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15話
しおりを挟む「失礼致します——聖女さま、用意が整いましたので、ご移動をお願い致します」
その言葉に思わず、ごくりと喉を鳴らしてしまう。
「分かりました」
「…いよいよですね」
隣にルーカスが立つ。
「はい、いよいよです」
「あの…こんなときに…いやこんなときだからこそ、ひとつお願いがございます」
「? なんですか?」
「浄化が終わりましたら、私に時間を頂けないでしょうか?」
「いいですよ」
そう答えるとルーカスの顔がぱあっと明るくなる。
なんかちょっと柴犬のように見えてきた。
「では私は先に失礼しますが、チヨさまは神官とご移動ください」
ルーカスのお陰で肩の力が抜けたようだ。
なんだかんだ側にいるので頼りにしているが、時間をくださいとは気になる…が、今は浄化だ。
ルーカスを見送り、立ち上がる。
「お待たせしました。いきましょう」
————————
浄化をするのは祈りの間だった。
本来は別の場所らしいが、先程の騒動を受けて祈りの場へと変更したようだった。
扉の前にはルーカスと神官が6名いた。
全員が頭を下げ、チヨを迎える。
その後1人ずつ守護を授けてくれた。
そうして扉が開けられ、入室する。
先日と同じようにパトソルニチニークが飾ってあるが量が尋常ではない。
そしてその真ん中に王が椅子に腰掛けていた。
いや、正しくは拘束されている…だろうか。
祈りを捧げている最中の自殺防止と、こちらへ危害を加えることを防ぐために、この日のための特別な鎖で縛っているのだ。
「王様…」
1歩、また1歩近づく。
しかし王は害意を剥き出しにしている。
「お前か!やはりお前なのか!やっぱり殺しておけばよかったなぁ」
その言葉は無視して、数日前の王の姿を思い浮かべる。
そして夢で見た初代の王の姿も。
「…浄化を始めます」
チヨの戦いの火蓋は切って落とされた。
————————
王は絶えず話しかけてくる。
その中でチヨはひたすら祈り続けなければならない。
明らかにこちらを妨害しようとする言葉に集中力が切れそうになる。
やろうとしていることが上手くいかないできないことでイライラしてしまうのだが、そうなっては相手の思う壺である。
そう思い、頭の中から言葉を追いやった。
…
何時間経っただろうか?
分からない。
それでもまだ王は呪詛を吐き続けている。
ああ、いつまで続くのだろうか?
…
……
疲れてきた。
そうだよ、夫も死んでしまったのにこんなに頑張る意味ってあるのかな?
私も早く側に行きたいな…
…
……
………
「おい!!お前!聞いてるのか!そんな簡単には死なせないぞお…恨め!憎め!そして滅ぶがいい!!」
「…さい」
「恨め恨め恨め恨め!!憎め憎め憎め憎め!!」
「…うるさい!!!!!!大体ねぇ、しつこいのよ!ずーーっと根に持っちゃって!何百年経ったと思ってんの!?」
もう何時間経ったか分からない。
本当は祈りの言葉だって必要だが、本当にそれだけで浄化出来るのかも分からないし、何よりこの状況を作り出している全てにムカムカしていた。
「初代の王様も王様だけど、神様も神様でしょ!!」
先程まで呪詛を流し続けていた王でさえも口を開けてチヨを見ていた。
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