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14話
しおりを挟む部屋を出たところにいたエマとモニカは倒れているが、見た目で外傷は見えない。
そして2人には申し訳ないが立ち止まっている時間も無かった。
チヨは全速力で廊下を走る。
やはり、心と身体が噛み合ってないからなのか動きが緩慢でチヨの足でも逃げることが出来そうだった。
「はぁっ…はぁっ…」
それでも運動などとは無縁のチヨにはとても辛い。
無事浄化を終えたら体力づくり、絶対にしよう。と思いつつ必死に足を動かす。
角を曲がったところで腕に傷を負ったルーカスと騎士2人が反対側から走ってくる。
「チヨさま!!!」
「ルーカスさんっ」
白い服が血で染まっているのを見ると動悸がする。
チヨはもっと痛い目に合っていたかもしれないのだ。
「ご無事でしたか…!」
「今のところは…でも、後ろから…!」
ルーカスが視線を後ろにずらし、その姿を確認する。
そしてチヨを見ずに言った。
「私達で少しの間、陛下を無力化しますのでチヨ様は隙を見て元いた部屋に戻れますか。戻ったら急いで5回目の沐浴をし、浄化に備えて下さい。明日まで待つ予定でしたが、時間がないようです。こちらも急いで用意を致しますので、それが終わりましたらすぐに浄化に入りましょう」
早口でこれだけ告げると、騎士に目配せをし、そこまで迫っていた王の元へ駆けていった。
その後ろ姿に向かってこくりと1人頷くと機会を伺った。
——————————
無事に部屋に戻ったチヨは沐浴を済ませ部屋にいた。
沐浴を終えた直後に神官が浄化のための衣装を持ってきたので、着替えて座っている。
その際にエマとモニカについて聞いたら気絶をしているとのことだった。命に別状が無さそうなのが救いだ。
ふーっと息を吐くと、ノックが響く。
返事をするとルーカスが入室してきた。
「…チヨ様、お待たせ致しました」
「明日だと思っていたんですけど…」
「これは前例に無いことです。僅か数日でこのような事態になるとは…」
「そうなんですね」
何か理由があるのだろうか。
しかし、こうなっては逆に腹も決まるというか…
「ルーカスさんの傷は大丈夫ですか?」
「あれくらいなんともありません。騎士訓練でも怪我はよくありましたから…ご心配ありがとうございます」
そう言って微笑む。
王宮の司祭を取り仕切ると言っていたし、武闘派とは縁遠いと思っていたが、意外とそうでもないらしい。
「その…お衣装…よくお似合いです」
ルーカスが照れ臭そうに褒める。
日本であればチヨは絶対に着ないであろう服である。
真っ白のエンパイアドレス、肩にはパフスリーブに、胸の下の長い白いリボンを後ろで結んでいる。
前が膝下くらいで短くなっており、後ろは床につくかどうかというところだ。
不思議と動きにくくはなく、華やかという感じでもなければシンプル過ぎることもない。
「あ、ありがとうございます」
こんな風に男性から褒められるのなんていつぶりだろうか。
夫も長いことこういうことは言ってくれなかったのだ。
チヨは頬に少しの熱を感じながら俯く。
こんな状況だが穏やかな沈黙が部屋を満たす。
お互いに照れ笑いを浮かべたところで、その時間を終わりにするノックが響いた。
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