き込まれたことにより異世界に転生する。 転生した先は、古代魔法文明の遺跡を探索する探索者の集団……クランに所属する夫婦の子供、アラン。 ただし、アランには武器や魔法の才能はほとんどなく、努力に努力を重ねてもどうにか平均に届くかどうかといった程度でしかなかった。 だがそんな中、古代魔法文明の遺跡に潜った時に強制的に転移させられた先にあったのは、心核。 使用者の根源とも言うべきものをその身に纏うマジックアイテム。 この世界においては稀少で、同時に極めて強力な武器の一つとして知られているそれを、アランは生き延びるために使う。……だが、何故か身に纏ったのはファンタジー世界なのにロボット!? 剣と魔法のファンタジー世界において、何故か全高十八メートルもある人型機動兵器を手に入れた主人公。 当然そのような特別な存在が放っておかれるはずもなく……? 小説家になろう、カクヨムでも公開しています。

処理中です...