後追いした先の異世界で、溺愛されているのですが。2

雪 いつき

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*溺愛再び2

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 楽しみ、とウィリアムは言った。
 オスカーは、涼佑りょうすけが戻って来てからでも、と。
 二人はこの世界の人で、そんな文化があるから当然の事かもしれない。

 二人が望むなら叶えたいと思う。だが、今は保留にして欲しい。
 その理由が、もう一つ浮かんだ。

「……俺としては、出来ればお一人ずつとじっくり触れ合いたい……というか……」

 競うように触れられるより、一対一でじっくり触れ合って、お互いを感じていたい。
 二人はそうは思っていないのだろうか。

「ハルト……」

 その拗ねたような顔と声に、ウィリアムはたまらずに暖人はるとを抱き締めた。あまりにもいじらしくて。
 オスカーは暖人の手を掴み、もう片手で髪や頬を褒めるように撫でる。

「一人ずつだと、リョウスケが戻って来たらお前は週三回になるだろ。俺とウィルが一緒にすれば、週二回でいい」
「毎週するの前提なんですか」

 そう言うと、オスカーとウィリアムは怪訝な顔をした。毎週、するだろう? というように。
 この二人がそうなのか、この世界はそれが普通なのか。暖人はまた唸った。

「そんなにしっかり週一と決めなくても、お二人がしたい時に……」
「それだと、毎日になるね」
「えっ」
「そうだな」
「オスカーさんまで」

 と思うが、そういえばオスカーの屋敷に泊まった二週間は、ほぼ毎日していた。
 思い出してしまい頬を染める暖人を、オスカーの指がそっと撫でる。愛しげに撫で、真っ直ぐに見つめる。


「ウィル。今日は帰る」
「オスカー?」
「お前は二日だけだっただろ」

 ウィリアムが暖人を抱いたのが二日間に対して、自分は二週間ほぼ毎日抱いていた。三人でするのが保留なら、次はウィリアムが暖人と過ごす番だ。

「遠慮しないわりに、律儀だな君は」
「まあな」

 ふ、と笑い、ウィリアムへは視線も向けずに暖人を見つめ、両手で頬をむにむにと摘む。相変わらず暖人のもちもちした頬を揉むのが好きなようだ。

「だが、土産は貰っていくぞ」

 土産? と暖人が首を傾げた瞬間。

「んっ!? うぅ~~っ!」

 カプリと噛みつくようにキスをされ、当然のように舌が滑り込んできた。土産とは自分の事かと文句も言えず、両手で頬を掴まれ逃れる事も出来ない。
 オスカーとのキスが嫌な訳ではない。ただ、前置きくらいは欲しかった。

「ぅっ、っ……ぅッ、んンッ……」

 顎の下を指で擽られ、ゾクゾクとした快感が生まれる。咥内も遠慮なしに蹂躙され、全身まで快感が広がった。

「あ……オスカーさ、んぅっ、んっ」

 一度唇が離れたかと思えば、また口付けられて。長いキスが終わらない。顎も頬も耳朶も擽られ、軽く達する感覚が何度も襲う。

「んぁっ、ぁ……んっ、……ッ、んぅッ」

 一際強い快感の波が襲い、オスカーの肩をぎゅうっと掴んだ。ビクビクと震える背を、オスカーの手のひらが宥めるように撫でる。


「は……、……ぁ……」

 唇が離れ、へたりとオスカーの方へと倒れ込んだ。
 相変わらず容赦のないキスだ。問答無用でイかされてしまった。まだ、キスだけだというのに。
 濃厚なキスと、繊細な指先。彼の指が背を撫で、ずくりと奥が疼く。

