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*二時間なわけない
しおりを挟む……と。
この流れなら、すぐに挿れて貰えると思うだろう。
だがそこはやはり涼佑だった。
「んっ、ぁ……ふぁ、っ……」
手をシーツに押さえ付けられたままで、首筋や鎖骨、胸元へと痕を付けられる。
そこからは手が離れ、じわじわと腹や脇腹、太股へと。
涼佑のしたい事は、感じてる顔を見ながらしたい、だった。
有言実行と言おうか、涼佑は痕を付けながらも、時々顔を覗き込んでくる。
その間は指が感じる場所に触れて、しっかりと見られながら喘がされた。
「やっ……やっぱり、恥ずかしいっ……」
「その顔も、全部見たいな」
「んぁっ! ッ……」
胸を軽く摘まれ、咄嗟に唇を引き結んでしまう。
だが。
「…………は、ぁ……あ、ァッ……やぁんッ」
恥ずかしさを抑え込み、唇を緩めた。
涼佑が、声を我慢しないで目一杯喘いで欲しいと言ったから。涼佑がして欲しい事は頑張ると決めたのだ。
「はるの声、可愛い。大好きだよ」
「うゃっ……でも、こんな女の子みたいな……」
感じる声を零れるままにしたら、予想外に高くて、あまりに甘えた声。
耳まで真っ赤にする暖人に、涼佑は愛しげに目を細めた。
「女の子より、生まれたばかりの甘える子猫かな」
「そんなに可愛くないっ」
「わっ、さすがはる。こんな時でも猫へのリスペクトがすごい」
くすくすと笑われ、顎の下を擽られる。
「猫じゃない……」
「僕は猫よりはるが好きだよ」
みゃうみゃうと親猫に甘えるような愛らしい声で鳴く暖人が、可愛くて仕方ない。
「だからもう少しこのままで、はるの可愛い声聞きたいな。……だめ?」
「っ!」
突然のおねだり。
こてんと首を傾げ上目遣いに見つめてくる涼佑のおねだりが、可愛くて仕方ない。
(可愛い、けど……、けど……っ)
すぐに許してしまいそうな口をギュッと閉ざす。
涼佑の言うこのままは、愛撫だけを続けたいという事。
一度ナカで達してしまってからのこの愛撫は、正直、しんどいのだ。
そろそろ挿れて欲しい。この続きはまた後で。先にいっぱい突いて欲しい。たくさん、イきたい……。
あうあう言いながら悩む暖人の心の中は、涼佑には見透かされていた。
勿論たくさんイかせるつもりだ。じっくりと、暖人を堪能した後で。
「だめ……?」
「だっ、だめ…………じゃ、……ない……」
どんなに足掻いたところで、結局涼佑のおねだりには勝てないのだ。
「ありがとう、はる。大好きだよ」
柔らかな笑みで嬉しそうにされると、もう何でも許せてしまう。
どんな涼佑も、何をされても、この笑顔一つで全て受け入れてしまうのだから。
(俺も、大好きだよ)
その言葉は、触れた唇に吸い込まれてしまった。
・
・
・
竜の上で涼佑は、五時間は必要、と言っていた。
(夕方……)
太陽が燦々と輝いていた青空は、いつの間にか燃えるような茜色に変わっている。
多分、丁度五時間。
暖人はぐったりとして窓の外を見つめた。
途中で休憩を挟みながらとはいえ、さすがにこれは。
このままでは戻ってきたウィリアムとオスカーに見られ……るのはまあ今更として、城の者に見られてしまう。それだけは避けたい。
「涼佑……、多分、もうすぐご飯……」
「もうそんな時間? まだ二時間くらいだと思ってた」
「俺の疲労度を見てほしい……」
「前にした時より元気そうだけど」
「っ、ゃっ、りょうっ……あ、あぅっ!」
普通に自身を扱かれ、先端をぐりぐりと刺激され一気に絶頂へと駆け上がる。……が。
「もう出なくなっちゃったね」
背を撓らせびくりと跳ねた暖人の自身からは、透明の液体がうっすらと滲むだけだった。
「……二時間、な、わけない……」
息も絶え絶えに返す暖人に、涼佑はとても良い笑顔を見せた。
