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第五章 神獣
帰って来た二人
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あれ? まだ一目ぼれから抜けていなかったのかしら、と少し驚いてしまった。
そんな私を見て、ダリアはくすっと笑った。
「大丈夫よ。もうあきらめたから。でもあなたの父親は、最高の男よ。リディアも異論はないでしょ」
「そうだわね。最高の父親だとは、ずっと思っていたけど、最近それにも気付いたところよ」
ケイトが、親離れしたってことかなと言い、それから羨ましいと唸った。
「最高の男が父親って、めったにない幸運なのに、同スペックで同レベルに溺愛してくれる男が、婚約者になるなんて、この幸せ者」
そう言って、脇腹をくすぐられ、私は止めてよと笑いながら逃げた。
ケイトの言葉に目が覚めたような気分だった。自分は幸運なのだと、この時自覚した。
そして、お父様たちがここを発って七日後、二人は無事に帰って来た。外部棟に詰めている女性騎士から知らせを受けて、私はすぐに外部棟に向かった。
「リディア、変わりは無いか?」
お父様が駆け寄って来る。その前にトーマス様が飛び出した。
先を争って、二人は軽く揉め、その様子をロイがやれやれと言いながら眺めている。
すごく平和な眺めで、私はほっとした。
どうやらお父様が勝ったようで、先に私の前に立った。私をギュッと抱きしめて、良かった、リディアが元気そうだ、とため息交じりで言う。
心配していたのはこっちなのに、と思うと苦笑してしまう。
お父様が体を離すと、入れ替わりにトーマス様が私の体に腕を回してきた。ぎょっとしたけど、すぐさまお父様が割り込んでくれた。
「もう婚約しているのだから、いいじゃないですか」
トーマス様にお父様が言い返した。
「まだ、仮だ。たとえ仮でなくても駄目だけどな」
仮、とは一体何でしょうか。
私は二人から少し離れた。
「王都での話合いの内容を、詳しく教えてもらえますか」
それから、修道院に来ていたベラさんと、ケイトたちも呼んで、別室に移動した。
「まずは公爵家での話し合いについてだが、すぐに話は纏った。トーマスがリディア以外とは結婚しないと脅したのでね」
トーマス様がニコッとして追加した。
「その前に、両親は両手を挙げて賛成していましたよ。どうも母の末の弟にあたる叔父が、アリス夫人に憧れていた、多くの男の一人だったようです」
お父様の片方の眉がグイッと持ち上がった。未だにお母様のことで、焼き餅を焼くのかと、呆れてしまった。
ベラさんは笑っている。
「リディアはアリスそっくりだもの。今から花が咲くように、ぐんぐん綺麗になるわ。先に婚約者を決めておいてよかった。大揉めせずに済むわ」
お父様は私の方に身を乗り出した。
「こいつで、本当にいいのか? まあ、仮だし、リディアの気が変わったら、すぐに破棄できるようにしたからいいけど」
「その、仮っていうのは何?」
私が尋ねると、ケイトとダリアも身を寄せてきた。
「陛下が、リディア本人の口から聞くまで、婚約を仮とすると言い出したんだ。あきらめの悪い奴だ」
多分陛下は、ユーリ殿下にぞっこんの私しか知らないから、そんな条件を出すのだろう。どれだけユーリ殿下に目が眩んでいたか、よくわかって恥ずかしい。
「トーマスがすかさず追記を要求したんだ。リディアがトーマスとの婚約を望むと言えば、婚約を認める、だったな」
ロイが、抜け目無いな、とトーマス様の背中を叩いた。
「じゃあリディアとトーマスの婚約については、うまく纏ったわけだ」
そう確認するロイに頷いてから、お父様が私の手を取った。
「公爵家との書類には、リディアが考えを変えたら、速やかに婚約を解消すること、と一筆入れさせたよ」
驚いた。私にだけ、なんて都合の良い契約だろう。
「どういう理由で、そんな話になったの?」
「そりゃあ、皇族に翻弄され、悪人に虐げられ、これだけひどい目に遭ったんだ。今は正しい判断ができないかもしれない。だから、特約付きにしてもらった」
トーマス様は私の手を両手で握った。目が懇願している。久しぶりにのぞき込んだ彼の目は、相変わらず綺麗で引き込まれそうだ。それが少し潤んでキラキラしていて、私はその目に顔を近づけていったようだ。
ロイが、私の肩を掴んで止めた。
「こいつの目は物騒なんだ。婚約まで、見つめるの禁止」
確かに無心に近付いてしまった。あり得ない距離まで、顔を寄せてしまったみたい。
「男がこうなると、容赦なくパンチを見舞うくせに、今のはわざとやってただろ。あわよくばキスしようとか思ってた? 自粛しないと、速攻で婚約解消かもな」
ロイが脅すと、トーマス様はきちんと座り直して、真面目な顔に戻った。さっきのすがるような目は、演技!
