後追いした先の異世界で、溺愛されているのですが。2

雪 いつき

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事後ともふもふ

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「おはよう、ハルト」

 目を覚ますと、キラキラと眩しいものが視界を占めた。

「……おはようございます」

 すっかり昇った太陽の光を浴び、目映く輝く白金の髪と、目が痛い程の輝く笑顔。

(この人が、恋人……)

 凄い人と恋人になったものだと改めて思う。彼に自分が相応しくない云々ではなく、ただ、凄い人と恋人になってしまった、と。

 もそ、とウィリアムに擦り寄り、思い出すのは昨夜の事。

(……予想以上に、上級者向けだった)

 何だか、えっちな画像の見本みたいな体勢をたくさんさせられてしまった。
 世界にあらぬところを全開で晒した事は勿論、挿れたまま脚を上げて両膝裏を纏めて抱かれたまま動かれるあれとか、本当にするんだ、と最後の冷静さで考えた気がする。
 何より、顔を見たがるウィリアムが背後からするとは思いもしなかった。


(ウィルさんって、実はSっ気があるんじゃ……)

 開放感のせいだけではない。困った。それだと鞭ばかりになってしまう。切実に飴が欲しい。
 ……いや、良く考えれば「蕩けるまで君を甘やかしたいんだ」という甘い言葉に騙されていた気もする。挿れるまでに一時間以上焦らされ続けたのは、ドSの所業では?

(……でも、蕩けるまで甘やかされてるのは本当だし)

 うーんと唸る。今日の事はひとまず置いておくとして、主観的につらいと思っているだけかもしれない。
 元々彼は過保護で、これでもかと言うほど優しく甘やかしてくれる。それを思うと、鞭だと言うのは失礼な気がした。


 一旦考えるのをやめ、もぞ、と身動ぎする。
 そこでようやく、違和感に気付いた。

「……ウィルさん」
「なんだい?」
「何故俺は、裸なんでしょう」
「ああ、汚れてしまったからね」
「何故、他の服を着せてくれなかったんでしょう」
「肌を触れ合わせて眠りたかったから、かな」
「……そうですか」

 幸せそうな声音に、暖人はるとはそう言うしか出来なかった。
 眠っている間に脱がされていたのは恥ずかしい。だが。
 ウィリアムにすっぽりと抱き締められ、上からは毛布代わりのふかふかの毛皮。寒くはなく、むしろ気持ちが良い。
 そよそよと心地よい風が吹く中で、好きな人と肌を触れ合わせている。これは、想像以上に。

「ウィルさんの気持ち、ちょっと分かりました」

 幸せだな、と自然と湧き起こる感情。頬を擦り寄せると、ウィリアムの手が優しく髪を撫でた。



 暫しそのまま抱き合ってから、ウィリアムは暖人の頬にキスをして体を起こす。
 荷物の中から水を取り、暖人を抱き起こして、子供のように両手でしっかりとそれを掴ませた。お互い下にだけ布を巻いて、いかにも事後のその格好で。
 服を、と思いつつ先に水に口を付けた。渇いた体に、程好い温度の水が染み込んでいく。

 ふう、と一息ついたところで、暖人はハッと目を見開いた。

「うっ……」
「ハルトっ?」

 息を詰めるような声に、ウィリアムが慌てる。
 ……が。

「う、……うさ、ぎ……?」

 暖人の視線の先。ウィリアムの背後には、ころりとした丸いシルエットがあった。
 もっふりした毛並み。
 白、灰色、薄桃色、三匹揃って、つぶらな瞳で暖人を見上げている。

「うさぎ、さん……」

 水を側に置きそっと手を差し伸べると、まず白うさぎが警戒心なく暖人に駆け寄り、指を舐め始めた。
 それから桃色うさぎが手のひらにノシッと乗り、灰色うさぎは暖人の膝の上に跳び乗った。

「っ……」

 あまりの愛らしさに悶える。手のひらの桃色うさぎをそっと持ち上げ、もふぅっと抱き締めた。

「ふわふわっ……」

 ふわふわで暖かくて愛らしくて、暖人はひたすら悶える。
 そんな暖人を見て、ウィリアムもそっと口元を押さえた。あまりに愛らしくて。ただ、暖人の肌に直に触れている事だけはモヤモヤするが。


