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お付き合い始めました
しおりを挟むお久しぶりです。
未来の国民的アイドル、SYUNNです。
本名も隼音です。
今、ユニットメンバーのDAI、こと大地のマンションに来ています。
ここで、重大発表があります!
「花楓さんと、晴れて恋人同士になりました!」
色々あったけど……!
流れるように話す隼音に、大地は一瞬驚いた顔をした後で、呆れた顔をした。
「やっとか」
「思っていた答えと違うっ」
「いや、悪い、本音が先に出た。良かったな。おめでとう」
「ありがとう!」
素直な隼音に、大地は苦笑した。
巻き込まれた……いや、見守っていた身としては、隼音の想いが叶って良かったと思う。
見た目の良さから言い寄る女が多すぎて、どんな美人にも興味を示さなくなった隼音が恋をしたと聞いた時は耳を疑った。
しかも、相手は男。
思うところが最初からなかったとは言わないが、今の嬉しそうな隼音を見ると、想いが実って良かったなと心から思う。
「しかし、あれだな。ゆるくて真面目なわりに計算高いお前がどんな手でいくかと思ったら」
「思ったら?」
「あれだろ。子供みたいに好き好き言い続けて押し切ったんだろ」
「うっ、大ってば鋭い」
図星か。
子供か。
いや、初恋だった。
「いやいや、でも、大波乱があったのです。テレビより映画館で観て欲しい、そんな感動的なあれこれが」
「映画の尺で収まるのか?」
「前後編ですね」
「三部作よりマシか。今は聞かねーけど」
「後で聞いてくれる大って本当に優しいよね」
「あー、花楓さんと初日の出見に行くってとこまで聞いてるからその後からでいいわ」
「その前にも色々とあったのです」
聞いて聞いて、と尻尾でも振る勢いで目をキラキラさせる。
花楓の過去の話は隼音の口から話すのは控えるが、それを抜いても話したい事が山ほどある。
「その前に仕事な?」
「そうでした」
まずは花楓さんの可愛さから! と口を開き掛けて、スンと噤んだ。
今からバレンタインデー用のCM撮影がある。そろそろマネージャーが迎えに来る頃だった。
「花楓さんが、バレンタインにチョコくれるって。楽しみだなー。お返しは何にしよう」
「まだ貰ってもないだろ」
「花楓さんのチョコなら絶対美味しいし、俺への愛がこもってる筈だからな。どうしよう……あ、花楓さん用の別荘とか」
「重い。引くわ」
「じゃあ、マンション」
「愛人か」
「恋人です」
キリッと顔を決める隼音に溜め息をついて見せた。
「なんて、冗談……でもないけど、まださすがに早いよな」
「二十歳の台詞とは思えねーな」
「人気アイドルってすごいよね。毎回お給料が上がって人生甘く見そうになるけど、納税額を計算して我に返ってしまう。老後の蓄えもいるしなー」
「ますます二十歳の大学生の台詞じゃねぇ」
隼音たちの所属する事務所は、売れればそれに見合っただけ本人たちに還元される。
今の隼音には花楓用の豪華なマンションや別荘をキャッシュで買うだけの貯金もあるのだが、後々の事を考えると今はまだ貯めておきたい。
人の興味は移ろいやすく、これから先もこの人気が続くとは限らない。貯蓄はあるに超した事はないのだ。
「でも、花楓さんは別荘よりも一緒に旅行の方が喜んでくれるかな」
と言って、隼音の地元、北海道を案内する約束をした事を話し始めた。これは延々と惚気を聞く事になるのだろう。
幸せそうなのは微笑ましい。応援していた身としても、嬉しい。
だが、マネージャー、早く来てくれ。大地は横目でそっとスマホの画面を見つめた。
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