「はると過ごすと五時間も一瞬だなぁ」
「……」
「でももっと触れてたいし、色々終わってずっと一緒にいられるようになったら、あれしよう? あの、……ポリネシアンの、ね?」
残念ながら、知っている。暖人はそっと視線を逸らした。
決定的な部分には触れずに、何日もかけてキスや触れ合うだけで焦らしに焦らされ、最終日にはとてつもない快楽を感じられるというものだ。
射精を我慢するだけなら出来る自信はある。元の世界では一ヶ月以上自慰も出来ない事が普通だった。
だが、涼佑と触れ合える環境で我慢するとなると……。
(多分二日目には欲しくなる……)
初日の軽いキスだけは我慢出来そうだが、それ以降は我慢出来る自信が全くない。元の世界では淡白な方だったと思うのに……。
いや、我慢しなくて良い環境で、何故また我慢しなくてはならないのか。
据え膳食わぬは男の恥と言うだろう。自分も男だ。涼佑を前にして、我慢するのは良くない。
悶々と悩む暖人の心中は、涼佑にはやはり全て見透かされていた。
「でも、無理かなぁ。はるは僕よりえっちだから、我慢出来ないよね」
「っ、出来るよっ」
ツンツンと頬をつつかれ、反射的に返してしまった。
売り言葉に買い言葉。涼佑のこの意地悪な声にはついこういう反応をしてしまう。
「そう? じゃあ、先に我慢出来なくなった方が罰ゲームにしようか」
「う……」
大好きな涼佑を前にして我慢なんて出来ない。そう言ってしまえば良いのに。
(なんか、……負けたくない)
ふと、暖人の中の闘争心と頑固さに火が点いた。
ただそれは、涼佑も我慢するという事。
「二日で我慢出来なくさせてやる……」
「はる。本音が出てるよ」
「あっ」
「何してくれるのか楽しみだなぁ」
暖人にしては荒い口調に、涼佑は愉しげに笑った。
(いつか涼佑にも、もう出ないつらさを味合わせてやるんだ……)
やりたい事が追加される。
野望を叶えるには、涼佑を押し倒せる腕力か涼佑以上の持久力が必要だ。……が、現実的に考えて無理そう。
それならすぐにイかせられる舌技か、絞り取れるナカの技術か、そちらの方が可能性がある。
(頑張る……、頑張りたい…………頑張れたらいいな)
色々と想像して、早々に自信がなくなっていく。
そもそも涼佑がもう出ない状態になる前に、自分の顎か指かナカが死ぬ。技術を付ける前に、まずは体力だ。
(……帰ったら走り込みから始めよう)
深刻な顔で考え込む暖人を、涼佑は目を細め見つめる。
限られた時間の中で縋るように触れ合っていたあの頃には、行為を楽しむ為に繋がる事を我慢するなど、考えもしなかった。
こんなにたっぷり意地悪だけをして焦らして涙目にさせる事も出来なかった。
今はまだ離れる時間も多い。だが世界が落ち着いて暖人とずっと一緒にいられるようになったら、あの世界では出来なかった事を全てしたかった。
まずは一ヶ月暖人を独り占めして、悔しがるあの二人の顔を思い出し優越感に浸るのも悪くない。
ふとそんな考えが浮かぶ。ここにきて、新たな楽しみを見つけてしまった気分だ。
抱き枕のように暖人を抱きしめ、頬擦りをする。
暖人の為に命をかけられる二人だから、許してしまった。この世界だから、許してしまった。
暖人が心を許した相手がいくらいようとも、暖人にとって、やはり自分は特別だから。
自分にとって、暖人は特別だから。
「はる、好きだよ」
「うん、俺も涼佑が、……大好き」
元の世界では恥ずかしがってあうあうしていた暖人が、こんなにも素直に言葉にしてくれる。頑張ってキスをしてくれる。
その後で恥ずかしくなってもそもそと擦り寄る暖人があまりに愛しくて、ぎゅうっと抱き締め髪にキスを落とした。
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