ダリアがくすくす笑っている。
「仮だって一応婚約者だもの。もう少し大目に見てあげないと、かわいそうだわ」
「ですよね。ありがとう。応援されたのは、初めてな気がする」
トーマス様が嬉しそうに、ダリアに話しかける。その様子を見ていたら、ザワッと胸が騒いだ。
トーマス様がダリアと笑っているのが、嫌みたい。自分の気持ちに驚いてしまった。だってダリアなのに。
そう思っても、美しくてはかなげなダリアと、精悍な雰囲気のトーマス様は非常にお似合いに見える。トーマス様の黒髪には、ダリアの銀色の髪の方が、私の見栄えのしない茶色い髪よりしっくりするだろう。
考えれば考えるほど、嫌な気分になっていく。
そんな私の肩に、そっと手を置いたのはベラさんだった。私の髪の毛をすっと触って、少し梳きなおしましょうかと言って、部屋から連れ出してくれた。
ベラさんは、女性用の控え室に移動して、私の髪の毛を梳きなおしてくれた。
「リディア、トーマス様の事を本気で好きになっているのね。焼きもち妬くのは、初めてかしら」
私はびっくりして、そんな事無いと言おうとしたけど、ベラさんは私の髪を編みながら何か考えていて、続けて言った。
「ラリーから聞いた話によると、ユーリ殿下は婚約中に、大っぴらに浮気していたそうね。その時は妬かなかったの?」
そう言われてもう一度びっくりした。ユーリ様に対しては、こんな苦い思いを感じたことはない。腹立たしくて、こちらを振り向かせようと躍起になっただけだ。
トーマス様に対しては、他の女性と笑い合っているだけなのに、胸の中がよじれるような気分になっている。
自分が今度は本気で恋をしているのだと、気付かされてしまった。
そうしたら急に心細くなってきて、溜息が漏れた。
「ねえ、恋愛の初期にはよくあることよ。でも、その後もずっとあるのよね。相手の事を好きな限り、嫉妬とは長い付き合いになるわ」
「べラさんでもそうなんですか? あんなに一途に愛されているのに」
「あら、あんなに一途に愛されている、リディアに言われたくないわ」
二人で苦笑いしてしまった。私から見たら、どこにあの愛を疑う余地があるのだ、と言いたい。その同じことをベラさんも私に対して思っているわけだ。
そんな私を見て、ダリアはくすっと笑った。
「大丈夫よ。もうあきらめたから。でもあなたの父親は、最高の男よ。リディアも異論はないでしょ」
「そうだわね。最高の父親だとは、ずっと思っていたけど、最近それにも気付いたところよ」
ケイトが、親離れしたってことかなと言い、それから羨ましいと唸った。
「最高の男が父親って、めったにない幸運なのに、同スペックで同レベルに溺愛してくれる男が、婚約者になるなんて、この幸せ者」
そう言って、脇腹をくすぐられ、私は止めてよと笑いながら逃げた。
ケイトの言葉に目が覚めたような気分だった。自分は幸運なのだと、この時自覚した。
そして、お父様たちがここを発って七日後、二人は無事に帰って来た。外部棟に詰めている女性騎士から知らせを受けて、私はすぐに外部棟に向かった。
「リディア、変わりは無いか?」
お父様が駆け寄って来る。その前にトーマス様が飛び出した。
先を争って、二人は軽く揉め、その様子をロイがやれやれと言いながら眺めている。
すごく平和な眺めで、私はほっとした。
どうやらお父様が勝ったようで、先に私の前に立った。私をギュッと抱きしめて、良かった、リディアが元気そうだ、とため息交じりで言う。
心配していたのはこっちなのに、と思うと苦笑してしまう。
お父様が体を離すと、入れ替わりにトーマス様が私の体に腕を回してきた。ぎょっとしたけど、すぐさまお父様が割り込んでくれた。
「もう婚約しているのだから、いいじゃないですか」
トーマス様にお父様が言い返した。
「まだ、仮だ。たとえ仮でなくても駄目だけどな」
仮、とは一体何でしょうか。
私は二人から少し離れた。
「王都での話合いの内容を、詳しく教えてもらえますか」
それから、修道院に来ていたベラさんと、ケイトたちも呼んで、別室に移動した。
「まずは公爵家での話し合いについてだが、すぐに話は纏った。トーマスがリディア以外とは結婚しないと脅したのでね」
トーマス様がニコッとして追加した。
「その前に、両親は両手を挙げて賛成していましたよ。どうも母の末の弟にあたる叔父が、アリス夫人に憧れていた、多くの男の一人だったようです」
