憧れの悪役令嬢に転生したからと言って、悪役令嬢になれる訳では無い!!

来実

文字の大きさ
9 / 31

9.私、ドレスに溺れる

しおりを挟む

部屋に戻ると、早速お着替えだ。
貴族は忙しい。
朝昼晩の食事用のドレスと、同じく朝昼晩の部屋着、夜はナイトウエア、お茶会や、夜会などパーティーが行われるならそのドレス、お散歩するにも着替えが必要。

朝は着替え、昼も着替え、夜も着替え。

着替えるだけで一日終わるんじゃないの?ってくらい忙しく着替える。

着替えばかりの毎日にウンザリするけど、でもある意味楽しみだったりしている。

私は、ニーナが、右側のクローゼットに入れておくと言っていたことを思い出し、ドレスを物色することにした。

職業柄、色んなドレスを目にするのは楽しい。
クローゼットを開けると、豪華絢爛っ!派手派手ドレスがぎっしり収納されていた。

うわぁっ!!ドレスの宝石箱やっ!!
そんな鉄板ネタはさておき、片っ端からドレスを出して並べる

ずっしりとしたビジューがあしらわれたものや、タイトなシルエットで、体のラインが丸わかりなもの、これいつ着るの?ってくらい派手な色に染色されたもの……。


生地はものすごく上質なシルクの織地だ。
手に取るだけですぐ分かる。
キメ細やかで滑らかな質感の手触り。
光を淡く反射する上品なツヤ。

でも、胸元のビジューはやけに重い。
着たら息が詰まりそう。

仕立てはものすごくいいんだけど…。
なんでこんなに派手なの?

そもそも、このルーミエールの見た目と、ギャップがありすぎる衣装の数々だ。
もっとカワイイ系が好きなのかと思ったら、セクシー路線だったのか……。

まさか、これも使用人の嫌がらせで、発注のデザインと違うものが上がってきたりとか……。
考えすぎか。



きっとそのうち、パーティに出席しないといけなくなる日が来るかもしれない。
その時に、このドレス、私、着れるのか?

いや……無理だな……。

1着のドレスを手に取り、私は思った。
こんな胸元ぱっくり開いたドレスは、海外セレブが着るものよ。

そうだ!
どうせ着替えるくらいしか日中やることもないんだし、自分で作ればいんじゃね?!

うんうん。そうしよう!!

今まで、社畜として、先輩に小言を言われながらも、きらびやかなドレスをさんざん作って来たけど、自分で着る機会はもちろんなかった。

でも、今なら、好きなデザインを作って着たい放題じゃないかっ!!
先輩にお小言を言われることもなく、好き勝手できるのでは?

いやぁ~。
この世界の生活に唯一とも言える楽しみが出来た。
なんかもう、食事のこととか、使用人のこととか、正直面倒くさすぎる。

そうよ!悪役令嬢の世界なんだから、もっと自由に、ワガママに生きてもいいはずよねっ!

あれこれドレスを出していくと、何着か、淡い色の生地で仕立てられた、裾広がりのシンプルな装飾っけの無いドレスが見つかった。
明らかに、他のドレスとはテイストが違う。

「お懐かしいです」
その言葉の奥に、どこか優しい懐かしさが混じっていた。

「この屋敷に来てから、レオン様のお好みの物だから。とおっしゃって、送られてきたドレスをお召になっていらっしゃいましたが、ルミ様には、やはり、こちらの方がお似合いです……。」

きっとこれはルーミエールが、自身で持ってきたドレスだろう。飾り気は無いが、仕立ての良い上質な生地でできていた。

よしっ!!
手始めに、このルーミエールのシンプルなドレスを、パーティ用にアレンジしてみるのはどうだろうか?

そうすれば、この謎の派手派手ドレスを着なくても済みそうだ。レオンの好みというのは意外だが、私には恥ずかしくて着れないっ!

一応、自分の採寸をして、派手派手ドレスを片っ端から着てみる。サイズが合わないものや、丈がおかしいものなど、たまにヘンテコなものがあることもわかった。

サイズが合わないだけなら、手直しすれば着れるけど、このディテールの派手さはどうにもならない

派手派手ドレスを分解して、使えそうな素材を回収する。………でも、さすがに、ドレスを勝手に切り刻むのは、バレたらヤバそうだ。

ニーナには、反対されたが、そこはワガママ令嬢スキルを使って押し通した。

私は、日中は部屋に誰も入ってこないように。と指示した。
お茶の時間も、散歩の時間も、そんなの無視無視!

幸い、使用人は、来るなと言えば、全く中の様子を探ることなく、部屋の中のことはニーナが大概世話を焼いてくれた。

「コンコン」
ドアをノックする音が聞こえる
「何かしら?」

「少々お散歩されてはいかがでしょうか?」
使用人の1人が、ドアの向こうから声をかける。
数日過ごして気づいたことがある。
ニーナ以外の使用人は、名乗らずに要件を告げる
この家のルールなのか、使用人が声をかける時は『〇〇様。〇〇でございます』と、扉の前で呼びかけるのが基本だ。
だけど、私の元へは、その声掛けが無い。
名前を呼びたくないのか?礼を尽くすには値しないということか?
まぁ、理由はなんだっていい。

「こんな日差しの中で外に出る気は無いわ。」
そう述べると、使用人はその返事を聞いて、かしこまりました。と。去っていく。

さぁて、続き続きっ!

私の部屋は、部屋というより、小さなおうちみたいだ。寝室と、ダイニング、ドレスルーム。小さなお風呂場と、お茶とお菓子を用意するくらいのキッチンもあるし、別にこの空間から出なくても不自由はしない。
各所にそれぞれの入口もあるし、中で一続きに移動もできる。

私は、お裁縫ライフを満喫した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結】転生したら悪役令嬢だった腐女子、推し課金金策してたら無双でざまぁで愛されキャラ?いえいえ私は見守りたいだけですわ

鏑木 うりこ
恋愛
 毒親から逃げ出してブラック企業で働いていた私の箱推し乙女ゲーム「トランプる!」超重課金兵だった私はどうやらその世界に転生してしまったらしい。  圧倒的ご褒美かつ感謝なのだが、如何せん推しに課金するお金がない!推しがいるのに課金が出来ないなんてトラ畜(トランプる重課金者の総称)として失格も良い所だわ!  なりふり構わず、我が道を邁進していると……おや?キング達の様子が?……おや?クイーン達も??  「クラブ・クイーン」マリエル・クラブの廃オタク課金生活が始まったのですわ。 *ハイパーご都合主義&ネット用語、オタ用語が飛び交う大変に頭の悪い作品となっております。 *ご照覧いただけたら幸いです。 *深く考えないでいただけるともっと幸いです。 *作者阿呆やな~楽しいだけで書いとるやろ、しょーがねーなーと思っていただけるともっと幸いです。 *あと、なんだろう……怒らないでね……(*‘ω‘ *)えへへ……。  マリエルが腐女子ですが、腐女子っぽい発言はあまりしないようにしています。BLは起こりません(笑)  2022年1月2日から公開して3月16日で本編が終了致しました。長い間たくさん見ていただいて本当にありがとうございました(*‘ω‘ *)  恋愛大賞は35位と健闘させて頂きました!応援、感想、お気に入りなどたくさんありがとうございました!

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...