欲にまみれた楽しい冒険者生活

小狸日

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拓は直ぐに次の目的地へと行きたかったが、エチゴがもう一日泊まる様に提案する。

「自分が思っている以上に疲れが溜まっているはずです。
 この様な時こそ、心身共に余裕を持った方が良いです。」


せっかくなので、皆で町を散策していると、ルーカスとハックが髪の色を変える魔法薬や帽子や眼帯、傷跡のメイク道具等を購入しようとする。
拓が何でそんな物を買おうとしているのか尋ねると

「俺達、謎の冒険者としてデビューするんです。」

ハックが嬉しそうに答える。
他のメンバー全員が拓を見ると、何故か嬉しそうな顔。直ぐにガラが2人に話しかける。

「ルーカス、ハック。冒険者は危険が付きまとう。貴族が気楽に行う事ではない。
 それから、謎を付けるのは止めた方が良い。」
「そうか、拓さんの真似をして『謎』を付けたいと思いましたが、そこまで真似るは良く無いですよね。」
「何かオリジナルの言葉を考えた方が良いか。」

ガラが言いたいのはそういう事ではなく、そんなセンスの無さを前面に出すのは恥ずかしいと言いたかったのだが・・・それ以前に冒険者というのが問題だ。

「大体、冒険者をやっていて人物不明なんてありえねぇぞ。
 それ以前に、お前達は俺よりもずっと弱い。そんなんで冒険者が務まる訳ねぇだろ。
 冒険者を舐めるな。」

レオの言葉で2人は自分達が舞い上がり、実力が足りないことを自覚した。
実際はレオはAランクで他の冒険者や騎士団と比べても高い実力を持っているのだが、そこは誰も突っ込まない。
本人はOZとして今の実力では不十分だと思っていて、自分より弱い2人を心配していた。
レオは拓の顔を見て、不思議に思って聞いてみる。

「で、拓。お前は何を嬉しそうにしているんだ?」
「2人が、凄くセンスの良い呼び方を考えていると思ってね。
 正直ここに居るメンバーって、ちょっとセンスがズレていると思っていたから。
 でも、確かに冒険者は危険と隣り合わせだから止めた方が良いかな。
 この先、強くなったとしての話だけど、謎の剣士とかなら有りじゃないか?」

拓の言葉を聞いて、レオだけでなく全員が呆れていた。
ズレているのは拓だと言いたかったが、そこは言葉を飲み込んでいた。
そして大人としてルーカスとハックをまともな方向に修正しなければならないと思わずにはいられなかった。
ただ、拓はもう手遅れとして、周囲に悪い影響を及ぼさない様にするしか無いというのが全員が無言のまま一致した考えだった。
その後は、拓が余計な仮面や変な服を買おうとするのを、全員で止めていた。

美味しい食事を楽しみ、十分に疲れが取れた所で次の目的地へと進む。
途中の魔獣退治はルーカスがメインで行い、立ち寄る村ではハックが中心で治療を行っていた。

今日も村での仕事も終えテントで休んでいると、村に馬に乗った兵士達が駆け込んできた。

「大量の魔獣が発生した。兵が出るがここから逃げる準備をしろ。こちらに、エチゴ商隊は居ないか?」

エチゴとアルが兵士の方へと出る。

「OZ、クリームに討伐の討伐の協力を願う事は出来ないでしょうか。
 せめて怪我人の対応だけでも依頼したい。」

全員集まると兵士から状況を説明してもらう。
確認されている魔獣はベルゼ。空を飛ぶ1m位の魔獣。見た目は巨大なハエ。
毒と消化液で攻撃をし、人間や動物に卵を産み付け繁殖する。
ベルゼの毒で死ぬことは無いが、受けると麻痺させられ動けなくなる。
決して強力では無いが、繁殖力が異常に強い。
卵は1日も経たずに孵化し生きたまま宿主を貪り1週間もすると羽化して飛べるようになるため、大量発生してしまうと手に負えなくなる。
今回は、その大量発生が起きていた。
既に見張台からの連絡が途絶え、他の村や町からも人々が脱出し始めている。

「空を飛ぶ魔獣にどう対応するのですか?」
「臭いで地上付近に誘きよせて叩きます。」

ベルゼは強い匂いに引き寄せられる特性がある。
そして、卵を産み付けられ動物は切り裂いて卵を取り出すか、燃やすしか対処しようがなくなる。

「俺が1人で対応します。他の人は村の人の避難の手伝いを。」

拓は自分一人なら最悪逃げる事が出来ると判断したが、ガラとレオが拓の肩を掴む。

「俺達は拓の援護を行う。大丈夫だ。光波が使えればベルゼの毒や消化液は通用しない。」
「俺も手伝います。」

ルーカスが剣を掴んで、拓を見る。
しかし拓は首を横に振る。

「ルーカスは村人を安全に避難させるんだ。時間は俺達が作る。出来るな。」
「はい。」
「ハックは怪我人の対応を頼む。
 良いか質より数をこなせ。生かす事を一番に考えろ。
 命に別条がない状態なら、後は俺が対処する。」
「分かりました。」

ルーカスとハックは拓の言葉に頷く。
拓はジェニファーとロビンを皆から少し離れた所へ連れて行くと、必要なら使う様にと水と火属性のロッドを6本とも渡す。

「皆をお願いします。無理せず逃げる事を第1に考えて。」
「空を飛ぶ魔獣なら剣より魔法が有効よ。私達は1本づつ有れば大丈夫。」

ジェニファーとロビンはロッドを4本戻す。

「これは災害級よ。拓達の方こそ無理せずに気を付けて。」
「危険になったら逃げますよ。後で会いましょう。」

危険なのでダイフクを預けようとしたが、拓から離れようとはしなかった。
ジェニファーとロビンは拓と握手をすると、皆の所に戻り村人達の誘導を始めた。
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