お父様の片方の眉がグイッと持ち上がった。未だにお母様のことで、焼き餅を焼くのかと、呆れてしまった。
ベラさんは笑っている。
「リディアはアリスそっくりだもの。今から花が咲くように、ぐんぐん綺麗になるわ。先に婚約者を決めておいてよかった。大揉めせずに済むわ」
お父様は私の方に身を乗り出した。
「こいつで、本当にいいのか? まあ、仮だし、リディアの気が変わったら、すぐに破棄できるようにしたからいいけど」
「その、仮っていうのは何?」
私が尋ねると、ケイトとダリアも身を寄せてきた。
「陛下が、リディア本人の口から聞くまで、婚約を仮とすると言い出したんだ。あきらめの悪い奴だ」
多分陛下は、ユーリ殿下にぞっこんの私しか知らないから、そんな条件を出すのだろう。どれだけユーリ殿下に目が眩んでいたか、よくわかって恥ずかしい。
「トーマスがすかさず追記を要求したんだ。リディアがトーマスとの婚約を望むと言えば、婚約を認める、だったな」
ロイが、抜け目無いな、とトーマス様の背中を叩いた。
「じゃあリディアとトーマスの婚約については、うまく纏ったわけだ」
そう確認するロイに頷いてから、お父様が私の手を取った。
「公爵家との書類には、リディアが考えを変えたら、速やかに婚約を解消すること、と一筆入れさせたよ」
驚いた。私にだけ、なんて都合の良い契約だろう。
「どういう理由で、そんな話になったの?」
「そりゃあ、皇族に翻弄され、悪人に虐げられ、これだけひどい目に遭ったんだ。今は正しい判断ができないかもしれない。だから、特約付きにしてもらった」
トーマス様は私の手を両手で握った。目が懇願している。久しぶりにのぞき込んだ彼の目は、相変わらず綺麗で引き込まれそうだ。それが少し潤んでキラキラしていて、私はその目に顔を近づけていったようだ。
ロイが、私の肩を掴んで止めた。
「こいつの目は物騒なんだ。婚約まで、見つめるの禁止」
確かに無心に近付いてしまった。あり得ない距離まで、顔を寄せてしまったみたい。
「男がこうなると、容赦なくパンチを見舞うくせに、今のはわざとやってただろ。あわよくばキスしようとか思ってた? 自粛しないと、速攻で婚約解消かもな」
ロイが脅すと、トーマス様はきちんと座り直して、真面目な顔に戻った。さっきのすがるような目は、演技!
ダリアがくすくす笑っている。
「仮だって一応婚約者だもの。もう少し大目に見てあげないと、かわいそうだわ」
「ですよね。ありがとう。応援されたのは、初めてな気がする」
トーマス様が嬉しそうに、ダリアに話しかける。その様子を見ていたら、ザワッと胸が騒いだ。
トーマス様がダリアと笑っているのが、嫌みたい。自分の気持ちに驚いてしまった。だってダリアなのに。
そう思っても、美しくてはかなげなダリアと、精悍な雰囲気のトーマス様は非常にお似合いに見える。トーマス様の黒髪には、ダリアの銀色の髪の方が、私の見栄えのしない茶色い髪よりしっくりするだろう。
考えれば考えるほど、嫌な気分になっていく。
そんな私の肩に、そっと手を置いたのはベラさんだった。私の髪の毛をすっと触って、少し梳きなおしましょうかと言って、部屋から連れ出してくれた。
ベラさんは、女性用の控え室に移動して、私の髪の毛を梳きなおしてくれた。
「リディア、トーマス様の事を本気で好きになっているのね。焼きもち妬くのは、初めてかしら」
私はびっくりして、そんな事無いと言おうとしたけど、ベラさんは私の髪を編みながら何か考えていて、続けて言った。
「ラリーから聞いた話によると、ユーリ殿下は婚約中に、大っぴらに浮気していたそうね。その時は妬かなかったの?」
そう言われてもう一度びっくりした。ユーリ様に対しては、こんな苦い思いを感じたことはない。腹立たしくて、こちらを振り向かせようと躍起になっただけだ。
トーマス様に対しては、他の女性と笑い合っているだけなのに、胸の中がよじれるような気分になっている。
自分が今度は本気で恋をしているのだと、気付かされてしまった。
そうしたら急に心細くなってきて、溜息が漏れた。
「ねえ、恋愛の初期にはよくあることよ。でも、その後もずっとあるのよね。相手の事を好きな限り、嫉妬とは長い付き合いになるわ」
「べラさんでもそうなんですか? あんなに一途に愛されているのに」
「あら、あんなに一途に愛されている、リディアに言われたくないわ」
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