憧れの悪役令嬢に転生したからと言って、悪役令嬢になれる訳では無い!!

来実

文字の大きさ
17 / 31

17.ワインは程々に

しおりを挟む
「………。」
頭がぼーっとする
体は力が入らないし、顔は暑いし、なんかフワフワする。

意識が戻ると、どこかの個室のソファーの上で、レオンは無言で肩を貸してくれていた。

ルーミエールがアルコールに弱いなんて知らなかった……。
ワイン1杯ですよ?
確かに、食事の際も、一切のアルコール類は出されなかったな……。

私の意識が戻ってきたのに気づいたレオンが
「何か盛られたか?」
と聞いてきた

盛られる?
美味し過ぎるくらい美味しいワインのどこに?

「………?」

頭に、はてなマークを付けて首を軽く傾けると、レオンはグラスに入ったお水を口元に差し出した
「飲めるか?」

グラスに手を添え、少しづつお水を飲む
ぼーっとした思考と視界は、少しだけクリアになった。

そして、少しクリアになった思考は
レオンと一緒にいたあの女性はどうしたんだろ……。
という心のモヤモヤを掘り返した

「はぁ……」
レオンは悩ましげにため息をつくと、
「帰ろう。立てるか?」
と言って、手を差し出す。

力弱くその手を握り、立ち上がろうとして、よろめいた所を、パッとレオンが支えてくれた

「あ……ありが…」

返事を返すまもなく、腕を首に回させる。

ええっ!!
「いや。ちょっ……!」
動揺で言葉にならない。

「大人しくしていろ。」
レオンはそう言いながら、私の顔を自身の肩に埋めるように抱き抱えた。

力が入らない私は、抵抗することも出来ず、大人しくレオンの腕の中に納り、体を預ける。

レオンの抱きしめる腕が優しくて…
ちょっと安心している自分がいる

レオンは人目を避けるように馬車に乗り込んだ。

何で優しくするの?
レオンは探してる好きな人がいるんじゃないの?
レオンの探してる運命の姫君って。どんな人
なんだろぅ……

レオンの腕の中で、先程の噂話を思い出す。
アルコールで忘れたかった現状は、アルコールによって偏った方向に思考を導く

こうやって優しくしてくれるのも、探してる女性が見つかるまでの『婚約者』としての体裁を保つためなんだ。きっと。

そう……なんだ。

自分の中で出てしまった答えに、傷ついてる自分がいる。

さっきの女性はどうしたんだろ……。
黒髪の可愛いらしい女性。
レオンの好みなのかな……。
婚約者って何?
私って……。

気づいたら屋敷に着いていて、フラフラと馬車から降りると、
ベルが
「お連れ致しましょうか?」
と、語りかけてくれる

「良い。私が運ぶ。使用人は全て下がらせろ。」
そう言ってレオンは、ベルに指示を出すと、ふらつく私を先程と同様に抱き上げた。
「じ!…じぶんれ…あるけましゅ……」

なんとも説得力のないろれつに、レオンは眉間にしわを寄せながら答える
「無理だと思うが?」

そのまま強制的に抱き上げられたまま部屋まで進む。
扉を器用に開けると、寝室は月明かりが差し込み、夜なのにランプをつけなくても明るく照らされていた。

ベッドに私を降ろすと、 
「ゆっくり休め。」
と言って、私の前髪をサラリと撫で、レオンは静かに部屋を後にした。


………なんか複雑な気持ち……。

私はベッドの中で、少し酔いが覚めた思考回路で、今日の出来事を振り返る。

使用人があんな感じなのも、私が自分から婚約を破棄させるために違いない。
使用人を利用して悪役令嬢を作り上げて、印象操作をした挙句、『こんなところには居られないわっ!』
っていうのを待ってるんだろうな。
これが私という悪役令嬢の真実なのか。

あんな派手なドレスを送られるのも、着られるものなら着てみろ的なあれだったのか?
それとも、君は好みじゃないという遠回しなアレか?

ルーミエールの方から婚約解消を言い出すように全てが動いているように感じる。

嫌われてたんだ…。
誰からも好かれてなかった。

そっか。
そうだ。
パズルのピースがかち合った。

………。
悲しい………。

レオンが優しくしてくれるのも、きっと世間体や体裁を守るため。
浮かれてた自分が恥ずかしい……。
なんだろう、この気持ち。
好きになってしまう前に戻りたい。
はぁ……

頬を冷たい涙が伝う。

だったら、優しくなんてしないでよ。
こっちは慣れない言動にちょっとだけ期待して、ほんの少し、信じてしまったのに。

酔いが覚めてくると、残された現実がくっきりと浮かび上がって見えるようだった。

まぶたの裏で、レオンの背中が遠ざかる。

婚約者としての私。
運命の姫君を探す彼。
その間にある「私の気持ち」。
揺れる心に蓋をするように、私は静かに眠りへ沈んでいった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

【完結】転生したら悪役令嬢だった腐女子、推し課金金策してたら無双でざまぁで愛されキャラ?いえいえ私は見守りたいだけですわ

鏑木 うりこ
恋愛
 毒親から逃げ出してブラック企業で働いていた私の箱推し乙女ゲーム「トランプる!」超重課金兵だった私はどうやらその世界に転生してしまったらしい。  圧倒的ご褒美かつ感謝なのだが、如何せん推しに課金するお金がない!推しがいるのに課金が出来ないなんてトラ畜(トランプる重課金者の総称)として失格も良い所だわ!  なりふり構わず、我が道を邁進していると……おや?キング達の様子が?……おや?クイーン達も??  「クラブ・クイーン」マリエル・クラブの廃オタク課金生活が始まったのですわ。 *ハイパーご都合主義&ネット用語、オタ用語が飛び交う大変に頭の悪い作品となっております。 *ご照覧いただけたら幸いです。 *深く考えないでいただけるともっと幸いです。 *作者阿呆やな~楽しいだけで書いとるやろ、しょーがねーなーと思っていただけるともっと幸いです。 *あと、なんだろう……怒らないでね……(*‘ω‘ *)えへへ……。  マリエルが腐女子ですが、腐女子っぽい発言はあまりしないようにしています。BLは起こりません(笑)  2022年1月2日から公開して3月16日で本編が終了致しました。長い間たくさん見ていただいて本当にありがとうございました(*‘ω‘ *)  恋愛大賞は35位と健闘させて頂きました!応援、感想、お気に入りなどたくさんありがとうございました!

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...