「オスカーさん、……もっ、……」

 もっとして、と言い掛けた口に、オスカーの指が触れた。

 ……そこで、ハッと我に返る。
 背後から感じる、視線に。

「も…………もう、何するんですか……」

 咄嗟に言い換えると、オスカーは小さく笑った。

「続きはまた今度な」

 ウィリアムの手前、暖人に素直におねだりさせる訳にはいかない。今はウィリアムに嫉妬をさせるのも、ウィリアムの前で見せた事のない暖人の姿を見せるのも、オスカーの本意ではなかった。
 頭を撫でられ、暖人は恥ずかしさに震える。

(駄目だ……。えっちばっかりしてると馬鹿になる……)

 以前はこうではなかった。オスカーに二週間抱かれっぱなしだったせいで、反射的に気持ちよくなりたいとばかり考えてしまう。これはいけない。
 ぷるぷると頭を振り、普通の話題を探した。そこでまたハッとする。


「お二人とも、明日お仕事ですよね」
「ああ」
「赤と青の騎士団のみなさんに、涼佑を探していただいたお礼に行きたいんですけど」

 本来なら、一番最初にしなければいけなかった事だ。
 涼佑に再会してから、決闘や暗殺事件や諸々で言い出せなかった。本当は涼佑と一緒にと思っていたが、先にお礼だけでも伝えに行きたい。

「ハルトは礼儀正しくて良い子だね」

 ウィリアムがよしよしと暖人の頭を撫でる。便乗してオスカーは頬を揉んだ。
 飼い猫のように撫で回されながら、暖人は一つ咳払いをする。

「みなさんは、お菓子やお茶はお好きですか?」

 この世界に来てから本を読み漁っていた頃に、この世界でのお礼の品には菓子類や茶葉が主流だと知った。貴族間でも変わらず、それが高価なものや希少なものになるらしい。
 貴族ならと想像していた宝石や装飾品を贈るのは、親しい間柄か、誕生日や継承式など特別な時だけだという。

「以前ラスさんに貰ったお菓子が美味しかったので、そのお店の甘いものとしょっぱいもの両方と、それに合わせた茶葉をと考えているんですが」
「そこまで考えているなんて、ハルトは本当に良い子だね」
「……あの」
「お礼の品などなくとも、ハルトの姿を拝めれば充分過ぎる程だよ」

 いいこいいこ、と撫で回され、暖人はオスカーへと視線を向けた。過保護過ぎて駄目になる、助けて、とばかりに。
 完全に厚意で言っているウィリアムには強く言えないという事か、とオスカーは察した。


「ウィル。それだとハルトの礼儀がなってないと思われるだろ」
「っ、そうか」

 ウィリアムは顔色を変える。

「ハルト、すまない。俺の所為で君の評価を下げるところだったね」

 眉を下げるウィリアムに大丈夫だと笑ってみせ、オスカーにもありがとうございますと唇の動きで伝えた。

「だが、赤と青で、相当の人数になるのだが」
「大丈夫です。俺、お金持ちになりましたから」
「あれはハルトが自分の為に使うべきものだよ」
「ありがとうございます。でもこれが、俺にとってのとても有意義な使い道なんです」

 お礼の気持ちを形で伝える事に、金額を気にせずにいられるなどなんて幸せな事だろう。
 赤と青の騎士団は実力主義だが、国の代表としての社交性や品位も重視される為、貴族が多いと本で読んだ。その彼らに渡すものを、金額関係なく選べるのだ。

「実際にリョウスケの捜索に出たのは赤だ。礼を言うのはそっちだけでいい」
「いえ、その間、青の騎士団のみなさんが代わりにお仕事をしてくださったと聞きましたので」
「そうだね。普段の不在時より多く仕事を残してしまったから、とても世話になったよ」
「それはお互い様だろ」

 一方の騎士団が首都を離れれば、もう一方がその分の仕事を引き継ぐ。
 有事に動く騎士団として、事前にある程度の仕事を片付けられないまま引き継ぐのは良くある事だ。

 当然のように言うオスカーに、ウィリアムも暖人も、やはり彼は良い人だなとそっと目を細めた。

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