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1章 婚約破棄はいかがでしょうか
2 毒からの目覚め
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目を覚ますと、そこはベッドの上だった。体を起こして先日の夜会のことを思い出す。
「あの王子、なんてものを飲ませるのよ」
もしここで私が死ねば帝国との友好にヒビが入る可能性がある。だからこそ毒の量を調整して苦しめるだけに留めたのだろう。
「カナリア様! 御身体は大丈夫ですか!」
隣から大きな声が聞こえてくる。メイドのエマが目覚めた私の無事を喜んでくれた。私も彼女が無事でホッとした。
……この子は私が死んだら、どうなるかわからないもんね。
いつだって一人残された侍従の最後は悲しいものだ。特に属国であろうとも、ここは前まで敵地だったため、どのような目に遭うかは想像に難くない。
「心配を掛けたわね。どれくらい眠っていたのかしら」
「三日間です! ずっと起きられないから、本当に心配で──」
「はい──?」
あまりにも衝撃的な情報に他のことは頭に入らなかった。
どうやらかなり厄介な毒を盛られたらしく、あの時に吐かなければ助からなかったかもしれない。まさか本気で私を殺そうとしたのではないだろうか。
……冗談じゃない!
死ぬかもしれなかった恐怖が今になって蘇ってきて、体が震えてしまった。
「エマさん、カナリア様はお目覚めになりましたでしょうか?」
外から声が聞こえてくる。おそらくここに勤めている侍従らしく、エマはすぐに返事をしてドアを開けて迎え入れた。私を見た後に、エマとやり取りをしてから私に目を向ける。
「それでしたら、本日の夕食からはシリウス様とお食事をお摂りください」
「なんですって?」
まだ病み上がりの私に、食卓まで足を運べと言ってくる。少しは病人に気を遣えと言いたいが、この侍従の顔を見る限り選択肢は無さそうだった。
「婚約者なのですから、早くシリウス様との懇親を深めていただかなければなりません」
そんなの今でなくともいいのに、私に嫌がらせをしたいだけに見える。仕方なく私は着替えを済ませ、夕食のために食卓へと向かう。
……急げって言ったわりには、あの男は来ないじゃない。
私の婚約者のシリウスの姿はなく、ただジーッと座らされるだけだ。時間があったのなら少しでも自室で休ませてほしい。まだフラつくし、熱っぽさもあるのだから。
エマに他のメイドが耳打ちすると、エマの顔色が悪くなった。そしてその情報を私へと話してくれる。それは信じられないほどひどいものだった。
「気分じゃないから来ないですって!」
私はテーブルを叩いて立ち上がった。これだけ無理をして来たのに自分は気分だけで来ないのだ。思わず怒ってしまい、エマが怖がってしまったので、私は一度冷静になって椅子へと座る。少し食事を食べたらすぐに戻ればいいだけだ。だが出された食事でまた問題があった。
「ねえ、あんたたち本当にふざけているわね!」
「はぁ……?」
とぼけるメイドにまた腹が立ち、置かれた皿を叩いてテーブルから落とす。どうやら私が何も知らない甘やかされた女と思っているようだ。
「鉛の皿なんか使って、私の頭をおかしくしたいの! 馬鹿にするんじゃないわよ!」
鉛の皿はだいぶ前にその危険性から禁止された。鉛中毒となってしまっては、頭がおかしくなったりと厄介なことになる。こんなのは帝国では平民ですら知っている。
私を苦しめたいからここまでするのか、と熱が上がるのを感じながらも怒りが止められなかった。
「い、いいえ! とんでもございません! これは高価なお皿でして──」
「なら今度から銀食器にしなさい! それ以外で食べる気はないから!」
もう我慢ならなくなり、私は部屋へと戻ろうとする。怒りからか廊下を歩く速度が早くなる。だがだんだんと息切れを起こし、頭痛も始まってきた。
「カナリア様、無茶をなさらないでください」
エマは私の背中をさすってくれた。
それでやっと気持ちが落ち着きかけたところで、前を向くとシリウスが曲がり角をちょうど回ってきた。
「あの王子、なんてものを飲ませるのよ」
もしここで私が死ねば帝国との友好にヒビが入る可能性がある。だからこそ毒の量を調整して苦しめるだけに留めたのだろう。
「カナリア様! 御身体は大丈夫ですか!」
隣から大きな声が聞こえてくる。メイドのエマが目覚めた私の無事を喜んでくれた。私も彼女が無事でホッとした。
……この子は私が死んだら、どうなるかわからないもんね。
いつだって一人残された侍従の最後は悲しいものだ。特に属国であろうとも、ここは前まで敵地だったため、どのような目に遭うかは想像に難くない。
「心配を掛けたわね。どれくらい眠っていたのかしら」
「三日間です! ずっと起きられないから、本当に心配で──」
「はい──?」
あまりにも衝撃的な情報に他のことは頭に入らなかった。
どうやらかなり厄介な毒を盛られたらしく、あの時に吐かなければ助からなかったかもしれない。まさか本気で私を殺そうとしたのではないだろうか。
……冗談じゃない!
