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第四章 ジョナサンとクロスの謎
影との会話
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3人とも4日間の粗食のせいで痩せていたけど、気持ちは盛り上がりまくっていた。未来は明るい、と信じられるから。
それに今からお昼ご飯なのだ。もう、うれしくてたまらない。
薄いスープにパンでも、三食出るだけでありがたい。
それは思った通りだった。温かいスープがいただける。例え野菜クズしか入っていなくても、その温かさと野菜の滋味が、心と胃を満たしてくれた。それにパンも。更には紅茶まであるなんて。
だから食後の祈りには、心からの感謝を込めた。
神よ。今日の糧に感謝します。パン屑ひとつまみも、紅茶のひとしずくたりとも残したりしません。
ケイトとダリアも満面の笑みを浮かべている。ここにいる人々の中で、今一番幸せなのは私たちだ。
部屋に戻ると、早くもクックが窓辺に待機していた。クックの胸には羽と同じように見える小さな袋が下げられていた。
外してみると、中には飴が6個入っていた。
私達はクックに向かって感謝の言葉を捧げた。
そして早速飴を舐めながら、手紙を開いてみた。
手紙は見たことがないくらい薄い紙に書かれていた。一言、(魔法の薬を塗って)と書かれている。
面会室でお父様から渡された、小瓶の中身を紙に垂らすと、字が浮かび上がった。
紙は細かい字でみっちりと埋められている。
「デザートを楽しみにしていて、だって。本当に私たちの元まで届くのかしら」
「どこかへ横流しされそうね」
二人は期待していないようで、遠い目をしている。
それから先は、私が見た夢の話についてだった。
お父様の友人ジョナサンが、17年もの昔に、この修道院に忍び込んで、行方不明になったそうだ。
もし再び、その男が夢に現れる事があれば、何があったのか聞いて欲しい、と書かれていた。
この手紙の内容と、独房での経験を話すと、二人はてんでに推理を話し始めた。
ケイトは、殺されてどこかに埋められた幽霊が、恨んで出てきたのだと言う。
ダリアは、死んでしまったのに気がついていないんじゃないの、と言う。
私が見た影は、恨めし気ではなかった。
なんだか自分の姿に、慣れていないように見えたのだ。そう言ったら、ケイトがそれだ、と大声を出した。
「知人に似ているリディアを見て、突然記憶を取り戻したんじゃない。それで幽霊の状態に気付いて驚いたのよ」
「ええ、そうね。そんな感じだった。必死に何か言おうとして、散らばってしまっていたもの」
ダリアがこわごわと聞いてきた。
「ねえ。怖くなかったの」
「初めは怖かったわよ。でも、母の名を言うのだもの。正体を確かめたくて、気合を入れたの。頑張れたのはダリア達が譲ってくれた飴のおかげよ」
照れる二人に、私はもう一度感謝の言葉を述べた。
「その影は、独房にしか出ないのかな。もしそうなら、また独房に入らないと会えないよね」
ケイトに言われて、初めてそれに思い至った。お父様の為とはいえ、もう一度あそこに入りたくは無い。絶対に嫌だ。
ところが、それは杞憂に終わった。その夜、影が105号室に現れたのだ。
パチッと目が覚めた私は、いつものあれだ、とすぐに気付いた。ベッドに横たわったまま、頭だけ動かして室内を見回すと、影がそこにいた。
影は最初の日とは比べ物にならないくらい濃くなっている。
私はゆっくりと体を起こし、影の方を向いた。
「ジョナサンなの? ラリーの友人の?」
影が頭を縦に振る。その動きで、影がまたばらけてしまう。
「ゆっくりと動いてね。ジョナサン。私はラリーとアリスの娘のリディアよ」
今度はゆっくりと影が頷いた。
