御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Act.16 救出から始まる非日常について。②

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「お待たせ致しました、そーぢ様」

 女の子をお姫様抱っこで抱え、オレの側に連れて来ると、そっと隣に寝かせるエリーさん。

「失礼致します、そーぢ様。外傷については不幸中の幸い――そーぢ様のお陰で擦り傷程度に済んで御座いました。腕を掴まれた際に付いたと思しき痣が、少々、痛々しい程度に残っては御座いますが、命に別状は御座いません」

 再びオレの上半身をそっと抱きかかえて、女の子は概ね無事だと優しく報告してくれるのだった。

「本当に間に合って良かったね。もしも声が聴こえてなければ……」

 ――考えて本気でゾッとした。

 身震いしたのが伝わったのか、抱きかかえるエリーさんが優しくも強く抱き締めてくれる。

「お伺い致しますが……そーぢ様は何故、お声を拾うことができたので御座います? 私には全く聴こえておりませんでしたのに」

 聴いて良いことなのかと、一瞬、躊躇するも、結局は尋ねてくるエリーさん。

「なんだろうね……。聴こえると言うか、呼ばれたって感じ……違うか。引っ張られたって感じ」

 正しい答えは、当然、不明なので、最も近しい答えを述べる。

 正直に言って自分でも良く解らない。
 こんな特殊な経験は今回が初――生まれて初めての経験だからね。
 遠く離れたヒトの声を聴いたのも、悍しい人為らざるモノと相対したこともね。

「呼ばれた? 引っ張られた? なんとも不可解なことも御座いますね……」

 怪訝そうに聴いてくれるも、エリーさんもやはり理解は出来ない様子。
 不思議そうに顰めっ面になるのだった。


 そんなやり取りをしていると、空から軍備に等しい武装ヘリが数機、現地――此処に到着し、上空でホバリング停止する。

 武装ヘリの乗降口からロープが垂らされると、複数の武装したメイドさんが一斉に懸垂降下してきた!


 最近のメイドさんって、本当に大変なんだね……。


 地面に華麗に着地を決めた武装メイドさん達。
 素早く、各々の持ち場に散開していき、次々と作業を開始した。


 その様子は何処かの戦争映画さながら。
 特殊部隊以上の華麗な手際でね……。


 その内の一人――社長室前に居た、もう一人の黒髪メイドさんが、横たわるオレと支えるエリーさんに妙に怖い笑顔で優雅に歩み寄ってくる。


 そして、いきなりエリーさんの頬に、容赦のない平手打ちを打ちかました!


「エリーっ! 貴女が側について居ながら、なんてザマなのっ!」

 怖い笑顔が豹変、凄い剣幕でエリーさんを罵倒した!
 
「――リリー、この街でNoUノウと遭遇したこともだけど、そーぢ様が立ち向かって行くなんて……夢にも思わなかったのよ」

 その黒髪メイドさん――リリーさんに打たれた頬に手を添えて、辛そうに言い訳をするエリーさん。

 オレと話す時の独特の言葉遣いも、食堂で聴いた時のような素の口調に戻っていた。

「甘ったれたこと言ってんじゃないわよっ! まさかなんて不確かな言葉は私達には不要っ! あらゆる事態を想定して動くのが当たり前でしょうにっ! そーぢ様のお側に居られて舞い上がって腑抜けてたんじゃないのっ! ――無事だったから良かったけど、結果論に過ぎないのよっ! 万一が起こっていたなら、確実にヒッティーに説教――いいえ、されているところだったわよ、エリー」

 物凄い勢いで更に罵倒してくるリリーさん。


 エリーさんの膝枕の上で成り行きを見てるオレにしても、正直に言って怖いです……。


「ヒッティーか……そうね……確実に修羅と化すわね……私だけでは済まされないわね」

 聴いたことのない名前を呟きつつ、明らかに蒼褪めていくエリーさん。


 ヒッティーさんって……そ、そんな怖いヒトなんですか?
 名前から察するに、所謂、殺し屋ヒットマンさんだったりとかします?
 

「そう言うことよ。私達も無事では済まないのっ! そうなってたら真っ先に生贄に差し出して回避してたわよっ! 如何なる事態、場合においても常にそーぢ様が最優先ってこと、もう一度、肝に銘じておくことねっ!」

 仰々しく大袈裟に両手を広げ、怒りを露わにするリリーさん。


 そして――。


「――でもね、エリー。無事で本当に……本当に良かった……」

 突然、エリーさんに覆い被さり抱き締めるリリーさん。
 無事だったことに安堵していることもそっと付け加えて。


 そうか……リリーさん、エリーさんが心配でそんなにも怒っていたんだね


「リリー、本当に心配掛けて……ごめんなさい」

 リリーさんに身体を預けて寄りかかり、本当に申し訳なさそうに謝罪したエリーさんだった――。


 ほどなく、軍備に等しい装甲車両、緊急車両までもが次々に到着。
 やや遅れて、国家権力の方々も白黒の緊急車両で到着した。

 慌ただしく各々の持ち場に散開していく。

 気付けば、民間人立ち入り禁止の黄色のテープで、事件現場の如くこの場が封鎖されていたのだった――いつの間に?


「私は陣頭指揮を取る為に戻らないといけないけど……エリー、そーぢ様を頼んだからね? ――ったく、私だって、そーぢ様とイチャコラしたいっての。損な役回りを押し付けやがって……あんのクソ爺ぃは全コロ決定だ」

 エリーさんから離れ、肩をポンと叩くリリーさん。
 オレを心配そうに一目見たあとで、会釈して戻って行った。


 去り際に不穏当な……多分、聴いちゃいけない愚痴っぽいことを呟きつつ去っていったのが気になるけどね。


 リリーさんの怒号のような号令で慌しさに磨きが掛かかる――。


 オレと小さな女の子は担架に乗せられて、普通の救急車ではない、軍の医療車両に運び込まれた。
 中に居たメイドさん達に、物々しい器具や機材に繋がれていくオレと小さな女の子。
 
「暫しの間、お休み下さいませ。そーぢ様」

 そう告げて酸素吸入器を取り付ける際、オレの額に優しく口づけをしてくれたエリーさん。最後に――。


「良い夢を――」

 そこで意識が途切れたオレだった――。



 ―――――――――― つづく。
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