 うさぎが寄ってきたのは、暖人が動物に好かれるからもある。
 だが、二人が夜明け近くまで励んでいた所為で、発情期だと思われていた。暖人がではなく、ウィリアムがだ。

 途中からもう、あまりに感じすぎて泣きながら抱かれていた暖人の事を、うさぎたちは、発情期の雄に無体を強いられた雌だと思っていた。

 可哀想に、ともふもふと暖人の頬を撫でる。うさぎの脚は肉球がなく、ぬいぐるみのようにふわふわだ。

「はわっ……」

 意味を成さない声を出し、至福の表情でふわふわの洗礼を受ける。すると灰色と白うさぎも、だっこ、とばかりに暖人の腹に前脚を乗せぺちぺちと叩いた。

「くすぐったいよ」

 くすくすと笑いながら三匹まとめて抱き締める。三匹の前脚で頬や腕をもふもふされる、至福。

「ここが天国かな……」

 目を閉じ、うっとりとして呟く。
 その光景を見つめながら、暖人の世界のカメラという物があれば、とウィリアムは残念に思った。この光景をいつでも見られるなど、なんて素晴らしい機械だろうか。
 だが残念ながらまだこの世界には存在しない。オスカーが何かしら研究をしているようだが、まだまだ先になるそうだ。

「天国だ……」

 ウィリアムもぽつりと呟く。
 自分が触れる以上に幸せそうで悔しくはあるが、相手は小動物。ライバルというより、暖人の愛らしさを増幅させるアイテムに近い。
 暖人は猫だけでなくうさぎも好き、とウィリアムの脳内辞書に追加された。


 ひとしきりもふった暖人は、そっとうさぎたちを下ろす。
 もう大丈夫? とうさぎは見上げるが、さすがに言葉が分からない暖人はそのつぶらな瞳に悶えるだけだった。

 そして、昨日採った食べられる葉をウィリアムが暖人に渡し、暖人がうさぎたちに差し出す。
 食べる姿に暖人はまたうっとりして、ウィリアムはそんな暖人を愛しげに見つめた。
 なくなる頃にウィリアムが追加を渡し、すっかり満腹になった三匹は暖人の膝の上で眠ってしまった。

「あまりにも可愛い……」
「そうだね。ハルトさえ良ければ、もう一日ゆっくりしていこうか」
「いいんですか?」
「勿論だよ。ただ、彼らは夜には帰って貰わないといけないけれどね」

 そう言ってにっこりと笑う。キラキラと輝く笑顔で。

「……まさかウィルさん、外でするのにハマっちゃいました?」
「そうだね。恥ずかしがるハルトがあまりに愛らしくて」

 あれをまたするのか、と暖人はきゅっと唇を引き結んだ。
 ウィリアムとするのが嫌なわけではない。ただ、全力で開脚させるのはやめてほしい。

 恥ずかしいが、向かい合ってしたいと伝えてみよう。今度こそ色々全開の姿を誰かに見られてしまうかもしれない。


 うさぎたちを撫でながら、ふと思い出す。

「そういえばウィルさんって、外でしたことあるんですか?」

 慣れているみたいだったからと、暖人としては何気ない問いだった。だが、ウィリアムは表情を凍らせる。

「あ、すみません……。デリカシーなかったです」
「いや、大丈夫だよ。そうだね、……求められたら、応えていたが」

 隠すのも誠実ではないと思い、素直に答えた。
 その答えに、暖人は膝の上のうさぎを撫でながら、そっと視線を落とす。

「やっぱり、ウィルさんは優しすぎます。それって、見つかったらウィルさんが悪く言われるんじゃないですか?」

 もし相手女性の関係者に見つかり責められても、ウィリアムは女性を悪者にするような事はしないだろう。合意の上なら、彼だけが悪い訳ではないというのに。
 それに、の相手が多かったようだ。この世界へ来たばかりの頃、マリアたちがそう説明してくれた。暖人としても、ウィリアムは騙されているのではと心配したものだ。


「ハルトは俺の心配をしてくれるんだね」
「当たり前です」
「ありがとう、ハルト」

 迷いなく答える暖人に、ウィリアムはそっと目を細めた。

「それでも、悪いのはやはり俺だよ。彼女たちの希望を受け入れるままにしたのは、俺の選択だからね」
「ウィルさん……」
「…………誤解のないように言っておくと、座って抱き締めながらしたのは、ハルトが初めてだよ」

 真剣な顔で告白するウィリアム。暖人はつい、笑ってしまった。訂正するのはそこなんだ、と。

「確かにあんなに密着してたなら、ちょっと嫉妬しました」

 くすくすと笑う暖人は機嫌を損ねてはいないようで、ウィリアムは胸を撫で下ろした。

「嫉妬は嬉しいけれど……、嫌な思いをさせたね」
「そんなことないです。俺、ウィルさんにすごく甘やかされてて、嫌だなんて考える暇ないくらいですから」

 今も髪を撫でられ、その優しさを感じている。一心に愛されているのに、今までの事をどうこう言う気になる筈もない。

 ふわりと暖かな笑みに、ウィリアムも愛しげに目を細める。
 暖人の膝の上のうさぎたちを潰さないようそっと抱き寄せ、満たされた気持ちで、柔らかな唇にキスを落とした。

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