「父から、何があったか聞いておいてくれと頼まれたの。話すことは出来る?」
「あ、クロ……で……る」
クロスかしら。
「クロスを退けて欲しいの?」
影がブンブンと首を振り、またバラけた。そのバラけた姿のまま、近寄ってくる。父の友人だと分かっても、その姿は怖い。
影の手らしきものが、私に向かって突き出された。その先が、手のひらだろう。私はクロスを首から外すと、こわごわとその上に垂らした。手がクロスを掴むと、影の濃さと質量が増したように見えた。
「わ……ジョナ‥ン。クロス……ちから……くる」
「クロスが力を与えているのかしら。確かに、輪郭がしっかりしたわね。どうしてなの?」
「わか……ない」
意思の疎通ができるようになったけど、難しい言葉は無理そうなので、質問を練った。
「いつからここに居るの?」
「わか…ら……」
「あなたは幽霊なの?」
「わか…..ない」
いきなり横から声が掛けられた。
ケイトだった。
「今何歳?」
「じゅ…きゅ」
「やはり、自分が死んだことに、やっと気付いたのよ。だから本人の意識は死んだときの、十七年前のままなのだわ」
「しんだ?」
そう言って、影が動揺した。ブワッと広がったり、戻ったりしている。
「大丈夫よ。一緒に考えるから、ちょっと落ち着いて」
そう言って影に寄り添ったのはダリアだ。影の動きが緩くなった。
「ねえ、いつの間に起きていたの。気が付かなかったわ。それに、あなた達にも影は見えるの?」
「うん、なんだか変にすっきり目が覚めたの。そうしたらリディアが話し始めたから、様子を見ていた」
ケイトの言葉に、ダリアが私もよ、と言った。
「影の手がクロスを包み込んだ途端に濃くなって、実体化した感じがするの。だから、クロスが影に影響を与えているのは確かだと思う。そのクロス、どこで手に入れたの?」
「近くの街の雑貨屋よ。どこかの屋敷から整理品として出て来た物だそうよ。来歴は解らないって」
「それ、外にいる御父上様に調べてもらったほうがいいと思う」
そう言ってから、ダリアは影のジョナサンに向き合った。
「今は痛かったり、苦しかったりしないの?」
「だいじょーぶ」
「どこからここに来たの?」
「クロス……ひかる…見える」
ダリアがクロスを受け取り、目の前にかざした。ぶらぶら揺れるクロスから光は出ていない。
「これが光って見えるの?」
影が頷く。
ダリアが私にクロスを返してきた。クロスを手のひらに乗せてから、指でそっとつまみ上げた。
「このささやかなクロスに、何か意味があるのかしら。実は聖遺物だったり、とか?」
クロスはごくありきたりで、しかもそんなに古くも無さそう。ぶら下がっている干からびた種のようなチャームが、珍しいといえば言えるけど。私はチャームをつまんで、指先でこすってみた。
ダリアが、がたっと大きく後ろに下がり、ケイトにぶつかった。何が、とダリアを見て、その視線の先を追った。
影に陰影がついて、目鼻が見えてきていた。ちょうど炭で描かれた人物像のような感じ。髪の毛もわかる。肌に近い色なので、金髪や薄い茶色の髪なのだろう。私はこわごわと影に尋ねた。
「あなたの見え方が変わったわ。今何が起こったの?」
「光が強くなって、力が僕の中に流れ込んで来た。そうしたら意識がはっきりしたみたいだ。それにこの手や身体は、色が無いけれど、僕が覚えている僕の体だ」
驚くことに、話し方も明らかに変わっている。片言ではなく普通に話せているし、ちゃんと唇が動いている。モノクロの人間は、物珍し気に自分の体を見回している。
「よかった。普通に話せるのね。じゃあ、十七年前あなたに何があったのか教えて」
「それは……それは、わからないみたいだ」
「どういうこと? 忘れたの?」
「修道院の敷地に忍び込んだのは覚えているけど、その後何があったのか全然分からない」
「じゃあ、今までどこにいたの?」
