御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Act.21 幼女から始まる非日常について。①

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 自宅の呼び出しチャイムがなった――。

「はい、どちら様で――」

 部屋に備え付けのカメラ付きインターホンから出たオレ。

「あれ? リリーさん?」

 モニター越しに確認した来客はリリーさんと、見覚えのある幼い少女だった。

「お休みのところ、申し訳御座いません、そーぢ様」

「開けるから、そのまま奥のリビングへどうぞ」

 そう伝えて、インターホン経由で玄関を開錠する。


 外見は極普通の一般家屋な我が家。
 実は義祖父じーちゃんの所為で、ナニ気にハイテク機能満載だったりなんですね。
 このカメラ付きインターホンなんてのは序の口。
 総じて防犯系に秀でている設備がまだまだあったりだよ。


「あの子って……オレが助けた子だよな?」

 自室を出てリビングへと向かう。

 ちなみにエリーさんは、急に近所のスーパーに買い出しに行くとか言って出掛けている。


 勿論、由緒正しきメイド服のままでね。


「どうぞ遠慮なく」

 リビングに来ていた二人にソファーに座ってもらうよう促し、オレも対面席に腰掛ける。


 ソファーに俯いて座る幼い少女。
 先の事件でオレが助けた子に間違いはなかった。


 見た目で判断すると、恐らく小学校低学年くらいと思しき可愛らしい子。
 おさげ髪に大きな黒縁の眼鏡で、恥ずかしいのか俯いてモジモジしている。
 時折、恐る恐る顔を上げてオレを見ると、真っ赤になってまた俯くを繰り返していた。


 意外にヒト見知りな子なのかな?


「リリーさん、急にどうしたんですか? その子って確か……」

 その子を伴って訪ねて来た用件を聴いた。

「そーぢ様、折り入ってお願いが御座いまして。お気付きの通りに御座いますが、実はこの子のことで――」

 リリーさん曰く、先の事件で両親を失い、心身ともに疲弊してる幼い子。
 精神カウンセラー指導の元、孤児の集まる施設行きを見送ったのだと切り出した。


 それが何故、オレんトコに?


 幼い少女が助けて貰ったことに、直接、どうしてもお礼が言いたかったらしいのと、施設ではなくオレと一緒に暮らしたいんだそうだ。


 更にもう一つ――。


「お話しを伺った際に私共には理解が及びませんでした。どう対処すべきか困っていたところ、そーぢ様にお会いし直接お伝えすれば解ってもらえるとのことでしたので、身勝手ながら本日お連れ致した次第に御座います」

 ナニか含みのある言い方で濁してきた。

「なるほどね。――君に一つ聴いても良いかな?」

 リリーさんの話に頷いたあとで、幼い少女に向き直って優しく問い掛けるオレ。

 押し黙ったまま、俯き加減でコクリと頷く幼い少女。

「先ず、どうして――オレなのかな?」

 どんな理由であっても、幼い少女は希望通り受け入れると既に意思は固まっている。

 昔、義祖父じーちゃん義父とうさんが、オレと姉さんに救いの手を差し伸べて優しく取ってくれた……そうしてくれたように。

 ただ、あの場で出会っただけに過ぎないオレを頼る理由がイマイチ良く解らない。


 どうしてなのかが単純に知りたかっただけ――。

 
さんに護られてるのなら……きっと安心だから――」


 耳を疑うほどに破茶滅茶な理由が返ってきたのだった――。


「――え⁉︎ 今、守護霊って言った⁉︎ ナニソレ⁉︎」

 理解出来ない理由ってのは、この話のことかよ!

「あの時――紅い竜さんと白い騎士さんが見えたの……。守護霊さんが護っていたの……。街で見掛ける怖い雰囲気の黒いモヤが時々見えて怖くて嫌な思いをするの……。靄から護ってもらえるかなって……」


 更に意味不明で破茶滅茶な理由が続いた――。


 こんな話は確かにオカルト過ぎて、普通は理解し難いからね。


 でも、オレだけは――。


「――紅い竜に白い騎士だって?」

 幼い少女が口にした紅い竜と白い騎士。
 オレが夢で見たあの話に登場したモノ。

 どうしてそれが見えたんだ?
 そして、オレを護っていると判断したんだ?

 この子って霊能力者かナニかで、摩訶不思議なモノを見るか見破れるかの能力を持っているってのか――嘘だろ?

 オレが助けた時も、確かに二つの指輪にネックレスを通して首から下げて携帯してはいた、けど。

 指輪が護ってくれて傷を治――消してくれたとでも言うの? ――まさかとは思うけど。

「ご、ごめん――えっと、その……黒い靄って言うのは?」

 一応、そう言ったオカルトも踏まえて、確認の為に優しく聴いてみる。

 オレの予想が正しければ、黒い靄と言うのは恐らく――。

「そーぢ様、黒い靄とは擬態して潜伏しているNoUノウを指し示しているかと思われます」

 幼い少女の代わりに、リリーさんが口を開く。


 告げられた内容は、オレの予想を肯定するとんでもない話だった。

 つまりこの子は、正体を知らずとも無意識下で危険なモノと知覚し、見破っていたことに繋がる。


NoUノウ――人為らざるモノの気配を、意図せず感知が出来るってことになるけど? 本当に?」

「御意。精密検査の折には特筆すべき点は見当たらず、極普通の少女に相違御座いませんでした。ただ、入手したサンプル数種を運び込む際に偶々目にした瞬間、同様に黒い靄が見える、或いは感じると言って怯えだしてしまわれました。――その様子からも間違い御座いません」

「それってテラヤバない? 万が一にだけど、その能力を有しているとノウだっけ? そいつらに知られた場合、この子が狙われる危険も――無きにしも非ずってことにならない?」

「そのことも懸念した配慮に御座います」

 真剣な面持ちのまま、静かに肯定するリリーさんだった。

 まさかとは思うけど、特殊なナニかを持つこの子が襲われていた理由が偶然ではなく、最初からそれが理由だったら――。


 もっと最悪だ。


「――えーと。自己紹介がまだだったね。オレは御手洗そーぢって言うんだけど。君の名前はなんて言うのかな?」

 難しい話ばかりをリリーさんとしていた所為で、置いてけぼりにしてしまってた。

 名前すら聴いてむいことに気付き、遅ればせながらの自己紹介で話題を変える。

「……茉莉まつり

 俯きながら恥ずかしそうに名乗ってくれた、茉莉という名の幼い少女。

「そっか、茉莉ちゃんって言うのか。――今日からは御手洗みたらい 茉莉まつりになるんだね」

 義父とうさんが良くする仕草を真似て、その子の頭をグシャグシャと撫でながらそう伝えた。


 一瞬だけ身体を強張らせて怯えるも、直ぐに満面の笑みに変わる茉莉だった――。



 ―――――――――― つづく。
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