異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ

文字の大きさ
37 / 40

リーシャの両親

しおりを挟む
異世界に着いた俺たちはギルドに向かって歩いていた。
リーシャには念の為、ローブを着せてある。

やはり、おかしいな。
デニムに騎士がいるなんて。リーシャを探しているのだろうか。

ここで姿を現してもいいのか?いや、もしかしたら指名手配で探している可能性もある。ギルドの張り紙がどうなっているかは確認した方がいいな。

俺たちはギルドの中に入った。

「あっ、アマネ。久しぶり」

「ミサか」

「今日はミッション受けるの?」

「いや、別の用事があってな」

俺はギルドの貼り紙を確認する。

指名手配…………では無くなってる。

俺は小さくガッツポーズをした。

「アマネさん!」

リーシャは満面の笑みを浮かべた。

だが探しているのには代わりない。迷子を探しているみたいな張り紙は貼っている。
自由にさせる気はないって事か。

「婚約者の人、無罪だったみたいだね。二日前くらいに騎士の人が来て、言ってた」

「そうなのか───」

俺はミサの肩に手を着いた。

「そうだけど………きゅ、急にどうしたの?」

「いや、何でもない」

とりあえず、命を狙っていないのは分かった。だがここで正体を現すのはやめた方がいいだろう。混乱を招く可能性がある。

「じゃあなミサ」

「もう行くの?」

「ああ、やる事があるんだ」

俺たちはミサと別れ、ギルドを出た。

そうして街にいる騎士の一人に声をかけた。

「どうかされましたか?」

「これから見せるものに対して攻撃しないと誓えますか?」

「どういう事だ?」

そう言って騎士は腰に携えている剣に手をかけた。

「誓えないのでしたら良いです」

そう言って俺たちは騎士の元を去る素振りを見せた。
ここまで怪しい問いを投げたんだ。騎士なら当然、見逃せないだろう。

「…………待て。分かった。誓おう」

「でしたら少しこちらに来てください」

「何故だ?」

「混乱は避けたいので」

そう言って俺たちは騎士を連れ、人気の少ない場所に来た。

「(リーシャ、準備はいいか?)」

俺は耳打ちでリーシャにそう言った。

「(はい)」

リーシャも耳打ちでそう返してきた。

「では見せます」

俺はそう言って、リーシャの来ているローブを脱がした。

そこから現れた長い銀色の髪がサラサラと風になびかれ、揺れていた。

騎士は一瞬驚いた顔をし、剣を握ったが、すぐにその手を離した。

そしてその場に跪いた。

「リーシャ・ミリセント様……………ご無事でいらっしゃったのですね」

<感覚>が反応していない。
どうやら攻撃の意思は無いようだ。

「要求は一つです。俺とリーシャを安全に城まで連れて行ってください」

「承知しました。すぐに竜車を手配します」

そう言って騎士はどこかに向かって走っていった。

「はぁ~緊張した…………」

「ですね…………」

俺たちは力が抜けたようにその場に座り込んだ。

どうやら<信用強制《ジェノサイド》>はちゃんと切れているらしい。
そして秩序に乗っ取り、改変された部分を必死に戻そうとしている。
皮肉なものだな。秩序に助けられるなんて。