「それもわからない。光が見えたので、それに向かって歩いたんだ。それに僕にとったら、ここに忍び込んだのは十七年前ではなく、数日前なんだ」
それに今からお昼ご飯なのだ。もう、うれしくてたまらない。
薄いスープにパンでも、三食出るだけでありがたい。
それは思った通りだった。温かいスープがいただける。例え野菜クズしか入っていなくても、その温かさと野菜の滋味が、心と胃を満たしてくれた。それにパンも。更には紅茶まであるなんて。
だから食後の祈りには、心からの感謝を込めた。
神よ。今日の糧に感謝します。パン屑ひとつまみも、紅茶のひとしずくたりとも残したりしません。
ケイトとダリアも満面の笑みを浮かべている。ここにいる人々の中で、今一番幸せなのは私たちだ。
部屋に戻ると、早くもクックが窓辺に待機していた。クックの胸には羽と同じように見える小さな袋が下げられていた。
外してみると、中には飴が6個入っていた。
私達はクックに向かって感謝の言葉を捧げた。
そして早速飴を舐めながら、手紙を開いてみた。
手紙は見たことがないくらい薄い紙に書かれていた。一言、(魔法の薬を塗って)と書かれている。
面会室でお父様から渡された、小瓶の中身を紙に垂らすと、字が浮かび上がった。
紙は細かい字でみっちりと埋められている。
「デザートを楽しみにしていて、だって。本当に私たちの元まで届くのかしら」
「どこかへ横流しされそうね」
二人は期待していないようで、遠い目をしている。
それから先は、私が見た夢の話についてだった。
お父様の友人ジョナサンが、17年もの昔に、この修道院に忍び込んで、行方不明になったそうだ。
もし再び、その男が夢に現れる事があれば、何があったのか聞いて欲しい、と書かれていた。
この手紙の内容と、独房での経験を話すと、二人はてんでに推理を話し始めた。
ケイトは、殺されてどこかに埋められた幽霊が、恨んで出てきたのだと言う。
ダリアは、死んでしまったのに気がついていないんじゃないの、と言う。
私が見た影は、恨めし気ではなかった。
なんだか自分の姿に、慣れていないように見えたのだ。そう言ったら、ケイトがそれだ、と大声を出した。
「知人に似ているリディアを見て、突然記憶を取り戻したんじゃない。それで幽霊の状態に気付いて驚いたのよ」
「ええ、そうね。そんな感じだった。必死に何か言おうとして、散らばってしまっていたもの」
ダリアがこわごわと聞いてきた。
「ねえ。怖くなかったの」
「初めは怖かったわよ。でも、母の名を言うのだもの。正体を確かめたくて、気合を入れたの。頑張れたのはダリア達が譲ってくれた飴のおかげよ」
照れる二人に、私はもう一度感謝の言葉を述べた。
「その影は、独房にしか出ないのかな。もしそうなら、また独房に入らないと会えないよね」
ケイトに言われて、初めてそれに思い至った。お父様の為とはいえ、もう一度あそこに入りたくは無い。絶対に嫌だ。
ところが、それは杞憂に終わった。その夜、影が105号室に現れたのだ。
パチッと目が覚めた私は、いつものあれだ、とすぐに気付いた。ベッドに横たわったまま、頭だけ動かして室内を見回すと、影がそこにいた。
影は最初の日とは比べ物にならないくらい濃くなっている。
私はゆっくりと体を起こし、影の方を向いた。
「ジョナサンなの? ラリーの友人の?」
影が頭を縦に振る。その動きで、影がまたばらけてしまう。
「ゆっくりと動いてね。ジョナサン。私はラリーとアリスの娘のリディアよ」
今度はゆっくりと影が頷いた。
「父から、何があったか聞いておいてくれと頼まれたの。話すことは出来る?」
「あ、クロ……で……る」
クロスかしら。
「クロスを退けて欲しいの?」
影がブンブンと首を振り、またバラけた。そのバラけた姿のまま、近寄ってくる。父の友人だと分かっても、その姿は怖い。
