毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー〜 

天海二色

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第十一章 キノコの国のアリス編

元ネタ人物紹介 イギリス感染病棟編

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※この頁は感染病棟に出てきた人物と、モデルにした元ネタの人物について書いてあるオマケです
※読み飛ばしても何も問題ありません

ジョン
イギリス感染病棟院長→辞任
44歳。イギリス人。
マスクデザイン:白と黒のチェッカー柄

モデルの偉人
ジョン・ハンター(西暦1728-1793)
イギリスの外科医。解剖学者。

【実験医学の父】【近代外科学の開祖】とも。
ロバート・ルイス・スティーヴンソン著作の『ジキル博士とハイド氏』のモデルの一人と言われている。
あと彼が住んでいた身内や患者が出入りする表口と、解剖用の遺体を運び込む裏口のある邸宅も、作中の邸宅のモデルになっているとか。
本編のジョンが顔半分変色しているのは『ジキルとハイド』の二面性の表現が元ネタ。

10人兄弟の末っ子として産まれたが、平均寿命が短かった時代なのもあって兄姉の大半は早世している。
そんな中、一回り上の兄の手伝いとして解剖教室の遺体の確保を任された所、凄まじい才能を発揮(なんで?)。
土葬文化が根強くまたキリスト教の教え「最後の審判後に復活する身体を残す」為に遺体にメスを入れる事は冒涜的とされていた時代、解剖用遺体確保はなかなか大変だったのだが、ジョンはアウトローとコネを作って墓場泥棒をして貰ったり、葬儀業者を買収して遺体を回して貰ったり(解剖されるのが嫌で亡くなる前に対策をしていた、巨人症の男性の遺体もあの手この手で入手している)で遺体を確保。ジョン自身も解剖に携わり、元々器用だったのもありメキメキと解剖学を身に付けていった。

彼が解剖し作成した標本は数千体にも及び、現代でもその一部が残っている。また世界中から標本を集めた標本コレクターとしても有名。
あと細菌のさの字もなかった時代にも関わらず(※細菌の発見自体は17世紀後半にされていたけど、病気の原因と認識されたのは19世紀後半)、不衛生な環境での手術は危険と経験的にわかっていたようで、軍医をしていた頃に体内に銃弾が残った事があったのだが下手に手を出さず放置。そして生還している。
外科医としても相当優秀で安易な手術は推奨せず、当時は切断するしか生還の道はなかったとされていた膝窩動脈瘤を切断せずに取り除く方法を発見、見事に施術を成功させている。

研究の為には自らの犠牲も厭わず、淋病梅毒の治療過程を確認するために自分から感染し、生涯罹患したままだったと言われている。
弟子には「観察し、推論し、記録せよ」と教え込んでいた。ジョン自身もそれをモットーに、研究対象をスケッチするに留まらず舐めて味を確かめ(胃液とか精液とか)それも記録していた。何で皆んな舐めるん……?

ジョンが亡くなった後、弟子達は彼の遺言に従い検死解剖をしたというエピソードが残っている。

 ◇

エドワード
イギリス感染病棟副院長→院長
33歳。イギリス人。
マスクデザイン:薔薇

モデルの偉人
エドワード・ジェンナー(西暦1749-1823)
イギリスの医学者。

【近代免疫学の父】とも。
上記のジョン・ハンターの弟子の一人である。
彼が残した大きな功績は「天然痘の予防法開発」。後にワクチンという形で世に広まる安全性の高い予防法を発見、実践した先駆けの人物である。(※ 天然痘患者の膿疱を健常者に摂取する「人痘法」という予防法は既にあったが、摂取者の致死率が二割と安全性に大分難があった)

この天然痘とは当時、多くの死者を出した感染力致死率共に高い恐ろしい病気だった。
そんな中、エドワードは酪農家がよく罹患する天然痘と似た病気「牛痘」に着目。酪農家達の中で囁かれていた「牛痘にかかった者は天然痘にかかることはない」という言い伝えの確証を得る為に実験を重ね、そしてあえて症状の弱い牛痘にかかることにより、致死率の高い天然痘罹患を回避する予防法【種痘法】を確立した。
ちなみにこの頃、エドワードは既にジョンの弟子で、ジョンには「考えるより、ともかく実験しろ。よく観察した上で」と言われていたとか。あとエドワードはジョンの邸宅に住み込みで働いた最初の弟子と言われている。

この予防法は世界へと広まり、1980年にはWHOから「天然痘の根絶」が宣言された。
人類によって根絶された、現在、唯一の感染症である。

 ◇

フローレンス
イギリス感染病棟看護師長
37歳。イギリス人。
マスクデザイン:雪の結晶

モデルの偉人
フローレンス・ナイチンゲール(西暦1820-1910)
イギリスの看護師。統計学者。看護教育学者。

【近代看護学の母】、【医療統計学の祖】とも。
言わずと知れた「クリミアの天使」、「ランプの貴婦人」と讃えられた看護師である。

統計学者としても有名で、「鶏のとさか」と呼ばれるカラー円グラフを考案している。本編のフローレンスのマスクデザインが雪の結晶なのは円グラフを連想してである。(蜘蛛の巣グラフと呼ばれる事もあるけど、蜘蛛の巣デザインだと見栄え的にちょっとアレかなと没になった)
本編でモーズに統計学について講義をしていたのはこれが元ネタ。

ちなみにフローレンスの二つ名は他にもあり、その名も「小陸軍省」。
衛生環境が劣悪だった野戦病院改善の改善の為、時には24時間ぶっ続けで働き続け、彼女についていけず過労死した人物もちらほら。フローレンス自身も身を削っていたので彼女が実際に看護師を務めていたのは体を壊すまでの2、3年である。
衛生環境の改善こそ戦場の死亡率改善の道と説く為に統計データを取り軍の上層部に叩き付け、楯突く者が出ようとも理路整然と論破し跳ね除け、社交界のコネも個人資産も味方につけたイギリス女王も威光も、使えるもの全てを用い人々を救う為に奔走していた剛鉄の看護師。
クリミア戦争時(1853~56)もまだ細菌が病気の原因という認知はされておらず、消毒の概念(1867年以降普及)もなかったのにこの徹底ぶりである。彼女の活躍により死亡率は40%から5%までグッと下がった。

終戦後も看護師を辞めた後もペンを握り数多の著者を残し、看護システムを確立。
彼女もまた様々な発見をしているが、その中に「予防治療によって病気を防ぐ」があり、世代が異なるもののジョンやエドワードと出会っていたら話が合っていたかもしれない。

因みに真偽不明ながら、戦時中フローレンスは備蓄されていた薬箱を物資不足から求めた所、「これは委員会所有のものだから許可が出ないと開けられない。そして委員会開催は3週間後」と言われたので、斧を持ってきて薬箱の蓋をぶち壊して「開きましたね」と持って帰った逸話がある(斧はスラングで実際は素手で壊したんじゃね? 説も)。彼女の性格からしてあり得なくないのがなんとも言えない……。
本編で駐車場で斧を持っていたのはこの辺から得た着想である。まぁ現代でも車置き去りで亡くなる子が度々出ているからね、大人でも車内酸欠で倒れる事があるし強行突破もやむなしだよね。



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