異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日

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273自己犠牲

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歓声が治まるのを待って、ゲオルグ親方が俺の前にやって来て頭を下げる。

「拓殿、この度のロダン侯爵への計らいを本当に感謝する。
 どうか、この窯で造り上げた初めての陶磁器を受け取って欲しい。
 皆、精魂込めて作り上げた。私の目から見ても、最高の出来だと断言できる。」

しかし、並んだ作品は素人の俺が見ても凄いと思う。実際にウルトラアイで見ても綺麗なオーラを放っている。
魔道具の設置料としては、有り得ない品だ。

「拓殿、我が領地において名人と呼ばれる最高位の職人達の作品だ。彼等の気持ちを受け取って欲しい。」

この流れについて行けず戸惑っている俺に、ロダン侯爵までが勧めてくる。

「ありがとうございます。こちらの品は大切に使わせて頂きます。」

職人の方々のサプライズに感謝し、この素晴らしい作品を受け取った。


その日は、そのまま宴会に突入。
レオが中心になり、討伐して手に入れた魔獣の肉や山の幸を使って料理を用意してくれていた。
酒についてはセバスチャンが手配してくれたみたいで、ブルネリ公爵から差し入れがあった。

宴会の間、ロダン侯爵が挨拶に来てくれた後は、職人だけでなく殆どの人が俺に礼を言ってくる。
一息付いた所で、セバスチャンにどういう状況になっているのか確認すると

「拓様がロダン侯爵の『生殺与奪の権利』の用紙を燃やした事は、こちらの領民の方々に広まっています。
 合わせて、旦那様が資金援助を行うきっかけになった事も、ご存知の様です。」

「ロダン侯爵が領民に慕われているからの結果なんでしょうが、ちょっとした有名人ですね。」

「レオ様も会場の準備で料理の腕を振るい、有名人になられたみたいですね。」

レオの方を見ると、大勢の人に囲まれて料理を誉められていた。

「拓殿、歓談の所申し訳ないが少し良いだろうか。」

ゲオルグ親方が職人の1人を連れて、魔道具の設置予定についてたずねてきた。
話しを伺うと、職人達が自分の作品を焼きたくて待ちきれないらしい。
ゲオルグ親方達が作品を作っている間に、他の職人達も作り上げて乾燥させているそうだ。

「そうですね。今回で感覚はつかめたので、次はもっと早く設置できるでしょう。
 ただ、私では細かい所は判断付かないので、ゲオルグ親方に確認して頂く必要があります。
 ゲオルグ親方が時間を取れるなら、残り4つの取り付けは2日位でしょうか。」

「2日で設置できるのか。それは助かる。
 俺は何時でも都合が付く。拓殿が良ければ、明日の朝からでも良いだろうか。」

問題無いと伝えると、横にいた職人が礼をして離れて行った。

「慌ただしくてすまない。奴は明日からの予定を立てる為に戻って行った。
 決めておかないと、喧嘩になりそうなのでな。」

確かに、職人達が妙にソワソワしている。

「しかし、拓殿は『生殺与奪の権利』で権力を手に入れたいとは思わなかったのか。」

「いきなりですね。」

「いや、権利書を焼いたのが子供と聞いて、権利の事を理解していないのかと思っていたんだが、
 拓殿なら『生殺与奪の権利』の効力を十分理解できているだろう。それが気になってな。」

「疑問に思う事ですか?正直、領主としての権力を持ちたいかと言う意味では全く思わないです。
 そこまで、自己犠牲の精神は持ち合わせていませんよ。」

「何故、自己犠牲の精神になるんだ?」

「領主の知り合いはブルネリ公爵しか居ませんが、いつも大量の仕事に追われ、自由な時間も殆どありません。
 権力を使ってやりたい事は無いので、自由が奪われるだけで邪魔なだけですよ。
 ですので、自己犠牲の精神なんです。」

ゲオルグ親方が大笑いしている。何か可笑しい事を言っただろうか。

「ある意味、拓殿は凄いな。
 しかし、ここ最近のブルネリ公爵は非常に忙しいみたいだから仕方がないか。
 俺も噂で聞いただけだが、イルミネーションやガラス細工から始まり水晶の玉の普及に海上輸送の拡大。
 最近ではゼリーという食べ物の対応までしているそうだ。
 今度は、ロダン様がかかった病の治療法を広めて頂けるとか。
 正直、あの方でなければ、全てを対応するなんて出来ないだろう。」

ゲオルグ親方が上げていた話に俺が全て関わっている。ブルネリ公爵の多忙さは俺が原因なのか?
セバスチャンは、この話を聞いた後でもニコニコ笑っているだけだ。

「あと、要求されている食器500個も今回の陶磁器を作ったメンバーで行わせてもらう。
 窯の準備が終わったら、どんな食器が欲しいか相談させてくれ。」

ゲオルグ親方はそう言うと、職人達の所へ戻って行った。

「500個の陶磁器の要求元が拓ちゃんって気付いているんだな。
 それにしても、一般家庭で使う食器を名人が作ってくれるなんて凄いな。」

浩司がゲオルグ親方を見ながら笑っているが、こんな話は普通では有り得ないだろう。
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