そうして待っていると、俺たちの前に竜車が到着した。

俺たちは中に乗り込む。

「では出発します」

その言葉と同時に竜車は城に向かって走り出した。

俺たちは緊張を解すため、手をつなぎ、その時を待った。

竜車に揺られること数時間、ついに城に到着した。

俺たちは竜車から降りる。

すると銀髪に立派な髭を生やした男と銀髪に厚化粧の女が近づいてきた。
どことなく、リーシャに似ている容姿をしていた。

「誰だ?」

「両親です…………」

「っ!?」

リーシャは少し怯えているような、緊張しているような顔をした。

両親はリーシャの前に立つと怒りの表情を浮かべ、口を開いた。

「リーシャ!今まで一体何をしていたんだ!マルクス王子を待たせるんじゃない!」

「そうよ!婚約者としての自覚がないのかしら」

なんだこいつら、まずはリーシャを心配するところだろ。

リーシャは暗い顔をし、俯く。身体を振るえさせ、怯えていた。

「申し訳───」

「そんな言い方無いんじゃないですか?」

「誰よ、あなた」

「アマネ・シュンと申します。俺はこの時までずっとリーシャを信じ、守ってきました。どこかのクズ親と違って」

俺がそう言うとリーシャの両親は更に顔を赤くさせた。

「クズ親だと!口の聞き方に気を付けろよ小僧!だいたいあの話はスキルで嘘を信じ込まされていたと言うじゃないか!それなら、仕方ない事だろ!」

「仕方ないですか……………。俺もあのスキルを食らったことがありますが、効きませんでしたよ。何でか分かりますか?」

俺がそう言うとリーシャの両親は驚愕の表情を浮かべた。

「俺は心からリーシャを信じていたからです。だから効かなかった。つまりあなた達は自分の娘を信じていなかったということになります。ほんと、親として失格ですよ」

俺がそう言うと、リーシャの両親は怒りに任せてこんな事を言った。

「黙りなさい!あんたに何がわかるっていうのよ!リーシャが指名手配になっている間、私たちがどれだけ肩身の狭い思いをしたか、分からないでしょ!」

「だいたいリーシャが要らん反感をかったせいでこんな事になったんだぞ!」

「そんな…………私のせいですか…………」

リーシャは瞳に涙を溜めていた。今にもこぼれ落ちそうな程に。

「そうだ!お前のせいだ!全部お前が悪い!謝れ!私たちに謝れ!」

「ほら、早く謝りなさいよ!迷惑かけてすみませんでしたって頭を下げなさい!」

そう言って母親がリーシャの頭を掴んだ。

俺は我慢できなかった。
こんな親を持ったリーシャが不憫でならなかった。

「な、何よこれ…………」

「貴様!何をする!」

「ふざけるなよお前ら」

俺は<│束縛の呪い《バインド》>でリーシャの両親を縛った。

「貴様!何のつもりだ!」

騎士が剣を構えた。

焦ったリーシャが俺の腕を揺すり口を開いた。

「アマネさん、ありがとうございます。でも私は大丈夫ですから……………」

俺は全てを無視して話を続ける。

「リーシャがどんな気持ちで逃げたかお前らに分かるか?親にすら信じてもらえず、ありもしない罪をきせられた気持ちが分かるのか?お前ら、親だろ?無事にここへ帰ってきた娘を心配するべきじゃないのか?優しく抱きしめてあげるべきじゃないのか!!」

こんなことを言ったってこの二人には響かないだろう。だが抑えることが出来なかった。
リーシャを苦労を分からせてやりたくなった。

リーシャは大粒の涙を流していた。こんなに泣いているのを見るのは初めてかもしれない。

「これはリーシャが起こした問題だ。自分で責任を取るのが当然だ」

「そうだとしても信じてやるくらいはできるだろ?」

「その行為に何の意味があるというのだ?娘を叱ることこそ親としての責務だ。それ以外は不要なのだよ」

「出来の悪い娘をここまで育てたのは私達よ。その恩をこんな形で返されたのに、どうして心配なんかしたいといけないのよ」

出来が悪いだと。こんな親の言うことを文句も言わずに聞き続けたリーシャが?
最後まで諦めず、敵に立ち向かってきたリーシャのどこが出来が悪いんだ。

俺は手から血が滲み出るほどに拳を強く握った。

それが攻撃の意思表示として見られたのだろう、騎士が俺を取り囲んできた。

その時だった───。

「もういい加減にしてください!!」

城全体に響くほどに大きな声でリーシャはそう言った。

声だけでわかった。

両親に対して心の底から怒っていると。




─────────────────────────
ストックが無くなりましたので、次話から不定期更新になりますm(_ _)m
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...