似合わない2人が見つけた幸せ

木蓮

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 ドレスを着たミレイの姿を目にしたレックスは、その輝くような美しさに声を失った。

「きれいだ……」
「ふふ、ありがとうレックス。あなたも素敵よ」

 ミレイは光を反射する純白の生地の上に自分の色である金色の透けるレースを重ねたドレスをまとっている。細いウェストを金のリボンで強調し、裾と袖はやわらかいフリルを重ねてふんわりとふくらませた姿は、まるで太陽の光を浴びて燦然と輝く大輪の白バラのようだ。艶やかなはちみつ色の髪は結い上げて煌めく金のリボンでまとめ、レックスの瞳よりも少し濃く見える水色のイヤリングとネックレスで瑞々しい白い肌を引き立てている。
 レックスも彼女に合わせて白と金の服にしたが、彼女の隣りに立つと花を引き立てる風景に見えるかもしれない。

(さすがはミレイだ……。こんなに美しい彼女をエスコートできるなんて、俺は幸せ者だ)

 レックスが見とれているとミレイはにっこり笑って手を差し出してきた。我に返ったレックスがミレイをエスコートして会場に入ると、皆の注目が集まりほうっと感嘆のため息が漏れた。
 その反応に気を良くしたレックスが会場を見回すと、ふと隅の方に目を惹きつける青が見えて。無意識にそちらを見たレックスはぎょっとした。

「ユーラ……っ! あいつっ、何だってあんな色を着ているんだ。それに隣にいる男はどこの誰だ?」
「あら、あそこにいるのはシューラス様ね。まあ、素敵な青色。お隣の彼と良く似合っているわ」

 レックスが無意識にもらした呟きにミレイが無邪気に微笑む。感心しているミレイを否定するわけにもいかず、レックスは勝手なことをしたユーラへの怒りをぐっとこらえた。

(くそっ、ユーラの奴、あれほど言ったのに。よりにもよってあんな田舎臭い色とみすぼらしいデザインなんかにしやがって!! あれじゃあ流行も知らないのだと俺が恥をかくじゃないか! それに、あの男は誰だ!? あいつがあのつぎはぎだらけのドレスを作ったのか!?)

 ユーラが身にまとっているのは、レックスの好みとも社交界の流行からも外れたけばけばしい色にやたらと装飾を着けた奇抜なドレスだ。レックスにはとてもドレスと呼びたくない最低最悪の代物に見える。
 しかし、いつも憂鬱な顔をしているユーラは男に向かって微笑んでいる。その心から幸せそうに見える笑みは、レックスがどんなに頑張っても美しくならなかったユーラを輝かせていた。
 レックスが憎しみをこめてにらんでいると、ふとこちらを向いたユーラと目が合ったが。彼女は気づかなかったというようにすっと目をそらした。
 その傲慢な態度にかっとなって踏み出そうとすると、ミレイに強く腕を引かれた。

「レックス。私、お兄様たちと話をしたいわ。皆あなたと会えるのを楽しみにしていたのよ、一緒に来て」
「あ、ああ。もちろんだよ……」

 後できつく叱ってやると内心憎悪をたぎらせながらも、レックスはミレイに連れられて第2王子グラディスとミレイの兄の元へ向かった。
 王子はミレイの姿を見ると目を細めた。

「やあ、ミレイ。私のお姫様は今夜は一段ときれいだね。まるで光をまとった女神の御使いが現れたのかと思ったよ」
「ありがとう、グラディス。レックスとテニング伯爵家は私の好きなイメージをいつも叶えてくれるの! どう? 私のこと見直した?」
「ああ、もちろんだ。私の小さな妖精姫はいつの間にか美しい光の精霊になったのだとやっとわかったよ。今夜は君から目を離せそうにない。……テニング伯爵令息、私のミレイのお願いを叶えてくれてありがとう」

(2人はとても仲が良いんだな。いや、でも、まさか。グラディス殿下には婚約者のアクス公爵令嬢がいらっしゃるのだし……)

 甘えるように第2王子を見上げるミレイととろけるような笑みを浮かべて答える王子が、まるで両想いの恋人のように見えたが。レックスは慌てて不敬な考えを消した。すると、にこやかに2人を見守っていたミレイの兄が口を挟む。

「私からも妹をよろしく頼むよ、レックス君。君も知っているかと思うが、ミレイは希少なギフト持ちだからね。こう見えて理想の男性像・・・・・・が高い妹のお眼鏡に叶う上に、愛して献身的に尽くしてくれる婚約者となると、これがなかなか難しくてね。いつも妹を大切にしてくれる君になら、安心して任せられるよ。2人の幸せを願って君との婚約を解消してくれたシューラス嬢にも感謝しないとね」
「なっ……!? 婚約を解消した?」

 途中で王子に意味深なまなざしを向けたミレイの兄は、さらりととんでもない爆弾発言をした。
 思わずレックスが身分が上の人々に囲まれていることを忘れて驚くと、ミレイの兄は不思議そうに目をしばたたかせた。
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