憧れの悪役令嬢に転生したからと言って、悪役令嬢になれる訳では無い!!

来実

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18.私の決意

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考えれば考えるほど、自分という立場がなんなのか分からなくなる。

結局のところ、レオンには想い人が居て、その人をずっと一途に探してる。
私を婚約者としているけど、それもめんどくさい事を避けるためだけの1つの道具ってことか。

「はぁ……」

私は、それを聞いて落ち込むほどにレオンへの気持ちが育っている自分と向き合っている。

転生前までの社畜生活は、恋愛なんて言うものとは無縁で
初めて灯ったこの気持ちの消し方が分からない。

「ルミ様?ご気分が優れませんか?」
ニーナが心配そうに様子を伺ってくる。

「いえ。大丈夫よ。」
メンタルには結構刺さってるけど、体調が悪い訳では無い。自分の気持ちの問題だ。

「今晩、レオン様が外出を望まれているそうです。星をご覧になりたいのだとか」

天体観測のお誘い?
あれか?先日の夜会で運命の姫君が見つかったから、君はもぅ要らないってやつか?
お役目ご苦労的な?
どう考えても、その方向にしか考えが及ばない。

私は、日が暮れるまでそのことについて悶々と考え、1つの答えを出した。

-------------
屋敷から歩いて、人気のない小高い丘へむかう。

2人で並んで歩きながらも、交わす言葉は無かった。

見晴らしもよく、星空が見渡せる場所に着くと足を止め、レオンは静かに私の名前を呼んだ。

「ルミ。君と交わした婚約者の契約だが、白紙に……。」

郊外の小高い丘の上で、星空を眺めながらレオンが静かに話し始めた

気持ちが育ちすぎる前に立ち去ろう。
結ばれない運命ならいっそ。
そう、心に決めてここに来た。

私は悪役令嬢というスキルを惜しみなく使う。予定だった。
「ちょっと優しくしたからって、私の心が変わると思って?!」
私はレオンに向かって考えてきたセリフを吐いた。
用意していたセリフだけに、なんか想定していた状況とちょっとズレてるが、応用力が無いので仕方がない。

私の気持ちが、育ち切る前に。
好きが加速してしまう前に。
自分から立ち去ることを決めたのだから。

レオンが気まずそうな表情をして目線を逸らしたけど、気にしないで続けた。
「契約を白紙に?聞いて呆れるわ。今更……」
あれ。言葉が……
私は一瞬言葉に詰まった。
用意していた言葉が出てこない。
いや……そうではなくて……

「じゃぁなんで、あんな契約したのよっ!私がっ……わた…しがっ!!」
自分で考えもしない言葉が口から出ていた。
そして、溢れる感情が止まらない。

これは、ルーミエールの感情だ。
溢れる感情の渦に呑まれながら、私はその場から逃げ出した。
その先の言葉を言わないために。
この気持ちを伝えてはいけないんだ。
だって、レオンが探してるのは私じゃない。

今まで隠してきたルーミエールの想い。
ルーミエールがレオンを思う気持ち。
自分の気持ちと混ざって、どれがホントの自分の気持ちか分からなくなる。

何も考えずに走った。
道が続く方へ。
無心で歩き回った挙句、気づいたら街ハズレの殺風景な通りまで来てしまった。
足を止めて天を仰ぐと、星空はさっきと変わらず静かに私を見下ろしている

「私が……どんな想いで、あの契約を受け入れたと思ってるのよ……」

私は夜空を見つめながら、あのセリフの続きをボソリと呟いた。
私の感情なのか、ルーミエールの感情なのか、それとも、両方の想いなのか、もぅわからない。

けれど、胸の奥が確かに痛い。

頬を伝う涙はとめどなく流れ、衿元をしっとりと濡らした。
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