死ぬかもしれなかった恐怖が今になって蘇ってきて、体が震えてしまった。
「エマさん、カナリア様はお目覚めになりましたでしょうか?」
外から声が聞こえてくる。おそらくここに勤めている侍従らしく、エマはすぐに返事をしてドアを開けて迎え入れた。私を見た後に、エマとやり取りをしてから私に目を向ける。
「それでしたら、本日の夕食からはシリウス様とお食事をお摂りください」
「なんですって?」
まだ病み上がりの私に、食卓まで足を運べと言ってくる。少しは病人に気を遣えと言いたいが、この侍従の顔を見る限り選択肢は無さそうだった。
「婚約者なのですから、早くシリウス様との懇親を深めていただかなければなりません」
そんなの今でなくともいいのに、私に嫌がらせをしたいだけに見える。仕方なく私は着替えを済ませ、夕食のために食卓へと向かう。
……急げって言ったわりには、あの男は来ないじゃない。
私の婚約者のシリウスの姿はなく、ただジーッと座らされるだけだ。時間があったのなら少しでも自室で休ませてほしい。まだフラつくし、熱っぽさもあるのだから。
エマに他のメイドが耳打ちすると、エマの顔色が悪くなった。そしてその情報を私へと話してくれる。それは信じられないほどひどいものだった。
「気分じゃないから来ないですって!」
私はテーブルを叩いて立ち上がった。これだけ無理をして来たのに自分は気分だけで来ないのだ。思わず怒ってしまい、エマが怖がってしまったので、私は一度冷静になって椅子へと座る。少し食事を食べたらすぐに戻ればいいだけだ。だが出された食事でまた問題があった。
「ねえ、あんたたち本当にふざけているわね!」
「はぁ……?」
とぼけるメイドにまた腹が立ち、置かれた皿を叩いてテーブルから落とす。どうやら私が何も知らない甘やかされた女と思っているようだ。
「鉛の皿なんか使って、私の頭をおかしくしたいの! 馬鹿にするんじゃないわよ!」
鉛の皿はだいぶ前にその危険性から禁止された。鉛中毒となってしまっては、頭がおかしくなったりと厄介なことになる。こんなのは帝国では平民ですら知っている。
私を苦しめたいからここまでするのか、と熱が上がるのを感じながらも怒りが止められなかった。
「い、いいえ! とんでもございません! これは高価なお皿でして──」
「なら今度から銀食器にしなさい! それ以外で食べる気はないから!」
もう我慢ならなくなり、私は部屋へと戻ろうとする。怒りからか廊下を歩く速度が早くなる。だがだんだんと息切れを起こし、頭痛も始まってきた。
「カナリア様、無茶をなさらないでください」
エマは私の背中をさすってくれた。
それでやっと気持ちが落ち着きかけたところで、前を向くとシリウスが曲がり角をちょうど回ってきた。
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