後追いした先の異世界で、溺愛されているのですが。2

雪 いつき

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リグリッドの救世主2

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「皇子、あっちでのリョウは面白かったぞ。ハルト君の前ではもう顔がデレデレで、猫撫で声で」
「リョウがか? それは見たかったな」

 面白い、と目を輝かせる皇子に、涼佑りょうすけは小さく溜め息をついた。そこまで顔に出してはいないと思う。

「エヴァンもハルトと会って話をしたのか?」
「ああ。聞いてたより美人だったな。だが可愛くていい子だったぞ。それに、頭も良かった」
「それは、さすがリョウの恋人だな」
「もっと褒めてください。はるを褒め称えてください」
「ハルトに関しては欲しがるな、リョウは」
「はるの事を知ってます風に言われるのは苛つきますが、客観的に褒められるのは幾らでも欲しいです」
「そうか」

 気難しい要求も、皇子は楽しくてたまらない様子だ。もっと言ってやれ、とエヴァンに視線で告げた。


「あ~、そうだな、リョウを言い負かす話術と粘り強さがあったな。リョウが甘いってだけじゃなく、ハルト君の実力だな」
「そうです。暖人はるとは賢くて説得上手なんです」
「あれだけ賢くて美人なら、元の世界でもモテただろうな」
「そうなんですよ。だから少しも目を離せなかったんです」
「騎士団長二人がご執心なのも納得ってか」
「それに関しては不服ですけど」
「リョウがこの国にいるって知られてたら、あの話術と粘り強さで団長を説得して内戦中に来てたかもしんないな」
「そうなんですよ、だから知られたくなかったんです」

 うんうんと頷く。頑固を粘り強いと表現したエヴァンはさすがだった。

 暖人を褒められ上機嫌な涼佑に、皇子は笑いを堪え続けた。本当は腹を抱えて笑いたい程だ。
 その事に気付かれ、皇子は咳払いをしてにっこりとした笑みを見せた。

「リョウがハルトに再会出来て、本当に良かった」
「笑いが隠せてませんけど、ありがとうございます」

 涼佑は肩を竦めた。特に気分を害してもいない。

「はるが無事で、また会えて、僕は今とても幸せです。赤と青の人がそれなりに信用出来る人だったのも良かったと思ってます」
「だから戻ってきてくれたのか」
「はい。はるを不幸にするような人なら、殺してから暖人をこっちに連れて来てました」
「そうか。リョウが言うなら比喩ではないのだろうな」

 くすりと笑う皇子と、にっこりと笑う涼佑。似た者同士で、恐ろしい。エヴァンはぶるっと身を震わせた。
 

「リョウには出来れば祝賀行事に救世主として参列して貰いたいのだが……難しいだろうか」
「手紙で祝辞だけ贈ります。救世主がまた現れたら、面倒な事になるでしょ」

 二度と私が必要とならない治世になるでしょう、と書かれた記事に視線を向ける。

「それに救世主はらしいので、布を剥がれても困ります」
「ふ、リョウは美形だが?」
「それはそれで、モテて暖人に嫉妬されても困りますし」
「そうか、それもそうだな」
「式は、“友人”として室内から見てますよ」
「そうしてくれると嬉しいな」

 設定だとしても、友人と言われて皇子は上機嫌だ。
 皇子を皇子として扱いながらも、涼佑には敬う気持ちがない。リュエールから戻り、ますます対等に話せるようになった気がする。それが嬉しかった。

「ああ、そうだ。郊外にリョウの屋敷を用意したぞ」
「ここを立つ前に、いらないって言いましたよね?」
「まあそう言うな。国が落ち着いたら、ハルトと長期滞在する事もあるだろう? その時に城や城下の宿では落ち着かないのではないか?」
「…………そうですね」
「ハルトと二人でゆっくり出来る、安全な場所が必要だろう。まだ内装の細かい部分は手を付けていないからな。リョウとハルトの好みに仕上げると良い」

 皇子はすっかり涼佑を手懐けるのが得意になっていた。すんなり屋敷を受け取る流れになった涼佑は、真剣に内装を考え始めている。
 暖人好みの……。
 内装と、外装……。


「……庭にドラゴンの銅像を置こうかな」
「ドラゴン……?」

 皇子はごくりと息を呑む。
 庭に、ドラゴン。申し訳ないが、それは趣味が悪いのでは。
 この世界では、庭は美の集大成として作られる。その中にドラゴンは、さすがに、ない。

「暖人が喜ぶと思うんですよね。元の世界では、伝説上の生き物だったので」
「……そうか」
「エルフもいた方がいいかな。ドラゴンの方は、出来れば登れてその上で休めるくらいのサイズがいいな」
「登れて、休める……」
「ドラゴンと竜、両方あった方が喜ぶかも」

 この世界にはエヴァンのような竜だけでなく、ドラゴンもいる。どちらも登れるようにすればきっと喜ぶ。
 涼佑にはもう暖人の喜ぶ顔しか見えていない。魔王の城を作り上げようとしている事にも気付かず、ドラゴンは何体、と真顔で考えていた。

「両方……」

 ぶつぶつと呟かれる言葉の数々に、皇子は震えた。
 暴君の子でも、皇子として教育を受けた皇子には衝撃だった。美の集大成の庭に、そんな無骨なものを。


「リョウ。そんなの作って、ハルト君が落ちたらどうする?」
「……それもそうですね」
「エルフも耳が刺さるだろ。小さな妖精だけにしたらどうだ?」
「そうですね。妖精と暖人、絶対可愛い」

 真顔で言い、どこに設置しようかと思案し始めた。

 胸を撫で下ろす皇子に、エヴァンはニッと笑ってみせる。
 さりげなくこういう気遣いが出来るから……。言葉にはせず、皇子もそっと笑みを返した。

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