影の手らしきものが、私に向かって突き出された。その先が、手のひらだろう。私はクロスを首から外すと、こわごわとその上に垂らした。手がクロスを掴むと、影の濃さと質量が増したように見えた。
「わ……ジョナ‥ン。クロス……ちから……くる」
「クロスが力を与えているのかしら。確かに、輪郭がしっかりしたわね。どうしてなの?」
「わか……ない」
意思の疎通ができるようになったけど、難しい言葉は無理そうなので、質問を練った。
「いつからここに居るの?」
「わか…ら……」
「あなたは幽霊なの?」
「わか…..ない」
いきなり横から声が掛けられた。
ケイトだった。
「今何歳?」
「じゅ…きゅ」
「やはり、自分が死んだことに、やっと気付いたのよ。だから本人の意識は死んだときの、十七年前のままなのだわ」
「しんだ?」
そう言って、影が動揺した。ブワッと広がったり、戻ったりしている。
「大丈夫よ。一緒に考えるから、ちょっと落ち着いて」
そう言って影に寄り添ったのはダリアだ。影の動きが緩くなった。
「ねえ、いつの間に起きていたの。気が付かなかったわ。それに、あなた達にも影は見えるの?」
「うん、なんだか変にすっきり目が覚めたの。そうしたらリディアが話し始めたから、様子を見ていた」
ケイトの言葉に、ダリアが私もよ、と言った。
「影の手がクロスを包み込んだ途端に濃くなって、実体化した感じがするの。だから、クロスが影に影響を与えているのは確かだと思う。そのクロス、どこで手に入れたの?」
「近くの街の雑貨屋よ。どこかの屋敷から整理品として出て来た物だそうよ。来歴は解らないって」
「それ、外にいる御父上様に調べてもらったほうがいいと思う」
そう言ってから、ダリアは影のジョナサンに向き合った。
「今は痛かったり、苦しかったりしないの?」
「だいじょーぶ」
「どこからここに来たの?」
「クロス……ひかる…見える」
ダリアがクロスを受け取り、目の前にかざした。ぶらぶら揺れるクロスから光は出ていない。
「これが光って見えるの?」
影が頷く。
ダリアが私にクロスを返してきた。クロスを手のひらに乗せてから、指でそっとつまみ上げた。
「このささやかなクロスに、何か意味があるのかしら。実は聖遺物だったり、とか?」
クロスはごくありきたりで、しかもそんなに古くも無さそう。ぶら下がっている干からびた種のようなチャームが、珍しいといえば言えるけど。私はチャームをつまんで、指先でこすってみた。
ダリアが、がたっと大きく後ろに下がり、ケイトにぶつかった。何が、とダリアを見て、その視線の先を追った。
影に陰影がついて、目鼻が見えてきていた。ちょうど炭で描かれた人物像のような感じ。髪の毛もわかる。肌に近い色なので、金髪や薄い茶色の髪なのだろう。私はこわごわと影に尋ねた。
「あなたの見え方が変わったわ。今何が起こったの?」
「光が強くなって、力が僕の中に流れ込んで来た。そうしたら意識がはっきりしたみたいだ。それにこの手や身体は、色が無いけれど、僕が覚えている僕の体だ」
驚くことに、話し方も明らかに変わっている。片言ではなく普通に話せているし、ちゃんと唇が動いている。モノクロの人間は、物珍し気に自分の体を見回している。
「よかった。普通に話せるのね。じゃあ、十七年前あなたに何があったのか教えて」
「それは……それは、わからないみたいだ」
「どういうこと? 忘れたの?」
「修道院の敷地に忍び込んだのは覚えているけど、その後何があったのか全然分からない」
「じゃあ、今までどこにいたの?」
「それもわからない。光が見えたので、それに向かって歩いたんだ。それに僕にとったら、ここに忍び込んだのは十七年前ではなく、数日前なんだ」
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